2024年を代表するPING(ピン)「G430 MAX 10K」VSテーラーメイド「Qi10 MAX」ドライバーを比較。

この両者は同日に発表され、どちらも「10K」だと話題を呼んだ。だが、「寛容性」に定評があるPINGと「寛容性」に定評が無いテーラーメイドとでは、同じ「10K」でもそれぞれ受ける印象が異なるのは事実。


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2022年、PINGが意外にも「激飛」と謳って「飛距離」を押し出してくるとは思わなかったように、2023年の「どこまでも遠くへ、どこまでもやさしく」というキャッチコピーから方向性はある程度予測できたが、テーラーメイドが「寛容性」に注力した商品を、しかもPINGと同じ「10K」だとは予想もつかなかった。

この両者の「10K」かぶりに憶測も聞かれたが、先日『2024年ドライバーランキング』の「総合」「低ヘッドスピード」「中ヘッドスピード」「高ヘッドスピード」部門と4つのランキング全ての結果が出揃い、この結果が全てだとは言わないが、この両者「10K」対決として一つの結果が出た。

この2つのモデルのどちらが優れているのか?37モデルの性能テストを実施した『2024年ドライバーテスト』から見てみよう!

このテスト結果は、皆さんのような熱心なゴルファー35名のテスターと240時間以上を費やしデータを収集、分析して得たデータによるものだ。我々の徹底したテストは、毎年1,700万人の読者にリーチできる程多くの皆様が我々のリサーチと結果に信頼を置いてくれている。

では、まずテーラーメイド「Qi10 MAX」の特徴から。


「10K」の時代へ テーラーメイド「Qi10 MAX」ドライバー

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「Qi10」とは、テーラーメイドに大きな価値のある“Quest for Inertia(慣性の探究)”と、世界で一番「寛容性」が高いドライバーを作るという同社が掲げた目標を意味している。

この「10K」って何?とよく聞かれるが…。「10K」についてご存知の方も多いと思うが、USGAの上限MOI(慣性モーメント)は5,900だ。これに関して重要なのは、規則が一軸に適用されているということ。

ほとんどの場合ヒールからトゥまでのMOIを意味しているが、上下方向のMOIも適用することで合計MOIを10,000(10K)以上にすることは可能(さらにUSGAルールにも適合している)。

「Qi10」シリーズは、「Qi10」「Qi10 LS」そして「Qi10 Max」と3モデルあるが、MOI(慣性モーメント)が10,000を超えているのは「Qi10 Max」だけだ。

素材は前作の『60層のカーボンファイバー』はそのままで、『ツイストフェース』、『インバーテッド・コーン』テクノロジーも搭載されており、フェース全体の初速も維持されている。

さらに、テーラーメイドの新『インフィニティ・カーボンクラウン』デザイン。「Qi10 Max」はこれまでで最大のクラウンが特徴。

「ロフトスリーブ」以外の調整機能は搭載されていないが、固定された後部ウエイトはなんと32gある。「Qi10」のヘッド体積は460ccだが、この「Qi10 Max」についてはUSGAのサイズ上限。

そのため課題もいくつかある。

重心が後方部にあると質量特性も変化する。これによりゴルファーのクラブの動かし方も変わってしまうので、テーラーメイドは「Qi10 Max」がインパクト時にスクエア(真っ直ぐ)になるように設計を行った。

また一般的にヘッドが大きくなるとエアロダイナミクス(空力特性)が不利に働くため、テーラーメイドも「Qi10 Max」は市場にあるドライバーと比べて一番効率的だとは言っていない。

続いて、PING「G430 MAX 10K」ドライバーはどうだろうか。


更なる高みへPING「G430 MAX 10K」ドライバー

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今回、PINGが「10K」を実現した方法として3つの重要なことを行なった。

1、投影面積の最大化

全てのドライバーにはヒールからトゥ、そして前後のサイズについて収めなければならない文字通りの規定があるが、「G430 MAX 10K」ドライバーは、その規定ギリギリを攻めたPING初のドライバーとなっている。


2、カーボン・フライ・ラップテクノロジー

『カーボン・フライ・ラップクラウン』は「G430 LST」と物理的な配置は同じだが、投影面積が大きいということはクラウンも大きくなっており、さらなる軽量化を実現。


3、28gの後部ウエイト(固定式高比重ウエイト)

一つのエリアからウエイトを削除することで余剰重量が生まれ、より有用なところにウエイトの再配置が可能になる。

ウエイト軽減によりPING「G430 MAX 10K」は、28gの後部ウエイトを搭載することができた。これは、PINGがこれまで実現した中では最も重たいウエイトとなっている。

このウエイトは「G430 MAX」や「G430 LST」と違い固定式(弾道調整用ではない)だが、MOI向上に加えスイングバランスのチューニングに柔軟性をもたらしてくれる。

ここまで、テーラーメイド「Qi10 MAX」とPING「G430 MAX 10K」ドライバーの主な特徴をごく簡単に説明したが、次にこの両者が『2024年ドライバーテスト』の各部門でどのような数値を出したのか、またその結果がどうだったかを見てみよう!


PING「G430 MAX 10K」とテーラーメイド「Qi10 MAX」ドライバーのデータを比較

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「総合」データ

モデル名ボール初速
(m/s)
打ち出し角
(度)
スピン量
(RPM)
高さ
(m)
落下角度
(度)
キャリー
(ヤード)
トータル飛距離
(ヤード)
左右のバラつき
(平方ヤード)
ストレート
ショット(%)
PING
「G430 MAX 10K」
63.8313.502,4458.6236.74238.49253.693,60356.30%
TaylorMade
「QI10 Max」
63.2913.672,6028.7237.21231.22245.893,20050.50%

「総合」スコア

モデル名総合
(順位)
飛距離正確性寛容性
PING「G430 MAX 10K」1位9位1位6位タイ
TaylorMade「QI10 Max」29位タイ33位7位タイ16位

「高ヘッドスピード部門」データ

モデル名ボール初速
(m/s)
打ち出し角
(度)
スピン量
(RPM)
高さ
(m)
落下角度
(度)
キャリー
(ヤード)
トータル飛距離
(ヤード)
左右のバラつき
(平方ヤード)
ストレート
ショット(%)
PING
「G430 MAX 10K」
69.4612.62,45910.539.8264.8280.14,54856.20
TaylorMade
「QI10 Max」
68.7512.32,73210.440.1257.9274.23,79451.20

「高ヘッドスピード部門」スコア

モデル名総合
(順位)
飛距離正確性寛容性
PING「G430 MAX 10K」13位タイ20位タイ4位タイ7位タイ
TaylorMade「QI10 Max」21位32位12位タイ7位タイ

「中ヘッドスピード部門」データ

モデル名ボール初速
(m/s)
打ち出し角
(度)
スピン量
(RPM)
高さ
(m)
落下角度
(度)
キャリー
(ヤード)
トータル飛距離
(ヤード)
左右のバラつき
(平方ヤード)
ストレート
ショット(%)
PING
「G430 MAX 10K」
63.3013.72,4419.1637.55236.9251.853,87856.60
TaylorMade
「QI10 Max」
63.0213.22,6919.0838.10231.4246.903,43053.00

「中ヘッドスピード部門」スコア

モデル名総合
(順位)
飛距離正確性寛容性
PING「G430 MAX 10K」11位タイ17位タイ4位タイ4位
TaylorMade「QI10 Max」20位タイ31位タイ4位タイ6位タイ

「低ヘッドスピード部門」データ

モデル名ボール初速
(m/s)
打ち出し角
(度)
スピン量
(RPM)
高さ
(m)
落下角度
(度)
キャリー
(ヤード)
トータル飛距離
(ヤード)
左右のバラつき
(平方ヤード)
ストレート
ショット(%)
PING
「G430 MAX 10K」
52.3415.12,3896.3732.6181.7196.03,05855.80
TaylorMade
「QI10 Max」
51.4914.82,5806.1932.5173.7189.82,63846.40

「低ヘッドスピード部門」スコア

モデル名総合
(順位)
飛距離正確性寛容性
PING「G430 MAX 10K」1位15位タイ1位10位タイ
TaylorMade「QI10 Max」29位15位タイ22位タイ23位タイ

まとめ

この結果を見て、皆さんはどう思っただろうか?

結果は一目瞭然で、『2024年ドライバーランキング』の「総合」と「低ヘッドスピード部門」を制したPING「G430 MAX 10K」に軍配が上がった。

確かにこの結果が全てではないにしても、これほどまでに差がつくものだろうか?

テーラーメイドには、ドライバー設計における従来の妥協点を克服するために取り組むべく領域が3つあった。それが、前述した素材、新形状、ウエイト配分だ。

そして「Qi10 MAX」は、テーラーメイド史上最も「寛容性」が高いドライバーになったことに加え、40年以上に渡る同社ドライバー史上の中で、前年比では最大となるMOI増を実現した。

さらに、「Qi10 Max」でこれまでのモデルから大きく向上した「バラつきの少なさ」。テーラーメイドは、飛距離のバラつき、つまりは最小と最大のギャップが大幅に改善(最大30%)したという。

高いMOIのトレードオフとして、基本的にエアロダイナミクス(空力特性)の効率の低下や、重心位置に起因する高スピン軽減とボール初速の低下、あるいはヘッド重量増によって起こり得るヘッドスピードの低下などが挙げられる。


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しかし、今回の「Qi10 Max」はそうではないと、「我々は妥協などしていない」というのはテーラーメイドのプロダクション・クリエーション・シニアディレクターのトモ・ビューステッド氏。「妥協を破壊しているのだ」。と我々に述べていた。

だが、今年MOIを最大化したり、ストレートな弾道を実現しようとしているのはテーラーメイドだけではない。

さらに競争は激しくなっている。「飛距離」を犠牲にすることなく「弾道をストレート」にし、さらに「バラつきを抑えたい」というゴルファーが、これまで以上に多くの選択肢を享受できる。

テーラーメイドは、「寛容性」に関して実績が低いにも関わらず、独自のポジションを築いているのは過去のテストからも明らか。

今回「さらなる寛容性」というメッセージが、これまでテーラーメイドを検討してこなかったゴルファーの心に響き、「真っ直ぐな弾道」が試打でも約束されていたなら、テーラーメイドにとって今年はビッグイヤーになる可能性があったはずだ。

「寛容性」に関して、「10K」にしたとしても払拭できなかったことはこのデータからは明らかであり、今後の課題となることは間違いないだろう。そして「寛容性」を重視したことによる「飛距離」の犠牲についても…。

今回の結果がどうであれ、テーラーメイドというブランドは毎年我々を驚かせてくれる。今年はそう来たかと、想像を超えテストするのが楽しみでもある。

来年はどのような戦略でくるのか?1年という発売サイクルの中で、他のメーカーが良くも悪くも大幅な改良を施すことがない中、先陣を切るかのように恐れることなく堂々と、さらにカスタムやオールブラックなど、あれやこれやの手で楽しませてくれる。


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一方、PINGはさすが信頼度NO.1ブランドだけあって、安心感がある。さらに、今一番勢いがあると言っても過言ではない。PING「G430 MAX 10K」の今回の結果は発売当初から予想はできていた。

しかし、驚いたのは「低ヘッドスピード」向けだけでなく、ヘッドスピードが最速(ヘッドスピード53.64m/s以上)のテスターの一人が、他の高MOIドライバー2モデルとともに試打した結果、「G430 MAX 10K」のパフォーマンスはその中でも他のモデルを圧倒していたという点だ。

「G430 MAX 10K」は驚くほど真っ直ぐ飛ぶ。我々が試打した際、このモデルは初めて“真っ直ぐ飛ばすために設計された”ドライバーだと思ったし、その結果にも圧倒された。主に「正確性」を求めているゴルファーはこれ以上ない選択肢といってよい。

もし、最適シャフトを装着したPING「G430 MAX 10K」で真っ直ぐ飛ばなければ、他のどのモデルを打っても真っ直ぐ飛ばないだろう。

さらに、「正確性」だけでなく、「飛距離」と「寛容性」のスコア部門でもトップ10にランクインしている。イチャモンをつけるのは本当に難しいというくらい良いのだ。

唯一言うとするならば、「飛距離」重視のゴルファーの選択肢には当てはまらないという点とヘッド形状が大きいため、見た目が気になるというゴルファーにはオススメできない。

PING「G430 MAX 10K」は、ヘッドスピードの速いゴルファーに限らず、多くのゴルファーに自信を持ってお勧めできるドライバーといえる。


スペック・価格

PING「G430 MAX 10K」

価格:104,500円

ロフト角:9度、10.5度、12度。

<標準シャフト・グリップ>

「ALTA J CB BLACK」

「TOUR 2.0 CHROMEクローム」

「PING TOUR 2.0 BLACK

「FUJIKURA SPEEDER NX 35/45」

「GP360 LITE TOUR VELVET ROUND (バックライン無し)」

装着シャフトおよびグリップの詳細はPINGのホームページより

中古価格はこちらを参照!


テーラーメイド「Qi10 Max」

価格:86,130円

ロフト角:9度と10.5度

標準シャフト

「Diamana Blue TM50」

「Qi10 Max」詳細はこちら!

中古価格サイトはこちらを参照!