・ミズノが「JPX 923 Forged(JPX 923フォージド)」と「JPX 923 Tour(JPX 923ツアー)」を発表した
・「JPX923フォージド」は『一体成型鍛造製法』による上級者向け飛び系アイアン
・「JPX923ツアー」は、まさにツアーを意識したキャビティアイアン
・小売価格は1本187.50ドル。2023年2月に発売(US)
※日本では2022年9月に発売されている
ミズノ「JPX 923 HOT METAL(JPX 923ホットメタル)」シリーズについてはすでに取り上げたが、ラインナップの半分となる鍛造アイアン「JPX 923フォージド」と「JPX 923ツアー」の発売は2月まで待たなければならない。
ガッカリだ。頼むよミズノ。
もちろんミズノも、5ヶ月ものお預けは永遠に思えるほど長過ぎるということは重々承知のようだが、すでにネット上に写真が出回っていることを考えると、詳細を秘密にしておく意味はあまりない。そもそも新しい「JPX」の登場は予測できたことだし。
では、なぜ待たせるのか?
この遅延の背後にある思惑は、ラインナップの全鍛造モデルを、次のモデルが発売されるまでの1年間棚に並ばせて「Mizuno Pro(ミズノプロ)」シリーズを再確立することにある。
もちろん「JPX」と「Mizuno Pro」は異なるものだが、中空ボディの「Mizuno Pro 225」に搭載された多くの技術が「Mizuno Pro」アイアンにも搭載され、その美しさの多くが「JPX」シリーズに取り入れられていることを考えると (醜いものなど一切ない)、間違いなくこれまで以上に重なる部分は多い。
簡単に言うと、ミズノの鍛造アイアンはどれも12ヶ月間は売られ続ける宿命にあるのだ。
「JPX 923 FORGED (JPX 923フォージド)」
ミズノの2つの鍛造モデルの中で、より「寛容性」の高い「JPX 923フォージド」は、上級者向け飛び系カテゴリーでは一種の異端児だ。『一体成型鍛造製法』だが (フォームフィラーやプラズマ溶接のLフェースなどはない)、これは通常、上級者向け飛び系カテゴリーにおける飛距離アップでとる手法ではない。
ミズノの鍛造モデルと飛ばすことが好きなゴルファーにとっては幸運なことに、ミズノは、通例では初速アップ向けではない構造の中に、初速をアップさせる方法を見つけたのだ。
それはミズノが「JPX 923フォージド」で採用した鍛造素材に始まる。「JPX 921フォージド」同様、4~7番アイアンではミズノ独自の鍛造製法『グレインフローフォージドHD*』で、素材は「クロムモリブデン鋼(SCM420)」を使用。これはミズノが「Hot Metal(ホットメタル)」シリーズの鋳造に使用したものと同じ素材だ。
* HD=High Density(高密度)
「クロムモリブデン鋼(クロモリ鋼)」のロングアイアンと組み合わされるのは、ミズノ伝統の高品質炭素鋼である「S25CM(1025E)」で作られた8番アイアン~ギャップウェッジだ。
鍛造を「クロモリ」素材にするわけは?
その理由は、単に「クロモリ鋼」を使えば炭素鋼である「1025E」より薄いフェースにできるからだ。これまでしつこく言ってきたように、「薄いフェース」はすなわち「速いフェース」を指す。「クロモリ」は、ミズノが上級者向け飛び系アイアンカテゴリーで他のアイアンと足並みを揃えるための方策のひとつなのだ。
「クロモリ鋼」の欠点は「1025E」よりも鍛造が難しいこと。そのため鍛造プロセスはより複雑になる。「JPX932フォージド」の複雑な形状を単一の鋼ビレットから実現するために、ミズノは鍛造工程をもうひとつ追加する必要があった。
工程がもうひとつ増えることで時間的にも金銭的にもかなりのコストがかかるが、「打感」を損なうことなく目的の性能を実現するためには致し方ないってことだ。
「マイクロスロット加工」
「JPX 923フォージド」に初速をもたらすのは『クロモリ鋼』だけではない。「JPX 921」よりもフェースは薄くなったが、「クロモリ」をもってしても「マルチピース(複合パーツ)構造」ほどにはフェースを薄くすることはできない。
そのため、ミズノはゴルファーが上級者向け飛び系カテゴリーに期待するレベルまで初速を上げるために、「JPX 923フォージド」の4~7番アイアンのフェース背部に『マイクロスロット加工』を採用した。これによりスロット加工なしのものよりフェースのたわみが多くなる。
スロットの厚さは、4~6番アイアンで4.2 mm、7番アイアンで3.7mmだ。
こういったことはおそらく皆さんにとってそれほど重要ではないだろうが、これはミズノがショートアイアンとの繋がりをよくするために、ロングアイアンで最大のたわみ(=初速)をもたらそうとしてのことだ
ミズノはショートアイアンでは「ミーリング(切削)」加工を採用していない。これは『マイクロスロット加工』によってもたらされる 「COR値」向上のメリットが、高ロフトのクラブでは減少するためだ。
初速を向上させるテクノロジーが何であれ、8番アイアンのロフト角までいくとその効果が消えるのは業界全体の共通認識なのだ。
(そう考えると、これまでに例はないが、ロングアイアンよりショートアイアンの料金を低く設定するメーカーが存在してもいいような気がする)
とにかく、ミズノ「JPX 923フォージド」の初速は「Hot Metal(ホットメタル)」ほどではないものの、「COR値 (=初速)」 は一体成型の鍛造アイアンとしては並外れている。
ミズノ「JPX 923 FORGED(JPX 923フォージド)」の形状
これは好みの問題だが、「JPXフォージド」アイアンシリーズは個人的には少々大きすぎるといつも思っていた。今回はその印象が変わりそうだ。
「JPX 923 HOT METAL PRO(JPX 923ホットメタルプロ)」のヘッドを小ぶりにしたことで、ミズノは「JPX 923フォージド」のヘッドも小さくすることが可能となった。前作と比べてもかなり小さくなったように見える。また、トップラインはより薄く、丸みがついている。ミズノ曰く、以前の「JPXツアー」と同じくらい薄く見えるという。
「Vシャーシ」
「JPX 923」ラインナップの他のすべてのモデル同様、「JPX 923フォージド」は『Vシャーシ』を採用している。基本的に、『Vシャーシ』はアイアンの打感の向上を可能にする巧妙な構造補強となっている。
ミズノの「JPX 923」のプレゼン資料からそのまま拝借したほうが、技術の開発 (および結果として得られる形状) がアイアンの「打感」にどれだけ貢献しているかをよりよく理解できるだろう。
「キャビティフレームの上部を補強することで、6,000~10,000HZの音圧を低減し、「JPXツアー」に近い、よりソリッドなインパクト音となった」
ここで重要なのは、卓越した打感は偶然に発生するものではないということ。そしてそれを実現するには多くの作業が必要となる、というのがクソみたいな打感のアイアンがこの世に存在する大きな理由だろう。
「JPX923 FORGED(JPX 923フォージド)」スペック
「JPX 923フォージド」は前作よりストロングロフトになった。7番アイアンは30度に、ピッチングウェッジは44度だ。
はっきり言って、「JPX 923フォージド」はミズノの鍛造アイアンではお目にかかったことがないほどのストロングロフトであり、同社はそれが単に市場の流れに応じてのことだと認めている。フィッティングについては一日中話すことができるが、依然として「飛距離」がアイアン購入の一番の決め手であることは否めないのだ。
またミズノは、ストロングロフト化において重心位置をより深くすることで補っており、「JPXフォージド」は“ヘッドスピードの遅いプレーヤー向きではない”ことも強調している。
そして、ロフト角はフィッティングによって調整可能だということも念頭に置くべきだろう。アイアンが自分の好みとしてはストロングロフトすぎると思ったら曲げてウィーク(寝かせる)にすればいいだけ。全く問題ない。
「HOT METAL(ホットメタル)」シリーズ同様、ミズノは「シャフト・オプティマイザー」のデータに基づいて、バウンス角を数度増やした。
ミズノのクリス・ヴォーシャル氏による「JPX 923フォージド」のまとめは次のとおりだ。「打感も飛距離性能も見た目も向上した」。
最後に、ミズノ「JPX 923フォージド」には左利き用も用意されていることに言及しておこう。
JPX 923 TOUR(JPX 923ツアー)
ミズノが「JPX」と「MP」を明確に分けていると言っていたのはそれほど昔の話ではないが、時間が経つにつれて境界線は曖昧になり、ヴォーシャル氏がこれまでで最も「MP」っぽい「JPX」アイアンと言う「JPX 923」ができあがった。
ある意味、「JPX 923ツアー」は新しい「MP-64」と解釈することができる。このアイアンが「Mizuno Pro」シリーズの中にあったとしても少しも場違いではない、真の上級者用キャビティアイアンだ。
TOUR(ツアー)の形状
「JPX 923」が「JPX」ラインナップの中で最もコンパクトなアイアンであることは言うまでもない。ブレード長は「JPX 921」よりも短いが、最も大きな違いはショートアイアンにある。
わかりやすくするために、「JPX 923ツアー」ではショートアイアンは6番アイアンから始まる。
「JPX 923ツアー」が「MP」っぽく見えるようにするために、新モデルはトップラインはより薄くより丸みがある。よりわかりやすく言うと、ヴォーシャル氏はミズノの現在の「MB」よりも薄く見えると言う(実際はそうではないが)。
ミズノは「JPX 923ツアー」のソールにバウンス角を増やしたため、トレーリングエッジ(ソール後方とバックフェースの境界線)はより丸みを帯びており、同様にヒール・リリーフ(ヒール側にあるバウンス角)もわずかにある。その結果、わずかに幅が狭くより汎用性の高いソールとなり、芝の抜けも向上しているのだ。
期待以上の出来
全体的な見る限り、新しい「JPX 923ツアー」は以前の世代よりも少し洗練されているようにも見える。
「JPX 921」が「JPX 919」に比べて、少なくとも外観的には一歩後退したように感じたのは私だけではないはず。それは「JPX 921」のキャビティバッジによってアイアンが実際よりも少し大きく見えたように、見た目によるものかもしれない。
少なくとも、それは「JPXツアー」を対象とするプレーヤーが見たかったものではなかったはずだ。
「JPX 923フォージド」はそのバッジがなくなり、形状がわずかに微調整されよりクリーンな印象になった。まあ個人的な意見だけどね。
ターゲットとなるプレーヤーの心に響くものを作ることが目的だとすれば、ミズノは成功したということだろう。
「Vシャーシ」
他の「JPX 923」アイアン同様、「JPX 932ツアー」でも『Vシャーシ』を採用している。繰り返しになるが、『Vシャーシ』は、アイアンの「打音」と「打感」を調節するために、アイアンのトップラインとトウ部分を補強する役割を果たすものだ。
銅下メッキ
「JPX 923ツアー」における「打感」の重要性について今一度言うと、新しいモデルは柔らかい「銅下メッキ(1025E 鍛造ヘッドと仕上げ材の間に配された銅の層)」を特徴としている。ミズノは、「MP/Mizuno Pro」シリーズの直近2世代においても「銅」を使用しているが、「JPX」アイアンで「銅」が使用されたのはこれが初となる。
ヴォーシャル氏によると、銅は“音量を下げる”効果があるためよりソフトな打感に相応しい感触を得られるはずだという。ツアープレーヤーへのテストでは、約90%が「銅」を使用した「JPXツアー」とそうでないものの違いに気づいたそうだ。
「JPX923 TOUR(JPX 923ツアー)」スペック
ミズノはバウンス角を少しばかり増やしたが、主要なスペック(主にロフト角とライ角)は前モデルから変更されておらず、「Mizuno Pro 221」のスペックと同様のものとなっている。
もし、「Mizuno Pro」と「JPX」の両方を組み合わせたい場合でも全く問題はない。
左利きの皆さんには申し訳ないが、ミズノ「JPX 923ツアー」は右利き用のみの販売となる。
「JPX 923 FORGED(JPX 923フォージド)」「JPX 923 TOUR (JPX 923ツアー)」のスペック・価格・発売時期
ミズノ「JPX 923フォージド」と「JPX 923ツアー」は、2023年2月上旬に発売予定(US)。小売価格は1本187.50ドル。
※日本では2022年9月に発売されている
「JPX 923 HOT METAL(JPX 923ホットメタル)」アイアン
ミズノは「JPX 923 HOT METAL」アイアンの新ラインナップも発表している。
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