・PING「PLDミルド」シリーズが刷新

・全モデルが、スチール、アルミまたその両方の削り出しパター。

・モデルはブレード2つとマレット3つ

・PINGでは「PLDミルドプラス」ネットカスタムツールもリリース

・メーカー希望小売価格は「PLDミルド」が485ドル、「PLDミルドプラス」は585ドル。

※「PLDミルド」パターの日本での発売価格は、¥66,000(税込)で2024年3月7日発売。


私がPINGを気に入っている理由の1つが、新作のリリースが非常に素っ気なく見えることだ。他メーカーのリリース時に同調するド派手な広告に比べると、PINGのマーケティングはその真逆で極めて控えめ。

PINGにとっては総力をあげたマーケティングなのかもしれないが、他社の誇大広告の裏にひっそりと佇んでいるかのように感じてしまう。


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だが、PINGは自分たちのギアが素晴らしいことは分かっているし、ギアが全てを物語っている。そんな誇大広告なんかしなくても、PING製品を手にすれば、その素晴らしさは伝わるということなのだろう。

確かに、我々はいくつものPINGの素晴らしい製品を目にしてきている。そして、それは消費者も一緒だ。


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今回ご紹介するのは、2024年版のPING「PLD(パッティング・ラボ・デザイン)ミルド」パターだ。いつも通りPINGは控えめな宣伝で、お馴染みの“パターの池(市場)”に放り込んだだけに過ぎない。

PINGはこれまでも「PLDミルド」パターを提供してきているため、これらのパターを大音量で宣伝する権利はある。もちろん、そんなことはしないだろうけど、今回は特にそうすべきだと言いたいその理由を今から解き明かしていこう。


2024年PING「PLDミルド」:精密削り出し

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2024年のPING「PLDミルド」パターが、他のミルドパターと一線を画している点を1つ挙げるならミーリング(削り出し)にある。製造公差が無茶苦茶に小さく、スコッティキャメロンやベティナルディのパターのミーリングくらい精密なのだ。

PINGの削り出しパターはいつもそうではなかったので、これは注目ポイント!PINGのパターは随分前から鋳造だった。“他社から称賛”された「ANSER(アンサー)」デザインも削り出しが始まりではなかった。初の削り出し「ANSER」の製造は、初代から30、40年後だったのだ。

削り出しパターは、PINGにとって摩訶不思議なことで、当初は路頭に迷うこともあった。PINGの削り出し「REDWOOD(レッドウッド)」パターは仕上げに問題があったし、「ANSERミルド」シリーズには即座にリコールした神話に近い「ANSER 0」が含まれていた。

(もし「ANSERミルド0」を持っているならMyGolfSpy本部のデーブ・ウルフェまで送ってくれれば、適切に対応するよ)

しかし、PINGは「PLDミルド」シリーズを発表してから削り出しのレベルがトップレベルになった。今回の新しい「PLDミルド」も、もちろん精密な削り出しを継承している。ヘッドの四隅から「新ディープAMP(アンプ)溝」に至るまで、PINGの削り出しは精密で、結果的に非常に魅力的なパターに仕上がっている。

PINGによると、各ヘッドの削り出しは、全ての面と角度の正確性を確認するためだけに4時間掛かけているとのこと。どの部分においても手抜きはないというわけだ。


2024年PING「PLDミルド」:異形もラインナップ

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宣伝に関しては控えめなPINGだが、そんなPINGとは思えないくらいの奇抜なパターも製造している。PINGが単に作ったというものだけでなく、その後リリースした“独特な”デザインとなれば、ここでは語り尽くせないほどある。

過去には「NOME(ノーム)」、「SIDNEY(シドニー)」、そして半月型の「DOC 17」が存在。PINGは、「Y-WORRY(ワイ・ウォーリィ)」のマレットで一石を投じたし、ボールが拾えてカップを傷つける可能性がある「FETCH(フェッチ)」は、コース管理者泣かせだった。

こうした既成概念の枠を超えるデザインは全てが素晴らしいわけではなかったが、中には良いものもあった。2012年のこと、ハンター・メイハンは、その週からPINGの「NOME(ノーム)」を使い、WGCアクセンチュアマッチプレー選手権で優勝。アルミの削り出しマレットの打感は秀逸だった。

PINGの「KETSCH(ケッチ)」も異形モデルで投入時のプロモーションはゼロ。今日に至るまで、個人的に「KETSCH」は『Most Wantedテスト』の対象としたパターの中でトップクラス、あるいはベストのマレットだと考えている。

PINGは毎度、大人気パターを再販すればよいはずだ。他のブランドはそうしているのになぜ右に倣えとならないのか?それどころか、今回PINGは波型ネックの新しい「OSLO 3(オスロ)」や複合素材を採用した「ALLY BLUE 4(アーリーブルー4)」を市場に投入している。

両ヘッドともデザインが普通じゃない。こうしたデザインが最終的にどんなパフォーマンスに寄与するのかは、こうしたパターを買う個人にとっても重要だが、ゴルフ全体にとってはもっと大切。PINGがデザインの既成概念を打破し続けるということは、ゴルフ業界にとっては大きな意味を持つのだ。


2024年PING「PLDミルド」パターシリーズ

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2024年の新しいPING「PLDミルド」シリーズは5モデルある。2モデルはブレードで3つがマレット。

レフティとセンターシャフトモデルがないのは残念なお知らせだが、この2024年のPING「PLDミルド」シリーズは、それ以外のユーザーに対して伝統的な部分と新しいPINGのデザインの融合を提供している。

この中の数モデルはPINGの契約プロが使用したもので、PINGのパター保管庫に他のどのパターより多くのゴールドパターが保管されている。パターの歴史においてPINGに勝てるメーカーはないのだ。


2024年PING「PLDミルド ANSER(アンサー)」パター

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いきなり4番バッターの2024年PING「PLDミルド ANSER」からご紹介。「ANSER」のコピー版ではなくまさに「ANSER」だ。

微調整は軽微。これまでキャビティ部分にドットが入っていたり何もない「ANSER」はあったが、このモデルはサイトラインが入っている。また仕上げはガンメタル。485ドルという価格だが、一般販売されている「ANSER」としてはメチャクチャ良い。

そう思う理由は、最近になってPING「PLDミルド ANSER」のカスタム版を手に入れたからだ。新パターのリリース連発という渦中において、自分に最適で見慣れたものを使いたかったからね。

“見慣れた”とは、まさにこの新しい2024年PING「PLDミルド ANSER」を表現する言葉だ。このモデルは、驚くことに、私がカスタムした「ANSER」にそっくり。『PLDカスタムフィッティング』を通じて決めたスペックに合うようにこのパターを作ってもらったので、同じようなフィーリングと使用感だったことには驚かされた。

『PLDカスタムフィッティング』があるものとは違い、この新しい店舗向けの「ANSER」はフィッティングや広範に及ぶカスタマイズはなし。でも、価格は1,000ドル安くなる。

ニューパターをもっと華やかにしたければ、PINGが新プログラムを用意しているので、後ほどご紹介する。

2024年PING「PLDミルド ANSER 2D」パター

PING「PLDミルド ANSER 2D」は「ANSER 2」の大型版。「D」はこのデカヘッドを見た時に言いそうな“デカっ!”を指す。

(あくまで私の想像だけど)

ともかく、この“ディープ形状”の「ANSER 2」はトニー・フィナウが使用中。新しいPINGの「PLDミルド」シリーズは、PGAツアーでプレーするPINGの契約プロが使っており、恐らくプロたちのスペックと全く同じということはないだろうが、その構造はプロとPINGの開発陣の継続的なコミュニケーションに基づいている。

いずれにしても、フィナウと全く同じスペックのパターなら使いたくない。フィナウの身長は2m近くで、パターの長さも40インチになってしまうから。プロモデルはデザインが洗練され、パフォーマンス的にもそのデザインにする理由があるけど、皆さんはどんな時でも皆さんに合うものを使った方が良い。

2024年PING「PLDミルド DS72」パター

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まず、このモデルはビクトル・ホブランが使う「DS72」とは違う。PINGでは昨年秋にホブランモデルを限定リリース。このフェースバランスの「DS72」は長さが伝統的で、驚くことにホブランの36インチモデルよりも5g重くなっている。

自分がNGを出したデザインに驚くことは、私がパターテストを好む理由の一つだ。私は基本的に丸みのあるマレットでエイミング(正しい方向に狙いを定めること)することが苦手。多分、どこを見たら良いのか目が混乱してしまうのか、単に心理的なことなのかも知れない。

とにかく、「DS72」を試してみようと思ったのは、好奇心というより義務感。丸みのあるヘッドでうまくパッティングができないことは明白だった。

ところが、PINGがフェニックスでどんな魔法を使ったのかは分からないが、今まで試したラウンドマレットとは違う感じで、このマレットパターでパッティングすることができたのだ。

このことをお伝えしたのは、自分がこのタイプのパターに偏見を持っていたことに気がついたから。自分がこの「DS72」を使うことはないだろうけど、可能性は0ではないし、先入観のせいでこのパターを素通りしていただけかも知れない。

つまり、偏見は忘れて全てのパターを試そうというのが私からのアドバイス。

私の親友はずっと「ANSER 2」を使ってきたけど、PING本社でフィッティングを受けたら「DS72」を使うことになった。繰り返すが、全て試せということなのだ。

2024年PING「PLDミルド OSLO 3(オスロ3)」パター

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PINGでは、この「OSLO 3(オスロ3)」をティレル・ハットンに影響を受けたパターとしている。言いたいことは分かる。ハットンは、ホーゼルこそ違うが「OSLO」マレットを使用しているからだ。

ではなぜPINGが、ハットンが使うものと同じパターを作らないのか?答えはもう作っているからだろう。ハットンは2016年からPING「OSLO(オスロ)」の「VAULT(ヴォルト)」パターを使っているのだ。

PINGは、旧モデルを再度リリースするのではなく「OSLO」に「#3」のアルミネックを装着した。このネックにしたことで、ハットンの「OSLO」よりもややトゥハング(トウの傾き度合い)になりシャフトもオフセットされている。

今回は「PLDミルド OSLO」の2作目だがこれまでとは違っており、前回の「PLDミルド OSLO」は「#4」ネックで大きなアーク(軌道)にフィットしていたが、今回の「OSLO 3」はスライトアーク(フェースの開閉が小さいまたは中程度)にマッチする。

私のラウンドパター恐怖症は「OSLO 3」では発症しなかった。理由は中央のキャビティがかなりスクエアだから。このパターだとアライメントもすごくし易い。大きな長方形のキャビティをターゲットに向けてストロークすれば良いからだ。

そして、「OSLO 3」はウエイトが375gで2024年のPING「PLDミルド」シリーズの中では最重量で使用感もそんな感じ。芝生の上をかすめる時、この重量のおかげで非常に安定したパターとなっている。

2024年PING「PLDミルド ALLY BLUE 4(アーリーブルー)」パター

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いよいよクライマックス。ベストなモデルを最後に残せたのかは分からないけど、「ALLY BLUE 4(アーリーブルー4)」は2024年PING「PLDミルド」シリーズの中で一番興味深いパターだ。

まず、ボディがアルミの削り出し。アルミ削り出しのマレットのフィーリングは素晴らしいものがある。またこのモデルのホーゼルもアルミ。スラントネックが装着されており、「ALLY BLUE 4」はアークが大きいストロークに合っている。

このスクエアパターのデザインを締めくくるのは、ステンレススチールのソールプレートだ。皆さんは、PINGパターでステンレススチールのソールプレートがついたアルミマレットをご存知だろうか?

答えは「KETSCH(ケッチ)」。

では、ボディ中央で盛り上がっている長方形の真ん中にボディ長のサイトラインがあるPINGのパターをご存知だろうか?

これも「KETSCH」だ。

両端の小さな翼のような部分も「KETSCH」を思い起こさせる。

では、PINGは「PLDミルド ALLY BLUE 4」に初代「KETSCH」の魅力を取り込んでいるのだろうか?答えは不明だが、「KETSCH」のDNAは受け継いでいるように思える。

「KETSCH」がストロングアーク(インパクト前後におけるフェース開閉が中程度から大きくなる)向けのパターとしてリリースされていることには少し驚いたが、PINGにはストロングアークマレットを作ってきた歴史がある。

「PRIME TYNE 4(プライムタイン4)」もストロングアークマレットで非常に人気があった。初代「KETSCH」は、ストロングアークパターとして注文することが可能だったが、“アーク”はパターのホーゼルタイプではなく、シャフトの曲がり次第ということ。「ALLY BLUE 4」の仲間としては悪くない。

いずれにしても、私は「ALLY BLUE 4」が『Most Wantedマレットテスト』までにローンチされることを願っている。もしテスト対象になれば、かなり良い線いくはずだ。

PING「PLDミルドプラス」カスタムプログラム

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私は、以前言及したPING「PLDミルド」カスタムプログラムが、世の中にあるベストフィッティングかつベストカスタムパタープログラムの一つと考えている。お伝えしている通り、このプログラムにより生まれた「ANSER」を使い続けていることにも満足している。

一方で、「PLDミルド」カスタムプログラムは1,400ドルもかかる。パターにそこまでコストをかける余裕がなかったり、あるいはパターのスペックを既に知っているようなら、「PLDミルド」カスタムプログラムはあなたにとって過剰かも知れない。

そこでおすすめなのが、PING「PLDミルドプラス」カスタムプログラムだ。通常の「PLDミルド」の価格に100ドル追加すれば、アライメントスキーム、パターとグリップのペイント、さらにレーザー加工グラフィックをカスタマイズすることが可能。

PING.comのカスタムツールを使ってパターを作り、そのデザインをPING契約店に持ち込みオーダーすることもできる。もちろん、他のPINGパター同様、長さ、ロフト角、ライ角の調整もOK。店舗スタッフもこうしたスペック調整のサポートは喜んで対応してくれるはずだ。

選択できるオプションは「PLDミルド」カスタムプログラムほどではないかも知れないが、「PLDミルドプラス」パターをあなた独自のものにする選択肢は十分にある。当然、自分も「試してみた」でこのプログラムを試す予定だ。


まとめ

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2024年のPING「PLDミルド」シリーズは、革新的というより漸進的だがそれでもソリッドなパターと言えるだろう。

ラインナップは定番の「ANSER(アンサー)」だけでなく「KETSCH(ケッチ)」に似た「ALLY BLUE 4(アーリーブルー4)」まで充実。5モデルだけで全ゴルファーを網羅することはPINGにとっても厳しいが、この5モデルは多くのゴルファーニーズを満たしてくれるはずだ。

もう少し個々に合ったパターが欲しいなら、もう100ドル用意してPING「PLDミルドプラス」を手にすれば良いだろう。個人的にはこのプログラムがどのような感じなのか直接体験したくて仕方ない。


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一方、削り出しパターの基準となる価格が400ドルを超え500ドル近くになっていることは本当に残念でならない。PINGが価格を釣り上げているとは思わないが、原材料費高騰と4時間に及ぶ削り出しが、前作の「PLDミルド」より35ドルアップしている要因になっているはずだ。

2024年のPING「PLDミルド」パターは安くはないが素晴らしい出来になっている。PINGパターを買う時は、せめてマーケティングコストではなく質の高い製造と細部にもこだわった工学技術に高いお金を払っていることは理解すべきだ。

2024年PING「PLDミルド」パターシリーズの詳細は、PINGのホームページまで。


Q&A

ゴルフクラブでどうしてここまで高いのか?

これに対する答えが見つかり、いつか価格が反対方向に進むことを願うが、300ドルの新作ドライバーと300ドルの削り出しパターを懐かしく思う日が来るは思わなかった。


どうしてPINGが同じ「ANSER」パターを発売し続けるのか?

まず、「ANSER」はPINGを象徴するパターデザインで、いつでも彼らが好きな時に発表する権利がある。次に、前作の「PLDミルド」シリーズの「ANSER」は、実際のところ「ANSER 2」だった。今回の「ANSER」が前作と違うパターなのはそれが要因となっている。


非常に多くのメーカーが「ANSER」デザインをコピーしているけど、法的なトラブルはないのか?

「ANSER」の特許は1984年で切れている。その後になると、メーカーは影響を受けることなく「ANSER」の形状を彼らのパターシリーズに入れることが可能となった。これは初代ミッキーマウスの「蒸気船ウィリー」が1月に公共財産になったのと同じこと。これで初代ミッキーを好きなように使用できるようになった。


PINGはもっと広告露出を増やせば、さらに売り上げを伸ばせるのでは?

そうかも知れないが、それだと彼らの価値基準と離れてしまうと思う。PINGは工学技術主導のメーカーであり、バズらせるために製品を開発しているわけじゃない。

新しいPING製品は、古いPING製品より良くなっている。もちろん、この考えは他メーカーも同様に自社製品を向上させようとしているわけだから、PING独自のものではない。

私が言いたいのは、PINGは旧モデルに新しいペイントを施し、それを新作として市場に投入するなんてことは決してしないだろうということだ。