本年のゴルフボールテストの最終日、時間に余裕があったのでちょっとした実験をおこなった。メインは「泥付きボール」について。ゴルフボールに「泥」が付着すると何が起こるのか、少なくとも何が起こると覚悟しておくべきなのかを知りたかったのだ。
これはまた、よく聞かれるもうひとつの質問に答える絶好の機会にも思えた。「カート道」や「キレッキレのバンカーショット」、あるいは「木」に当たるなどしてついた「カバーの傷」は、ゴルフボールの性能にどう影響を与えるのか?あるいは与えないのか?
当初は2つの記事に分けるつもりだったが、これらの事象はそれぞれ別のものというより、いずれも「損傷」や「亀裂」によって影響の深刻さが左右されることがわかった。
一般的には、カバーに「泥」がついていようが、「亀裂」や「傷」であろうが、ボールの飛び方にもたらす変化は基本的に同じだ。等しく悪影響を及ぼすという意味で。
では、実験結果をご覧にいれよう。
キーポイント
ほんの少しの傷でも影響を及ぼす
我々が見過ごしてしまうような些細なことでも、「性能に変化」をもたらしうることが判明した。
ディンプルの「形状」や「深さ」の変容は、それが「泥」で埋まったディンプルであっても、バンカーからの完璧なウェッジショットにより「少々削られたディンプル」であっても(あるいは、「カート道」や「木」に当たった完璧とは言えないドライバーショットによるものでも)、問題を引き起こす可能性がある。
ゴルフボールの「空気力学的造作物(ディンプル)」が変容すると、よくないことが起こりうるし、実際に起こることが多い。
損傷が大きければ大きいほど影響も大きい
当然のことながら、ダメージが大きければ大きいほど性能に及ぼす影響も大きくなる。
「小さな塗装の傷」や「表面のごく小さな傷」であれば大したことはないだろうが、そのダメージをはっきりと感じられる場合、つまり触ってわかるものだと、性能に影響を及ぼす可能性が非常に高くなる。
少しのダメージ(または少しの泥)ならば、「飛ぶ方向が少しズレたり」「飛距離が少し落ちる程度」で済むだろう。しかしそれ以上のダメージを被ったなら、「フォアー!」と叫ぶ準備をしておいたほうがいいだろう。
ボールは泥や傷のついている箇所の反対方向に動く
ゴルフボールの「表面の連続性」を乱すものを総称して「破損」と呼ぶことにする。重要なのは、その「破損」が「泥」であろうと、「擦れ」や「えぐれ」、「切り傷」であろうと、ボールはダメージのある箇所とは「反対方向に動く(曲がる)」ということ。
つまり、ボールの「右側」に「泥」がついていれば「左」に曲がり、「左側」に「擦れ」があればボールは「右」に曲がることになる。それを踏まえて狙いを調整し、あとは祈るしかない。
迷ったときは捨てるとき
いずれにせよ、ゴルフボールに別れを告げるタイミングを見極める必要があるということだ。ゴルフの規則では、「泥」のついたボールに対してはほとんど救済措置がないが、「破損したボール」を取り替えることに関してはほぼ絶対的な自由がある。
カバーのダメージのために4ドルのゴルフボールがゴミ箱行きになるのは腹が立つが、その選択肢があることに感謝すべきだ。そもそも「破損したボール」は最終的にOBになる確率が高い。スコアを悪くする前に廃棄できると思えばいいのだ。
泥付きボール
「泥」がゴルフボールに与える影響をテストするにあたり、濡れていて、完璧に手入れされていないフェアウェイに着地して転がったときに、ゴルフボールに付着するであろうリアルな「泥の量」を再現すべく最善を尽くした。
ボールに影響を与えるのに十分な量の泥をつけるようつとめたが、こびりつかせたり、詰め込んだり、ディンプル全部を土で埋めようとはしなかった。
ショットは、基本的なボールテストと同じ構成、「平均的なヘッドスピード」で振った8番アイアン(ドライバーでヘッドスピード45 m/s相当)で計測した。
泥付きボールデータ
所見
・この実験から得られた最重要ポイントをもう一度おさらいしておこう:ボールは「泥」(またはその他の表面上の破損)のついた「反対方向に動く」
・インパクト時に「泥」の大半が飛び散る。そのことで「ボールの傾き」を防ぐことはできないが、射程内での空力的な影響は抑えられる
・「ボール初速」、「打ち出し角」、「スピン量」などの主要指標に関して、インパクトエリア外に「泥」が付着することによる影響はわずかだった
・「泥」の影響は「スピン軸」に顕著に表れる。軸の傾きが大きいほど、飛行中のボールの曲がりも大きくなる。参考までに、ロボットテストにおいては、スピン軸の誤差は通常±1°である
・ボールの「左側」に「泥」が付着した場合(最も泥がたくさん付着しやすいケース)、「スピン軸」が「左」に6度半近く傾き、飛球方向に7ヤードのズレ(右)が生じた
・ボールの「右側」に「泥」が付着した場合、泥の量は少なめで、それほど深刻ではないものの、同様の結果となった
・今回のテストでは、「泥」による「飛距離の低下」はあまり見られなかった。しかし、どんな「泥」でも同じというわけではない。「泥の粘着性」が高ければ高いほど、すなわちインパクト後にボールの表面に付着し続けるほど、飛球に与える影響は大きくなる
摩耗や擦れ、その他の惨事
「摩耗」や「擦れ」がボールの飛びに与える影響を調べるため、「カート道」や「木」に当たったり、完璧なバンカーショット時などに生じる様々なレベルの「カバーの損傷」を再現した。
最初の2、3ショットの結果を見た結果、かなり極端にやることにしたので、諸兄のゴルフラウンドには当てはまらないケースもいくつかあると思うが、かなり興味深い結果となった。
このテストは、ドライバーを45 m/sのヘッドスピードで振り、基本的なボールテストと同様の設定でおこなった。注:すべてのショットにおいて、特に断りのない限り損傷部分はインパクトエリアの「右側」に配置された。
ほどほどに摩耗したボール:ドライバー使用(45m/s)
所見
軽い擦れ
・「カート道」で跳ねた後にできるような、「小さいが目立つ擦れ」でも、ボールの飛びには大きな影響があった
・「軽く擦れた」だけのボールでも、それほどではないものの「スピン軸の傾き」が生じ、その結果8ヤード以上のズレを引き起こした
・「高さ(頂点)」は傷のないボールの平均を大きく下回っていたが、「落下角度」が大幅に「フラット」になったことが著しいランの増加に結びついた
中程度の擦れ
・多くのゴルファーが交換すると思われる「中程度の擦れ」は、ボールの飛びに大きな影響を与える
・「ボール初速」や「打ち出し角」、「スピン量」などは、傷のない状態の平均値と変わらないものの、飛距離は10ヤード近く落ちた
・「キャリー」は破損していないボールの平均値よりも40ヤード以上も短い205ヤードまで落ちた
・「スピン軸」は35度以上傾き、ターゲットラインから45ヤード以上のズレが生じた
両側に擦れ
・ゴルフコースで実際に生じるようなダメージではないものの、ゴルフボールの「両側」をそれぞれ等しく適度に擦るとどうなるのか興味があったので実験した
・ボールの「両側」を擦ることで、より「スピン量」が増えた
・「スピン軸」は4.5度以上傾き、ボールの飛びに13ヤード近くのズレを生じた。これは、「両側」を完璧に等しく擦ることができなかったという証拠だ
・「高さ(頂点)」は50フィート以下、「落下角度」は23度しかなかった
・「トータル飛距離」が250ヤード以下(「キャリー」で200ヤード以下)の場合、データには表れていないがボールの飛び方に「一貫性」がなかった。不安定という表現がピッタリかもしれない
部分的に紙やすりで削る
・興味本位で、ボールのディンプルの約4分の1を紙やすりで削ってみた。ゴルフ場でこのようなダメージを被ることはないと思うが、バケツに入った古いレンジボールに紛れている可能性はある
・部分的に紙やすりで削られたボールの「スピン軸」は50度近く傾き、その結果、ボールの飛びに57ヤードものズレが生じた。基本的には「どフック」だった
・「キャリー」は200ヤード以下になった
・「高さ(頂点)」は、破損していないボールから予想される値を大きく下回った
コアのみ
・ちょっとした遊びで、「空気力学的造作物(ディンプル)のないボール」がどのように飛ぶかを確かめてみた。その結果はなかなか興味深いものだった
・カバーやマントル層のない状態では、ボール初速が2m/s速くなった
・ディンプルのない状態では、「打ち出し角」は10度、「高さ(頂点)」は20フィートにも満たなかった。ドライバーで!
・「キャリー」は115ヤードちょっと。多くの人にとってはウェッジの距離だろう
・強いて言うなら、カバーのないボールは比較的直進性が高く、ターゲットラインからのズレは3ヤードに留まった
結論
この記事からわかるのは、「泥」でも「擦れ」でも、ゴルフボールの表面に何らかの「破損」があると、その「飛びに影響を及ぼす」可能性があるということだ。
残念ながらボールに付着した「泥」はどうすることもできないが、その影響が予測できるのは朗報だ。
「泥」であろうと「擦れ」であろうと、ボールは予測通り破損箇所の「反対側」に曲がる。より詳しく知りたいなら、PINGの『PROVING GROUNDS』ページの記事『The Science of Mud Balls』がお勧めだ。
ボールを交換するタイミングを判断する目安として、ボールを指で擦ったときにはっきり感じられるダメージがある場合は、スコアに影響が出る前にシャグバッグ(ボールを入れておく袋)に放り込んでおくのがいいだろう。
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