真夏の最終月にあたるこの時期は“Pシーズン”だ。つまり、テーラーメイドが主力モデルの「Pシリーズ」の新作を発表する時期だということ。決して悪いことではないが…、この時期のリリースはどれも毎年の恒例行事。似たりよったりとなっている。
今回の“Pシーズン”は、ひっそりとシリーズから消えていたモデルに対応したものも含め2モデルがお披露目。ではこの新しいテーラーメイド「P·770」、「P·7CB」アイアンを深掘りする…とその前に、テーラーメイド「Pシリーズ」アイアンの「見た目」をどうこう言うのは、そろそろ止めるべきだと言っておきたい。
なぜなら、かつてテーラーメイドの「上級者(競技志向者)向けアイアン」はド派手と言える時期もあったが、同社ではしっかりと「Pシリーズ」を魅力あるアイアンとして確立しているからだ。つまり、私が、「P·770」と「P·7CB」はテーラーメイドのズバ抜けて素晴らしい見た目を体現していると言ったら、現時点で期待以上を想定するのではないだろうか?新作「P·770」「P·7CB」アイアンを深掘り
「P·770」(ショットの安定性・再現性がウリ)と「P7MC」(優れた操作性がウリ)はそれぞれ異なるタイプのゴルファー向けだが、この2モデルの共通点は、“芝の抜けを改善するために再設計されたソール”だ。ソールは魅力的な特徴とは思えないかもしれないが、大切なことではある。
少なくとも、これはスコティッシュ・オープンと全英オープンでコリン・モリカワが「P·7CB」を使っていた理由の一つでもある。
具体的に言うと、リーディングエッジの半径がタイトになっており、これにより「Pシリーズ」アイアンだと打ち出しを高くでき、なおかつ芝の抜けが良くなっているのだ
では、もう少し詳しく各モデルの特徴をチェックして行こう。
テーラーメイド「P·770」アイアン
「P·790」ほどの人気があるわけではないが、「P·770」は「上級者(競技志向者)向け飛び系アイアン」のアイデアとしては好きだけど、そうした見た目には見えないモデルを求めるゴルファーに人気がある。
簡単に言っているようだが、私としては「上級者向け飛び系」部門の両脇に「P·770」と「P·790」があるように感じている。
今回は改良されたソールに加え、テーラーメイドでは上級者のお眼鏡にかなうためトップラインを薄くしている。
基本的な考え方として、パフォーマンスが改善されている一方で、より上級者向けの見た目を提供しているということ。
とは言え、これは“真の上級者向け飛び系アイアン”であり、デザインに多くのテクノロジーも搭載されている。
「P·790」同様、「P·770」にもテーラーメイド独自の充填剤『SPEEDFOAM AIR』が注入されており、「打音」と「打感」が向上している。また『貫通型スピードポケット』搭載により、ミスヒット時におけるフェース下部のインパクトのパフォーマンスも向上。フェースの裏側には最大41gのタングステンが埋め込まれている。
そもそもタングステンそのものに魅力はないが、このウエイトは、低重心化や周辺重量配分するのに常に役に立つものだ。
また、このテーラーメイドの新しい「P·770」アイアンは、「P·790」に習い番手別ヘッド設計の『FLTD ・CG デザイン』を採用している。これはテーラーメイド曰く、重心配置とフェース設計を番手別に最適化するもので、例えば4番アイアンの内部構造とフェース形状は9番アイアンと違うということを意味する。
つまり、それぞれのアイアンはセッティングの中で特定のニーズを満たすために生み出され最適化されているということだ。
なお「P·770」は、テーラーメイドの「ツアーサテンスクラッチ」仕上げが採用されている。
「P·770」アイアンのスペック
繰り返しになるが、「P·770」は「上級者向け飛び系アイアン」(“上級者”向けのタイプではある)であり、ある程度標準的なロフト設定になっているものの今風な作りになっていると思う。目立ったところだと、33度の7番と45度のPW。
「P·770」は、「P·7CB」とのコンボセットでスムーズな流れにセッティングできるように設計されており(これについては後述)、「P·790」をロングアイアンにする組み合わせもアリだと思う。テーラーメイド「P·7CB」
自分の記憶(そしてGoogle調べ)の限りだと、「P·760」アイアンは2018年以降にアップデートされていない。振り返ってみると、「P·760」はややその存在意義を失っていた可能性がある。
これは個人的意見だが、「上級者向け」部門としてはテクノロジーが詰め込まれ過ぎで、同時に上級者向け部門の領域を超える魅力に欠けていたように思う。
先を行き過ぎていたってことか?その可能性もある。
いずれにしても、新しい「P·7CB」は「P·7MC」と「P·770」の間にある隙間を埋めるモデルだ。
そしてそう、これは4月以降、マキロイがテストしていたプロトタイプでもある。
冒頭で触れたように、シリーズになっているアイアンには美しさが求められるが「P·7CB」はその期待を裏切らないものとなっている。
シャープでクリーンな見た目をしており、キャビティのミーリングを魅力的に感じない人もいるだろうが特段問題はないだろう。
テーラーメイドがこの分野のこれまでのアイアンで実践してきたように、このモデルは、ツアーサテンスクラッチ仕上げと光沢のあるミラーアクセントをブレンドすることで、アドレス時の眩しさを回避しながらも、ちょっとだけポップさもある。
また「P·7CB」は、従来モデルよりもさらなる“真の上級者向けアイアン”として、少し興味深さが湧き立つソリッドなボディ構造が特徴だ。
「P·7MC」と同様、テーラーメイドの加工技術『コンパクト グレイン フォージング』による鍛造で、同社によるとクラス最高の打感を実現するとのこと。
また同社によると、「P·7CB」はテーラーメイドの伝統的なヘッド形状のようで、昔ながらの「RAC」に魅力を感じているなら悪くないだろう。
トップラインは「P·7MC」より少し厚めだがオフセットは小さい。ブレード長はロングアイアンが長く、これにより「寛容性」が増していることが分かる。ソールは「P·770」よりも狭くなっているが、エッジの半径がタイトになっており、芝の抜けは改善されているようだ。
そして「P·7CB」におけるさらなる注目ポイントは、ヘッド内部に隠れた部分、あるいは直接的に言うならソールに埋め込まれた部分だろう。
テーラーメイドでは「P·7CB」のソール部に2つのポケットを採用。これらのポケットにはタングステン(最大11g)とテーラーメイドがメタルミックス複合材と呼ぶものを内蔵されている。この素材は低密度メタルで、重さはスチールのわずか1/7になっている。
そしてそれぞれの部品が内蔵されると、ソールプレートをその部分に鍛造し、このテクノロジーを隠すことでアイアンをクリーンな見た目のままにしている。
これまで話してきた多くのデザインとは異なり、テーラーメイドは高打ち出しと低スピンを実現しようとしているわけではない。「P·7MC」のデザインは、「寛容性」を高め、セッティングを通した安定性を実現するために重心位置を正確に配すことを目的としている。
また「P·770」は『FLTD ・CG デザイン』を採用することでロングアイアンでは打ち出しを高くし、スコアリングアイアンではフラットな弾道にしているが、「P·7CB」では、セット内の各番手間において一貫した弾道を実現するように設計されている。
「P·7CB」のスペック
「P·770」のロフトセッティングに比べ、「P·7CB」はやや伝統的な設定になっており、7番で33度、PWで46度になっている。
スペック・価格・発売時期
「P·770」と「P·7CB」はともに左右モデルがラインナップ(AWは右打ち用のみ)。両モデルとも純正シャフトは「Dynamic MID 115」でグリップはテーラーメイドのゴルフプライド「Z-Grip PLUS2」が装着されている。
※日本のモデルのシャフトは「NSプロ モーダス3 ツアー105(S)」と「ダイナミックゴールド MID 115(S200)」、グリップは「TM ツアーベルベット360 Black/Black(径60/50g)」。
グリップについての補足だが、テーラーメイドでは耐久性が向上するということで新しい合成ゴムにシフトしている。
両モデルとも7本セットの小売価格は1,399.99ドル。先行販売はスタートしており、店頭には9月6日から並ぶ。
※日本のモデルの価格
「P·770」アイアン('24)
◆5本セット(#6 - PW)
・「N.S.PRO MODUS3 TOUR 105(S)」¥159,500(税込)
・「Dynamic Gold MID 115(S200)」¥159,500(税込)
◆単品 (#3, #4, #5)
・「N.S.PRO MODUS3 TOUR 105(S)」¥31,900(税込)
・「Dynamic Gold MID 115(S200)」¥31,900(税込)
「P·7CB」アイアン('24)
◆5本セット (#6 - PW)
・「N.S.PRO MODUS3 TOUR 105(S)」¥148,500(税込)
・「Dynamic Gold MID 115(S200)」¥148,500(税込)
◆単品 (#3, #4, #5)
・「N.S.PRO MODUS3 TOUR 105(S)」¥29,700(税込)
・「Dynamic Gold MID 115(S200)」¥29,700(税込)
それぞれ、8/23より予約開始。
詳細はTaylorMadeGolfホームページまで。
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