最近テーラーメイドが韓国のゴルフボールメーカー「Nassau(ナッソー)」を買収したが、今後は“テーラーメイド製品のみ”を生産するとの情報がはいった。

予算重視のゴルファーにとって幸いなことに、例外が一つだけある。「ナッソー」の最大かつ最も有名なクライアントには、マサチューセッツを拠点とする「Snell Golf(スネルゴルフ)」があり、ディーン・スネル氏が所有、経営している。

スネル氏は、元テーラーメイドゴルフボールのチーフであり、「Pro V1(プロV1)」の開発に携わった元タイトリストのエンジニアでもある。

私たちが得た情報では、昨今のサプライチェーンの問題は「スネルボール」の供給に影響はあるものの、テーラーメイド/ ナッソー工場は「スネル」には今後もゴルフボールを供給し続けるとのこと。

ナッソー工場は、「キャストウレタンカバーボール」を製造できる世界でも数少ない工場のひとつ。

買収前も、ナッソーはテーラーメイドに「ウレタンボール」と「アイオノマーボール」の完成品、およびテーラーメイドのサウスカロライナ工場で完成品となる「TP5」の「コア」と「マントル層」を製造し、提供していた。

さらに注目したいのは、2016年に発売された初代「カークランドシグネチャー」4ピースウレタンボールを任されたのも「ナッソー」だった。


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驚きの発表

ということでナッソーは「スネル」に加え、小規模直販ブランドや練習用ボールを製造してきたことでも知られている。また、「ナッソー クアトロ」などの独自のブランド名でヨーロッパやアジア各地でボールを販売してきた。

ナッソー/テーラーメイドが、これらの大口クライアントにその決定を事前に知らせたかは、現時点では不明だ。私たちの知るクライアントのうちの一社は、同社が今後ゴルフボールの提供をストップすることをメールで通知されたようだが、何度かコンタクトを取ろうとした後の話のようだ。

前述のように、「スネル」のボールは引き続きナッソーから供給される。今回のテーラーメイドの決定は、小規模直販ブランドと練習用ボールのクライアントに大きな影響を与える。


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MyGolfSpyの問い合わせに、テーラーメイドから次のように回答が寄せられた。

「我が社のゴルフボールの需要が続く中、私たちは世界的に生産能力と生産量を増やすために懸命に取り組んできました。韓国のナッソーゴルフ株式会社とは15年以上協力関係にあり、アイオノマー、そしてウレタンボールの生産能力の拡大に努めてきた経緯から、2021年ナッソーゴルフ株式会社を買収することを決定しました。成長するゴルフボール事業への需要と、ナッソーとの長年の関係を生かし、今後の生産能力と生産量の向上を目指しています。」





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テーラーメイド 供給のコントロール

ある意味では、来るべくして来たようにも思える。テーラーメイドのボールビジネスは、過去5年間で176%の成長を見せている(ゴルフデータテックの調査結果によるもの)。この声明からも、テーラーメイドがゴルフボール事業に強気であることが伺える。

同社は、サプライチェーンと生産手段の両方を取得し、何よりもまず自社ビジネスを優先させることを目指している。新工場を自社製品に専念させることは、当然の決断だろう。

多くの直販ボールブランドはボールの供給元を曖昧にすることがあるが、「スネル」は最初から明確にしていた。ディーン・スネル氏とナッソーの関係は少なくとも15年前にさかのぼる。

スネル氏は当時テーラーメイドに在籍しており、それがテーラーメイドとナッソーとの関係の始まりだった。先ほども述べたように、ナッソーは「キャストウレタンカバーボール」を製造する世界でも数少ない工場のひとつだ。

「キャストウレタンを製造できる工場は世界にそう多くはない。タイトリストもテーラーメイドも自社工場を持っており、海外にもいくつかある。だが、同じことをするのは難しい。」とスネル氏は2017年MyGolfSpyに語っている。

90年代、タイトリストに在籍していたスネル氏は、初代「Pro V1」に使用される「キャストウレタン製法」を開発した。初代「ProV1」の特許には、スネル氏の名前も記載されている。


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小規模ブランドの行方

ナッソーは顧客リストを非公開にしており、小規模直販ブランドはボールをどこから調達しているか明確にはしてこなかった。今回この決定の影響を受ける直販ブランドは、聞いたこともない小さなブランドの可能性が高い。

現在、世界的なサプライチェーンがそうであるように、不可能ではないにしても、多くの企業が新しい供給元を見つけるのに苦労するだろう。撤退する会社も出てくるかもしれない。

これらの小さなブランドは、単にロゴとストーリーを加えているだけだ。彼らは供給元のメニューからボールをオーダーする。一方で、廃業しても世間的には影響はないが、彼らの多くは自分たちでビジネスを立ち上げた人たちだ。

供給元を失うことで彼らは不安定な立場になる。現時点では、原料と生産能力の限界により、少なくともゴルフボールメーカー2社はナッソーの元クライアントを引き受けることができないという。

テーラーメイドのこの決断が永遠に続くかどうかは未定だ。しかし、これまで聞いた内容から判断すると、そう簡単には覆らないだろうと思われる。