ミズノは新作「T24」ウェッジで極めて巧みな戦略をとってみせた。

熱狂的なミズノマニアであろうと、ボーケイやキャロウェイ、クリーブランド、テーラーメイドのウェッジ推しの俗物であろうと、新しいミズノ「T24」ウェッジが姿勢を改めさせたり、考え方を変えたり、意見を新たにさせることはない。

これは、「T24」が優れたウェッジではないと言っているのではない。

「ウェッジといえばミズノ」または、「ミズノのウェッジを使っており、満足している」というゴルファーに対して、ミズノはもちろん翻意させるつもりはないということだ。

ミズノと言えばアイアンのイメージが根強いが、ミズノのウェッジが、我々の性能テストでしっかりと結果を残していたことをご存じだろうか?

では、ミズノの新作「T24ウェッジ」の詳細をみていこう。


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ミズノの新作「T24」ウェッジ

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遡ること2017年から2019年にかけて、ミズノはMyGolfSpyの『ウェッジランキング』でかなりの好成績を収めてきた。「T7」ウェッジは17年にトップの栄誉に輝き、「S18」と「T20」ウェッジは18年と19年に2位の座を獲得した。

しかしその後、2021年には「T22」ウェッジが総合7位にとどまったものの「スピン性能」では3位となり、ウェット時(濡れた状態)のテストにおいてはドライ(乾いた状態)の「85%以上のスピン量」を維持した数少ないウェッジのうちの1つとなった。

最高性能のウェッジとはならなかったが、これでミズノのウェッジが、他のモデルと比較してもまずまずの位置にいることは明らか。

となると、新しい「T24ウェッジ」に対するミズノの課題は極めて単純。良いものは残し、疑わしきものは改善し、そして良くないものを取り除く。もちろん、単純とは言ったがこれは簡単なことではない。


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新しいミズノ「T24」ウェッジは、「乾いた状態」と「濡れた状態」の双方のスピン性能を向上させるため、改良された「ロフト別設計の溝」を備えている。また、ローロフトからハイロフトモデルになるにつれ、トップラインは薄く、操作性が増し、よりコンパクトなヘッド形状となっている。

そして、この新しい形状にはウエイトの一部をトウのやや高い位置に移動させることで、垂直方向のMOI(慣性モーメント)を高め、打ち出し角を抑え、スピン性能を向上させるという利点もある。

またご想像通り、新しいミズノ「T24」ウェッジは、「軟鉄ボロン鋼」を備え「1025ステンレス」を用いた『グレインフローフォージドHD』製法で作られている。「HD」は“高密度”の略で、基本的にはミズノに期待されるような打感を得るために、打点エリアのすぐ後ろの素材の密度が高いことを意味している。


ラインと形状

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これまでの「上級者(競技志向者)向け」ウェッジにおいて、形状の改良には制約がある。何をどう変えたとしてもウェッジのように見えなければならないのだ。また、何もかもがうまくいったとしても、今使っているアイアンセットに新しいウェッジを組み合わせたときの流れは、どこかぎこちないものになるのが常だ。

そのぎこちなさを軽減するために、ミズノでは“ウェッジデザイナーズハンドブック”をお手本に、「改良された、よりコンパクトなヘッド形状」を採用した。

まず、トップラインを薄くし、トウ上部を薄肉化した。さらに、トップラインからホーゼルに繋がる部分の素材もカットしたのだ。

そのカットした分はどこへ行ったのか?その多くは、『スピン加重ブレード設計』、ブレードの上部に配置されている。その頭が重い重量配分により重心位置がわずかに上がり、わずかに低くなった打ち出し角と、スピン量もわずかに増加するというわけだ。


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ウェッジの番手による見え方についても改良が加えられている。ロフト角46~52度のウェッジは、より直線的なラインを備えている。ミズノによれば、これにより今使っている(おそらくミズノの)アイアンセットから視覚的によりつながり良く流れるようになるという。

54度と56度のウェッジは、伝統的なティアドロップ形状を採用しており、コントロールショットでもフルショットでも安心して使える。そして、よりハイロフトの58度と60度のウェッジは完全なティアドロップ型。ミズノのグラインドオプションと組み合わせることで、グリーン周りでの操作性を最大限に発揮できるようになっている。

ミズノのウェッジは昔から、ロフト角やバウンス角がブレード裏のバッジに目立つように表示されており、ややごちゃごちゃした印象があった。新しい「T24」では、ロフト角バウンス角がよりクラシックに、より目立たないようトウに刻印されているため、かなりすっきりとして見える。


いかした「グルーブ(溝)」

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ウェッジは「スピン」が命。そして、ウェッジとしてしっかりと認められるために、メーカーはグルーブ(溝)に物語性を持たせなければならない。

ミズノ「T24」ウェッジは、ロフト角に応じて新たに最適化された溝を備えた。ローロフトウェッジの溝は17本。溝の幅は狭く深めの設計で、有難いことにフルショット時にスピン性能を発揮する。

58~60度のウェッジは、コントロールショットに合わせて最適化されている。溝は上部と底部が広く、水分や芝カスをうまく外に逃がす設計になっている。溝は浅めで、幅は広め、溝の数は15本にとどめた。

どちらの溝も、より円錐形になったショルダー形状と大きくなった両サイドのテーパーに再設計されており、ミズノによると、これによりUSGAのルールや規制の範囲内に収めながら、効果的に少しシャープさが増すという。

そして、ウェッジとしてしっかりと認められるためには、ウェット性能に関する物語性も必要となる。

2019年に「T20」ウェッジに『ハイドロフローマイクログルーブ』を搭載して以来、ミズノのウェット性能は盤石だ。『ハイドロフローマイクログルーブ』は、フェース面に追加のレーザーミリングパターンを取り入れたもので、ウェット時にさらに多くの水分を排出する。

ミズノはここでも「ロフト別設計」を採用している。46度〜52度のウェッジの場合、これらは通常スクエアな構えからのフルショットで使われるため、ミーリングはより垂直なパターンとなる。一方でハイロフトのウェッジではミーリングが約10度ほど傾いている。

これは、『ハイドロフローマイクログルーブ』により角度をつけて、フェースを開いた状態からのコントロールショットでより効果的に機能させるためだ。そしてウェットコンディションにおいてスピンを少しでも多くするためでもある。


グラインドでゲームを制する

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ウェッジビジネスでまともに扱ってもらうためもう一つの要件は、グラインドについての物語性だ。当たり障りのないグラインドは当たり障りのない売上を意味する。

ただし、グラインドオプションの多さが必ずしもたくさんのウェッジ売上に結びつくわけではないが、グラインドオプションは必要最低条件みたいなもの。それがなきゃ話にならないというだけだ。

ミズノ「T24」ウェッジには4つの必須となるソールグラインドが用意されているが、もうひとつ興味深い5つ目が追加されている。

46度~52度のモデルではフルショットを想定し、トレーリングエッジ全体に真っ直ぐな勾配をつけ、適度なヒールリリーフを備えた「Sグラインド」を採用。54度~58度のモデルは、ヒールとトウ双方に適度なリリーフを備えたミッドバウンスソールで、ミズノいわく操作性が高いという「Dグラインド」をラインナップした。

56度〜60度のモデルはよりアグレッシブなヒール、トゥ、トレーリングエッジリリーフを備えた「Cグラインド」。「Dグラインド」のハイバウンス版だ。ミズノいわく、「Dグラインド」や「Sグラインド」よりも操作性は高いという。

ミズノの「Xグラインド」は、ヒール、トゥ、トレーリングエッジに極端なリリーフを備えた(それゆえ“X”の名が付いた)、最もローバウンスのモデルで、グリーン周りで最大限の操作性を発揮する。ロフト角は58度と60度モデルのみだ。

そして新たに加わったのは、56度、58度、60度のモデルに対応した、ミズノが「Vグラインド」と呼ぶものだ。名前が示すように、非常にアグレッシブなトレーリングエッジリリーフが特徴で、V字型のソールを形成している。

このタイプのグラインドは、グリーン周りでの高度な操作性を維持しながら、「Cグラインド」よりもハイバウンスになる傾向がある。


ミズノ「T24」ウェッジ:総論、価格・発売時期

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冒頭で述べたように、もし既にミズノウェッジのファンなら、この新しい製品について自身の考えを変えるようなものは何もない。「ノンメッキ仕上げ」のみならず、セクシーな「デニムカッパー仕上げ」もいまだ健在だ。また、ミズノは、まぶしさをカットするために「ソフトホワイトサテン仕上げ」に改良を加えた。

ここにさらに、薄いトップライン、よりコンパクトな形状、角度のついた『ハイドロフローマイクログルーブ』が加われば、勝者が誰かは明らかってもの。

しかし、これまでミズノのウェッジにほとんど無関心だった人にとっても同じく、考えを変えるものは何もない。だが私自身は、ミズノ「T24」ウェッジが2024年の『ウェッジランキング』でトップ5に入る可能性は大いにあると考えている。

しかしながら、たとえ最高の栄誉を手に入れることができたとしても、ボーケイやキャロウェイ、クリーブランドの市場支配を打破するのは至難の業だ。なぜなら、あの「MG3」と同じくらい強力なウェッジがあるにもかかわらず、テーラーメイドのウェッジ市場シェアが14%あたりにとどまっているのだから。

難攻不落。そして、大手ブランドはそれをさらに難しくするために多額の資金を投じている。


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それはさておき、ミズノ「T24」ウェッジは1本180ドルのプレミアム価格になっている。メンズ用の標準シャフトは「Dynamic Gold Tour Issue S400」、レディース用の標準シャフトは「Recoil ESX 460 F1」。純正グリップはブラック/グレーのゴルフプライド「MCC」だ。

3つの仕上げとすべてのロフトが右利き用モデルで選択可能。左利きの場合、「ソフトホワイトサテン仕上げ」で50度〜60度なら、どれでも好みの仕上げやロフトを選択できる。

9月14日より店舗とオンラインで発売(アメリカ)。


<日本での発売日および価格>

「新ソフトホワイトサテン仕上げ」 :Dynamic Gold HT スチールシャフト付の価格は、¥24,200(税込)。

「デニムカッパー仕上げ」:Dynamic Gold HT スチールシャフト付の価格は、¥24,200(税込)。

グリップは、共にゴルフプライドM31 360ラバーグリップ(ミズノオリジナル)(5KJME64100)口径M60/49g、バックライン無。

9月15日発売。

詳細は、ミズノのホームページから。