コブラ「DARKSPEED(ダークスピード)」ドライバーシリーズのストーリーは単純明快。ヘッドスピードの速いゴルファー(45m/s以上) には、このクラス最高の空気力学によってさらなる初速アップをもたらしてくれるはずだ。
でも、スイングが速くなかったら?
それでも問題はない。
コブラの空力特性による恩恵を受けられるほどヘッドスピードが速くないゴルファーだとしても、3つ(いや、おそらく4つ)の優れたドライバーから選ぶことが可能だ。
コブラの残念な現実
技術的なことを掘り下げる前に、ちょっと脱線して、私が気にくわないことについて言わせてもらいたい。
データによると、多くのゴルファーは通常、購入を決める前に3本のドライバーを試打するという。ほとんどの場合、その3本はテーラーメイドとキャロウェイ、PING、タイトリストから選ばれる。
そりゃそうだ。ゴルフ業界の巨大ブランドばかりだし、ウッド部門で市場シェアの大部分を占めていて、当然のことながら、いずれも優れた製品を創っている。でもそのせいで残念なことに、コブラは一度も競争する機会を得ることなく敗れ去り、カヤの外に取り残されたままなのだ。
コブラは万人に合う最高のドライバーを作っているから絶対に買うべきだと言いたいわけではない。前述した通り、どのメーカーも良いものを創っている。しかし、もしこの記事に惹かれるものがあったら、ぜひコブラの「DARKSPEED(ダークスピード)」ドライバーを試打リストに加えてほしいというだけだ。
そして、試打した結果がどうだったか教えてほしい。
では、先に進むことにしよう。
コブラ「DARKSPEED(ダークスピード)」の美学
コブラの「DARKSPEED(ダークスピード)」ドライバーシリーズですぐに目についたのは、この落ち着いた雰囲気のシックなダークトーンカラーだ。万人受けはしないとしても、多くのゴルファーに刺さるビジュアルなのは確かだろう。
ここ最近のコブラのコスメをご存じの方は、特にこのシックなダークカラーをお気に召すんじゃないかな。
この「DARKSPEED(ダークスピード)」ドライバーを工業的なデザインの観点から見ると、「レーシングカー」、「飛行機」 、個人的に「ステルス戦闘機」のイメージを強く感じる。戦闘機と言えば「PXG」。迷彩柄のクラブを発売しているものPXG、もしかしたら、PXGの創業者であるボブ・パーソンズのクローゼットからインスピレーションを得たのかもしれない。そんなことはないと思うが…。
とにかくシャフト以外の色は、それぞれ「DARKSPEED X」モデルと「MAX」モデルで青と赤が控え目に配されているにとどまる。ゴルファーがそれぞれのラインナップのどこに当てはまるかを理解しやすくするためだ。
シャフトの色分けは、スタンダードな慣例から借用したものだ。「DARKSPEED LS(ブラック)」は低打ち出し・低スピン、「DARKSPEED X(青)」は中打ち出し・中スピン、「DARKSPEED MAX(赤)」は高打ち出し・高スピンの選択肢となる。そして、すべて相対的なものであることは理解しておいてほしい。
「MAX」はドローバイアスでもあるが、シャフトに関しては、今のところ色分けをしていない。
「DARKSPEED(ダークスピード)」〜全般的な改良点
前述したように、今年のコブラのテクノロジーにおける注目点は「空力特性」だが、それだけが「DARKSPEED」のすべての特徴というわけではない。
空力特性については後ほど詳しく説明するとして、まずはコブラの「DARKSPEED(ダークスピード)」が「AEROJET(エアロジェット)」より改良されている点をいくつか挙げておきたい。
大型化した『H.O.T.』フェース
簡単なおさらい:『H.O.T. (highly optimized topology=高度に最適化されたトポロジー) 』フェースは、AIと機械学習の助けを借りて設計されたコブラ版フェーステクノロジーだ。そう、コブラにもコンピューターを活用しているんだよ。
最大の特徴は、フェースの裏側にある15個のパッドだ。他のフェーステクノロジーと同様、オフセンターヒット時にボール初速を維持させるためにある。
「DARKSPEED」がもたらした改良点は、フェース面積が13%大きくなったことだ。この大型化は、従来のプラズマ溶接よりも厳しい公差を実現するコブラのレーザー溶接技術によって可能となった。
再設計された『パワーブリッジ・ウェイティング』
『パワーブリッジ・ウエイトシステム』は、ドライバーの低く前方(フェース寄り)に固定された大きな重量の塊であり、「AEROJET」の誕生とともに導入された。「DARKSPEED」ドライバーでは、コブラはアンカーポイントを取り除き、重量をより前方に押し出すことができる“吊り橋”のように浮いた状態で「パワーブリッジ・ウェイト」を装着している。
『パワーブリッジ』は、「重量分布(回転半径)」の拡大に加え、フェースのたわみを損なうことなく、より効率的にエネルギーをボールに伝達することを可能にする。
カーボン構造
最後に、見過ごされることがないよう、「DARKSPEED」ドライバー全モデルでカーボンファイバーのクラウンとソールプレートを採用していることに触れておこう。軽量化したということ以外に変化はあまりないが…。
コブラ「DARKSPEED(ダークスピード)」ドライバー〜空気力学的メリット
「DARKSPEED」ドライバー、特に「LS」と「X」で空気力学に力を入れているコブラが、この分野ではすでに秀でていたことを示す証拠はいくらでもある。
繰り返すが、コブラがこの空気力学以外の方法で初速を提供していないわけではない。しかしUSGAはその規則や規制のすべてにおいて空力効率を制限していない。つまり、スイングが速くなる設計なら、CT制限を気にせず、ボール初速と飛距離を追求できるというわけだ。
「DARKSPEED」におけるコブラの目標は、各モデルのターゲット層であるゴルファーの性能ニーズに応えながら、“可能な限り空気力学的に最適化された形状を作り出す”ことだった。
つまり、「LS」から「X」、「MAX」へと進むにつれ、コブラはより高い慣性と寛容性を得るために空力の最適化を徐々にトレードオフしているわけだ。前述したように、ドライバーの空力効果による初速の恩恵を受けるだけの馬力がなかったとしても、それぞれのゴルファーに合った方法で優れた性能を発揮するように。
個々のモデルについて語る前に、モデル間の形状の違いが顕著なのがわかる側面図と正面図をよく見てほしい。
また、フェースとソールが接する部分の丸みを帯びたリーディングエッジとクラウンにも注目してほしい。最後に、すべてが素晴らしくタイトに組み合わされているソールは一見の価値ありだ。ウエイトはソールと段差のないよう配置されており、空力を乱すような前向きのエッジはない。
コブラ「DARKSPEED(ダークスピード)」ドライバー〜3つ*のモデル
クラブシリーズのモデル数という一見基本的なことが、実は額面通りではないというのが最近の傾向だ。厳密に言えば、コブラ「DARKSPEED」ラインナップは3つのモデル(「LS」、「X」、「MAX」)で構成されているが、ここには「*(アスタリスク)」を付けるにふさわしいちょっとした楽しいひねりがある。
コブラ「DARKSPEED LS(ダークスピード LS)」ドライバー
「DARKSPEED」モデルの中で、「LS」は最もスカートが高く、最もクラウンの頂点が高い、そしてヒールとトウからフェースへの流れが最もアグレッシブ。これは「AEROJET LS」でも同様だった。
別の言い方をすれば、「LS」は最も空力性能に優れたモデルだということ。
先に言及した微調整は、ロフト角8度のモデルではさらにアグレッシブな空力形状が提供されているということだ。コブラのロボットテストでは、同じ力を加えた場合、8度の初速は9度のモデルよりも平均で0.44m/s速かったらしい。
言うまでもなく、誰もが8度のドライバーを扱えるわけではない。ここで話しているのは低スピンでフラットな軌道を実現する8度のドライバーについてであり、8度のコブラ「DARKSPEED LS」にフィットするゴルファーの割合は非常に低いという不都合な事実は歴然としている。しかし、フィットする人にとっては、潜在的な初速の向上は魅力的だ。
ということで、ここで世界最速のスインガーについて話をすると、カイル・バークシャーは「DARKSPEED LS Long Drive」プロトタイプでヘッドスピードを1.65m/s、「プレーヤー B」と呼ばれる別のゴルファーは、「LTDx Long Drive」モデルよりも1.34m/s向上させた。
平均的なゴルファーはヘッドスピード67m/sには遠く及ばないので、それほどの初速増は望めないだろう。しかし、もし44m/s以上あるなら、十分に空力の恩恵にあずかることができるはずだ。
コブラ「DARKSPEED LS」のロフト角8度と9度では、フェースとアドレス時の見え方の違いが最も顕著に思える。9度はフェースへの流れがそれほどアグレッシブではないのに対し、8度のトレーリングエッジは前後に少し長く見え、トレーリングエッジの曲線は9度ほどなだらかではない。
コブラいわく、「DARKSPEED LS」はテーラーメイド「ステルス2 プラス」よりも0.5インチ短いにもかかわらず、ボール初速は0.53m/s速かったという。要点を明確にすると、速度の恩恵のほとんどは「その形状」から来ているということだ。すごくない?
3ウエイトシステム
最も重要な変更点、少なくともほとんどのゴルファーに恩恵をもたらす変更点は、「DARKSPEED LS」の3ウエイトシステムへの回帰だ。
コブラの低スピンドライバーは、ここ最近の数世代にわたって底部にウエイトを搭載してこなかった。このウエイトを復活させたことで、低スピンプレーヤーは、少々の「寛容性」を享受できることになる。
また、ヒールポートに重いウエイトを配することで、比較的ニュートラルな弾道が期待できる。ヘッドスピード46m/sでのロボットテストでは、ウエイトをトウ側に移動すると、約13ヤード相当のフェードバイアスが生じた(ツアーレベルのものだが)。リアポジションではスピン量を300rpmほど増加させるとともにドローバイアスが少し生じた。
コブラ「DARKSPEED LS」は「寛容性」の高い設計ではないため、MOI(慣性モーメント)は他の「DARKSPEED」モデルよりもかなり低いが、バックウエイトポジションではヒールポジション(ニュートラル)と比較してMOI値が±300であることは特筆に値する。
そしてロフト角8度のモデルでは、ヒール/トウのMOIは低くなるが、このモデルの設計の主な目的はMOIではなく究極の空力性能にあるので問題はない。
コブラ「DARKSPEED LS」のロフト角は、8度、9度、10.5度のラインナップとなっている。
コブラ「DARKSPEED X(ダークスピード X)」ドライバー
中間に位置する「DARKSPEED X」は、コブラの売上の大部分を占めることになるだろう。コブラは「X」が販売の40%を占めると予測しているが、これは通常、中間のモデルが占める割合より少し低いかもしれない。これはコブラの中間モデルのドライバーが競合他社の同等のものより低スピンであることに因る時もある。
「DARKSPEED X」の空力形状は「LS」ほど顕著ではないが、スカートはそこまで高くなく、クラウンの頂点の高さは低め、フェースへの流れもそれほどアグレッシブではない。それでも市場全体で見れば平均以上、というより傑出した空力性能を提供している。
スピン特性で見ると、中低スピンに分類される「DARKSPEED X」はおそらくMOI重視のゴルファーにとって理想的ではないだろう。低スピンを必要とするが、「LS」ほどの低さは求めていない人向けだ。
2ウエイトシステム
軌道調整は、伝説の「FLY-Z」に遡るコブラの「2ウエイトフリップシステム」により実現する。
中間部のウェイトポジションでは、「DARKSPEED X」は比較的ニュートラルな弾道となるはずだが、後方のウェイトポジションはドローバイアスがわずかに生じる。
また、前方と後方のポジションでは約200 rpmのスピン量の差がある。
こういうケースの常だが、前方のポジションでより速いボール初速とフラットな軌道となり、高い後方のポジションではより高弾道とより高MOIとなる。
ヒール/トウのMOI値は5,000をわずかに下回る程度で、これは市場のトップには遠く及ばないが、低スピン系のドライバーとしては頼りになる数値といってよい。
そしてコブラいわく「AEROJET X」よりも約4ヤード飛ぶという。これは空力の改善と重心位置の合わせ技によるものだ。
コブラ「DARKSPEED X」のロフト角は、9度、10.5度、12度がラインナップ。
コブラ「DARKSPEED MAX(ダークスピードマックス)」ドライバー
「DARKSPEED MAX」は独特の形状を持っているといっていいだろう。スカートは最も低く、クラウンは最も平らだ。決して空力に劣る、あるいは空力がないというわけではないが、3モデルの中では、初速よりも扱いやすさと「寛容性」を重視したデザインとなっている。
また、「DARKSPEED MAX」はスイングの遅いゴルファー専用というわけではない。コブラの「DARKSPEED」シリーズの中で、すべてのゴルファーがアグレッシブな空力形状を活かせるわけではないという現実をシビアに受け入れたモデルだ。
2ウエイトシステム
「DARKSPEED X」と同じく、「DARKSPEED MAX」の弾道調整は2ウエイトシステムによって実現する。決定的な違いは、「MAX」がドライバーのヒールとリアでウエイトを分けていることだ。
後方のポジションは最も寛容 (ヒール/トウMOIは5,600台)である一方、ヒールポジションではさらに6ヤードのドローバイアスが生じる(バックに重いウエイトを配することで「MAX」は「X」よりもドローバイアスが強くなる)。後方のポジションではより「寛容性」が高くなるが、ヒールにウエイトがあってもMOI値は5,000以上のままとなっている。
そして、2つのポジション間のスピンの差は約240 rpmで、後方のポジションの方が高スピンとなる。
コブラ「DARKSPEED MAX」のロフト角は、9度、10.5度、12度がラインナップ。
ウェイメンズとジュニア用もある。
<純正シャフト(※日本版)>
「DARKSPEED LS」ドライバー
・フジクラ「SPEEDER(スピーダー) NX for Cobra」
・グラファイトデザイン「TOUR(ツアー) AD for Cobra」
本体価格:79,000円
・フジクラ「SPEEDER NX BLACK 60」
・グラファイトデザイン「TOUR AD VF 6」
・三菱「DIAMANA(ディアマナ)WB 63」
本体価格:95,000円
「DARKSPEED X」ドライバー
・フジクラ「SPEEDER(スピーダー) NX for Cobra」
・グラファイトデザイン「TOUR(ツアー) AD for Cobra」
本体価格:79,000円
・フジクラ「SPEEDER NX BLACK 50」
・グラファイトデザイン「TOUR AD VF 5」
・三菱「DIAMANA(ディアマナ)WB 53」
本体価格:95,000円
「DARKSPEED MAX」ドライバー
・フジクラ「SPEEDER(スピーダー) NX for Cobra」
・グラファイトデザイン「TOUR(ツアー) AD for Cobra」
本体価格:79,000円(左用なし)
※日本では、試打解禁日:2月10日(土)、発売日:3月9日(土)となっている。
純正シャフト(※アメリカ版)
コブラ「DARKSPEED LS」用の純正シャフトは、USTマミヤの「LIN-Q M40X ホワイト」とプロジェクト X 「HZRDUS(ハザーダス)マットブラック」。
「DARKSPEED X」のシャフトは、USTマミヤの「LIN-Q M40X ホワイト」と三菱の「Kai'li(カイリ)ブルー」のいずれか。
「DARKSPEED MAX」の選択肢は、プロジェクトXの「HZRDUS CB レッド」かUSTマミヤの「LIN-Q M40X レッド」だ。
必要十分な純正シャフトといえるが、コブラがプレーヤーテストで特に優れた成績を残した「LIN-Q」推しであることは指摘しておくべきだろう。
全ラインナップの純正グリップはラムキンの「クロスライン」となっている。
限定版
秘密保持のため、過度に(あるいはどんな意味でも)具体的なことは言えないが、シーズン初期にいくつか追加の(黒地に黒ではない)配色が「DARKSPEED」シリーズに加わることになりそうだ。
コブラ「DARKSPEED(ダークスピード)」ドライバーの価格と発売日
コブラ「DARKSPEED」ドライバーシリーズの小売価格は549ドル(ジュニア用は449ドル)。予約販売は1月11日から、一般販売は1月19日から。(アメリカ)
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