これはゴルフの用品だけに限られたことではないが、商品の発売時というのは常に潜在的な購入者に大いなる期待を抱かせる工夫が盛り込まれている。
今回取り上げるゴルフ用品は、タイトリスト「GT」シリーズ(Generational Technology=世代を超えたテクノロジー)のフェアウェイメタルの「GT」シリーズ(Generational Technology=世代を超えたテクノロジー)。どうやらタイトリストは、この「GT」シリーズが「TS」(タイトリストスピード)シリーズからの大いなる前進であると確信しているようだ。タイトリストは、過度な自画自賛やマーケティング用語を軽々しく使うようなメーカーではない。故に、明らかに優れたものを提供すると彼らが約束するとなれば、興味をそそられないわけがない。
詳細については後ほど紹介するが、技術的な話の中心となるのは、基本的に「GT」ドライバーと同じ素材と構造のアップデートについてだ。
先日「GT」ドライバーの記事でお伝えしたように、一見すると「GT」は「TSR」とあまり変わらないように見える。そしてその印象は間違いではない。実のところ、それこそが重要な設計目標だった。言い換えるなら「何も変えずに進化させる」だ。
この場合、「進化」というのは、“スピン量を増やすことなく”、“より遠くに”、“より高く飛ぶ”ということであり、「何も変えず」は、つまりそれ以外のすべて(打音、打感、アドレス時の見え方etc.)を意味する。
フェアウェイウッドはドライバーほど注目されないものだ。さらにゴルファーが使用するにおいて、一番難しいとされるクラブでもある。また買い替え頻度が一番少ないクラブだ。言うなればゴルファーから最も敬遠されているクラブカテゴリー。中には苦手だから使わないというゴルファーも多くいる。
そんなフェアウェイウッドだが、各メーカーは、ドライバーに採用される新素材や新テクノロジーの一部をフェアウェイウッド(そしておそらくハイブリッド)に使うことが多い。しかしながら、フェアウェイウッドにドライバーと明らかに異なる魅力的な開発秘話があるなんてことは稀。だからといってテクノロジー的に劣っているわけではない。それどころか、「GT」ドライバーの特徴的な機能をフェアウェイメタルに取り入れたタイトリストは称賛に値する。さらに予言するならば、2025年のどこかでタイトリストがアップデートされたハイブリッドをリリースするときに同様の仕掛けを用意しているとしても驚きはない。とはいえ、「GT」フェアウェイウッドを使用した経験から言うと、大幅なボール初速の向上や、打ち出し角やスピン量の劇的な変化は必ずしも“改善”に必要不可欠な要素ではないことがわかる。時には、小さな違いこそが最も顕著な違いとなるのだ。
ツアーからの要望
すべての製品設計は、「第一の目的は何か?」という根本的な問いから始まる。我々が「GT」ドライバーの記事で述べているように、タイトリストは一般的に性能カテゴリー全体にリソースを配分する。
そのため同社は、「寛容性」を犠牲にして「ボール初速」を最大化したり、重心をヘッドの奥深く/後方に押し込むことで動的な打ち出し角とスピン量を増やすようなことはしない。「何かを大きく犠牲にすることなく、すべてを少しずつ多く手に入れること」が最も重要なのだ。
世代を超えたテクノロジー
これは、「GT」フェアウェイメタルとドライバーの両方に当てはまる思い切ったワードだがいくつかの重要な違いがある。
簡単に言えば、フェアウェイウッドは投影面積とヘッド体積が小さいことから、そもそもエアロダイナミクス(空力特性)に優れている。一方、フェアウェイメタルはフェース面が小さいため『VFTフェース』によるメリットはそれほど顕著ではない。そしてタイトリスト「GT」フェアウェイメタルでは、すべては「クラウン」から始まる。
シームレス サーモフォーム クラウン
私に言わせれば、複合クラウンは、「GT」と「TS」そして「TS」以前のすべての世代を区別する主要素だ。タイトリストが(スチールの代わりに)複合素材を使用しているということだけでなく、クラウン設計の複雑さにおいてもだ。
複合素材の最もベーシックなものが「グルー(レジン)」で結合されたカーボンファイバーのシートであることはよく知られている。ほとんどの場合、複合素材の用途において複雑なデザインや形状が求められることはない。そこは熱成形の出番だからだ。
その形成において複数の工程を経ることで、見た目の美しさの要件を考慮したうえで非常に厳しい仕様公差を持つ部品が出来上がる。例え車のパネルであっても、シームレス(つなぎ目のない)な複合クラウンでも、「隙間」は好ましくない。この「GT」メタルでは、カーボンファイバーや複数の素材が使用されているかどうか?をアドレスで見分けることは全くもって不可能だ。
そして今一度言うが、それこそがポイントなのだ。
打音といえば…
音響的に言うと、カーボンはとても厄介な素材だ。それでも、強度に剛性、重量、汎用性を兼ね備えているため、ドライバー設計で広く使用されている。
「打音」と「打感」の微妙なバランスを解決するため、タイトリストは複合素材のサウンドプロファイルを変える「PMP(独自のマトリックスポリマー)」を採用している。
ゴルフ業界初のこのテクノロジーの最終的な成果が、チタンやスチールに似た「外観・打音・打感」を持ち合わせながら、カーボン使用による軽量化を可能にしたクラウンというわけだ。
重量特性と性能の橋渡しをするのはCG(重心)の位置であることはお忘れなく。
重心をどこに置くのか?
ウエイトを少し減らすことは問題ない。それは、毎朝15分短縮できる新しい通勤ルートを見つけるようなものだから。
問題は、それをどうするかだ。「GT」フェアウェイメタルの場合、パフォーマンス目標は、今までと同様のスピン量(実際、「GT2」ではスピン量は減っている)で「より高く飛ばす」ことだ。
すべてが同じ場合:
・重心を低く、後方に持って行くことで打ち出し角とスピン量が増加する
・重心をフェースに近づけるとボール初速は上がるが「寛容性」は下がる。
重心を低く保ち(中立軸と同一線上かそれより下)、ヘッドの比較的前方に置くということは、文字で読むぶんには単純に話に思える。しかし、タイトリストは、「PMP」を採用する前は、そのような位置へは到達できなかったと言うだろう。
といっても「TSR2」と比べて「GT2」は重心位置が低く、より前方にある。これにより、スピン量は減り、高さが得られる。「GT3」では、重心位置がわずかに低くなり、飛びを向上させながら「TSR3」同様のスピンプロファイルが維持されているのだ。
鍛造Lカップフェース
もう一つの注目すべき変更点は、タイトリストが「高強度465ステンレス鋼」製の『鍛造Lカップフェース』を採用したことだ。
現時点では、タイトリストがフェアウェイメタルにこの素材を使用した最初の大手メーカーとなっており、素材の弾力性が向上したため、Lカップ部分がより薄くなりボール初速の維持率が向上、フェース下部で打ったショットの打感も良くなった(トップしろってことでかな?)。また、キャンバーソールの度合いが小さくなっていることで(V字型というよりU字型)、オフセンターヒット時にヒールとトゥのより大きな部分が使えるようになり「寛容性」が向上する。
そして改善されたソール形状により、アドレス時にクラブが地面に対してより低く置かれているように見える。これは、タイトなライから無理やり打ってわずかにミスヒットしたときにようやく享受できる付加価値だろうけど。タイトリスト「GT」フェアウェイメタル – 2モデル
「GT2」か「GT3」 – どちらがより良い選択肢となるのだろうか?
明確な答えを得るには適切なフィッティングを受けるのが一番だ。しかし、多くのゴルファーが依然として吊しの製品を購入したり、自分自身でフィッティングをしてしまうのも事実だろう。
いずれにしても、重要なのは「何のためにこのクラブが必要なのか」と自問することだ。どのような答えでも、キャリー/トータル飛距離、弾道、高さ(頂点)、落下角度、使用条件(ティーショット対フェアウェイ/ラフ)を考慮する必要がある。
タイトリスト「GT2」と「GT3」、2つのモデルのうち、「GT2」はよりシャローフェースで、弾道は高め、「寛容性」に優れている。「GT3」は、よりディープフェースで、弾道は低め(それでも先代の「TSR3」よりは高い)、そして『SureFitCGトラックシステム』が搭載されている。
お気づきだろうが、13.5度と21度を選べるのは「GT2」だけなのが少々残念だ。ツアープロやアマチュアの多くはロングアイアンを捨てて7番ウッドを(場合によっては9番ウッドも)選ぶ時代だというのに。それに加えて、ストロングロフトの13.5度の「TSR3」は、「GT」シリーズでは後継となる製品がない。
この削減は、「TSR3」の13.5度が合うゴルファーが少なすぎて、実用的な小売オプションにならないという意味なのかと疑問に思う。あるいは、タイトリストには何か別の策があるのかもしれないが。タイトリスト「GT2」のロフト角は、13.5、15、18、21 度。(アメリカ)
※日本発売モデルのロフト角は、13.5、15、16.5、18、21.0度 ※すべて左用あり。
シャフトと価格
「DENALI RED 50」(5.0/5.5) ¥66,000(税込)
「TENSEI 1K BLUE 55」 (S) ¥66,000(税込)
「Tour AD VF」(6S) ¥88,000(税込)
「Tour AD DI」(6S) ¥88,000(税込)
タイトリスト「GT3」は、15、16.5、18度となっている。
※日本発売モデルのロフト角は、15、16.5°、18 ※すべて左用あり。シャフトと価格
「TENSEI 1K BLUE 55」 (S) ¥66,000(税込)
「Tour AD VF」(6S) ¥88,000(税込)
「Tour AD DI」(6S) ¥88,000(税込)
実体験
フィッティングは重要だ。皆さんも分かっているはずだし私もわかっている。しかし、私はそのことをうんざりするほど、耳にタコができるまで言い続けるつもりだ。
私のバッグにタイトリストのギアが大量に入っている理由の一つは、フィッティングのプロセスと結果に絶対の自信を持っているからだ。
TPI(Titliest Performance Institute)のスタッフは一流で、そのプロセスはゴルファーがコースで実際に体験するものを忠実に反映している。屋内フィッティングで対応せざるを得ないケースも理解できるが、それではカリフォルニア州オーシャンサイドにあるタイトリストの設備に対抗するのは難しい。難しい話はさておき…。
私のバッグの中には、グラファイトデザイン「AD-DI 7X」(B1設定)が装着された13.5度の「GT2」と、グラファイトデザイン「AD-DI 8X」(A1設定)が装着されている18度の「GT3」、グラファイトデザイン「AD-VF 8X」(B1設定)装着の21度の「GT2」が入っている。
そして私のフィッティングにおける最大の課題は、最適な軌道を維持しつつ番手間の適切な距離差を探ることだった。
「GT2」の3番ウッドの場合、目標はドライバーのキャリーと同じトータル飛距離(キャリーに転がりを加えた距離)にすること。私の3番ウッドは「50/50クラブ」、つまり、フェアウェイから使用するのとほぼ同じ頻度でティーショットでも使うからだ。だから15度では高さが出すぎたため、ロフト角を14.25度に下げることを検討した。結局、13.5度のヘッドを「B1ポジション設定(0.75度フラット)」にすることで首尾よく収まった。
そこから7番ウッドの位置づけを定めることができた。ロフト角が減ったこと(そして私がドローヒッターあるという事実)から、よりフラットなB1設定はそのままに、グラファイトデザインの「AD-DI」から全体的にやや硬めの「AD-VF」に変更した。
そして3番ウッドと7番ウッドを基準にして、パー5の2打目でグリーンに止められるほど高く打てて、しかも汎用性も十分にある4番/5番ウッドを見つけたいと思った。たとえば、長いパー4のラフから私がよく打つのは、5番ウッドのフェースを開いて、低く打ち出してグリーンに近づけるランニングショットだ。
ライが厄介なグリーン周りから攻めるとき、5番ウッドは確実な選択肢となる。プレー仲間からショートゲームのレッスンを求められることはないかもしれないが、ラウンドでは体裁を気にする必要はない。そのことに私は永遠に感謝している(多くの理由から)。
そして私の求める様々な条件を考慮すると、標準A1設定の18度の「GT3」が最良の答えであることが判明した。
私見
では、タイトリスト「GT」フェアウェイウッドは買いか?多分そうだろう。
現在使っているフェアウェイウッドがまだ比較的新しい場合はどうだろうか。まあ、買ってもいいかもしれない。なぜか説明しよう。
性能は、それがあなたにとって重要である場合にのみ大事にすべきだ。地元の飲食店のクーポンを考えてみよう。その場所で食事をすれば、お金を節約できる。食べたくないのにわざわざ行くのだとしたら、ほんの少し節約するために多くのお金を費やすことになり意味がない。
重要なのは、タイトリスト「GT」フェアウェイウッドでは初速が向上し(特にフェース下部で打ったショット)、スピン量のばらつきが少なくなる(弾道とスピン量の「一貫性」が増す)ことだ。ゴルファーの中には高弾道、低スピンのフェアウェイウッドがしっくりくる者もいれば、それでも意味がない者もいるだろう。
スペック・価格・発売時期
※ここより下記はアメリカでのスペックとなる為、日本発売モデルの詳細(スペック・価格)は、タイトリストホームページよりご確認いただきたい。
タイトリスト「GT」フェアウェイメタル用の純正シャフトは、PX「Denali Red」(高弾道)、三菱ケミカル「Tensei 1K Blue」(中弾道)、PX「HZRDUS Black」(低・中弾道)、三菱ケミカル「Tensei 1K Black」(低弾道)が装着されている。
また今年はグラファイトデザインのプレミアムラインナップには「Tour AD VF」、「Tour AD DI」、「Tour AD UB」が追加された。
カタログ掲載のその他のシャフトはカスタムで装着可能。
タイトリスト「GT」フェアウェイメタルの小売価格は、純正シャフトなら399ドル、プレミアムオプションの場合は599ドルとなっている。
先行販売とフィッティングは現在受付中。店頭販売は8月23日からだ。
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