日本のシャフトメーカー、日本シャフトが「N.S.PRO MODUS(NSプロモーダス)」シリーズのシャフトを発売したのは10年前。そして今「MODUS³Tour 115(モーダス3ツアー115)」が加わり、その履歴書はより完全なものになりつつある。
「MODUS(モーダス)」の注目度はかなりのものだが、他の主要シャフトメーカーからの注目を集めるほどではない。
1999年、日本シャフトは世界で初めて100g以下のスチールアイアンシャフト「N.S. PRO 950 GH」を開発し、軽量アイアンシャフトの新基準を打ち立てた。
23年前の製品が未だに現役なのかって?もちろんだ。この週末、LPGAツアー(ヒルトン・グランド・バケーション・トーナメント・オブ・チャンピオンズ)で6勝目を挙げたダニエル・カンに聞いてみればいい。
そう、お察しの通り、使用アイアンシャフトは「N.S. PRO 950 GH」だ。ピン契約選手でPGAのチャンピオンズツアー、「三菱エレクトリックチャンピオンシップ at フアラライ」を3度制しているミゲル・アンヘル・ヒメネスも、アイアンに日本シャフトの「MODUS 105」を使用している。
このちょっとした余談の狙いは、小さいながらも重要な点を描き出すことにある。日本シャフトは大量生産や市場占有率に汲々とする企業ではない。品質の高いシャフトを脈々と作り出してきた歴史と、世界中の主要プロツアーで毎週使用される製品を有している。
多くの有名選手が日本シャフトを使っているが、なにより製品の品質そのもので勝負するというのが企業理念だ。日本シャフトにおいては「口ばかりで行動が伴わない」ということはない。「不言実行」が常なのだ。
「MODUS」の系譜
日本シャフトによると、「N.S.PRO MODUS TOUR」シャフトは、トッププロや競技志向のアマチュアゴルファーからの厳しい要求に応えるために設計されたものだという。「MODUS Tour 115」はMODUSシャフトファミリー5番目の(そしておそらく最後の)モデルとなる。
多くのシャフトブランドでは、シャフトの「曲げ剛性プロファイル特性(EIチャート)」は、フレックス(硬さ)によって重量に変化は見られるものの、シリーズ全体において比較的一貫している。
例えば、「Project X 6.0」(120グラム)と「Project 5.5(プロジェクト5.5)」(115グラム)は、同じ構造を共有しているが、重量/フレックスは異なる。
日本シャフトにおいては、名前に使われている数字はそれほど単純明快なものではない。
「MODUS Tour 120」と「MODUS Tour 130」では、「曲げ剛性プロファイル特性」に類似性は見られない。また、「Tour 130 X」の重量が129gであるのに対し、「120 TX」の重量は126g。現在、「130 TX」というフレックスは存在しない。
「MODUS Tour 130」は、チップ部(先端部)が柔らかく、ミッド部(中間部)とバット部(グリップエンド側の末端)がより剛性が高くなっている。 逆に、「MODUS Tour 120」は先端が硬く、中間部とグリップエンド側がよりしなる。
その結果、「Tour 130」は少ないスピン量で高く打ち出され、「Tour 120」は中程度のスピン量で低く打ち出される傾向となる。
理解できたろうか?
しかしながら、「MODUS Tour 105」、「Tour 115」および「Tour 125」は、中程度の打ち出し角およびスピン量という基本プロファイルを共有している。2010年、日本シャフトは「Tour 105」を「Proto ST」としてツアーに投入した。それはすぐさまPGAツアーで「Tour 120」に次いで2番目に人気のある日本シャフト製品となった。
4年後、日本シャフトは「Tour 125」をリリース。Sフレックスで127.5g、「Tour 120」よりも少々高い打ち出し角とスピン量を要する強いプレーヤーに重めの選択肢を提供した。
日本シャフト「MODUS TOUR 115」のターゲット
「Tour 105」と「Tour 125」は約20gの重量差がありながら、類似するプロファイルを有する2本のシャフトだ。それなのに何故7年もかかったのだろうか?
まあ、隙間があるからといって、必ずしもそれを埋める必要はない。たまたまそれが都合のいい方法だったのかもしれない。ただ、日本シャフトは製品リリースに対してより慎重なアプローチを取る傾向がある。
つまり、開発コストとリソースを正当化するためには、製品が市場のどこに位置し、誰に利益をもたらすかを明確に把握する必要があるということだ。
軽いシャフトの代償は「安定性」であることが多い。シャフトを硬く、重くするのは簡単なことだ。しかし、軽いシャフトはプレーヤーにより多くの選択肢を与え、収穫逓減の法則はあるものの、多くのゴルファーはより軽いクラブならより速く振ることができる。
あらゆるクラブや道具に言えることだが、自分に合ったものを見つけるには、トレードオフについても認識する必要がある。軽いシャフトはヘッドスピードを上げてくれるかもしれないが、その代償として何を払うことになるのか?精度か?最適なスピン量/軌道か?
最終的には、「MODUS Tour 115は誰のためのものなのか?」という問いが残る。
最も明白なターゲットは、現在「Tour 125」や「Tour 105」を使用しているが、もう少し軽いもの(あるいは重いもの)を求めているゴルファーだ。これを「明白であるが重要」タブの下にファイルすることにしよう。
その他の可能性は、不可知論的フィッティングか、純正/追加料金なしのシャフトオプションとして「MODUS」を扱っているメーカーの試打会で「MODUS Tour 115」に遭遇する場合。思い浮かぶのはミズノとスリクソンだ。
最後に
ゴルフ用品の壮大な計画において、シャフトは消費者が反射的に「即買いモード」になる商品ではない。だとしても、日本シャフトは本来もっと注目されてしかるべき存在だ。
大手用具メーカー各社の関係者の多くが、日本シャフトのしなやかで安定したシャフト構造はアマチュアゴルファーのみならず、多くのゴルファーにアピールする差別化要因であると認めている。別の言い方をすれば、「フィッティングでは日本シャフトの圧勝」と、ある関係者は言う。
「MODUS Tour 115」が「N.S.PRO MODUS」シリーズのアイアンシャフト第5弾であることは前述した。現時点で日本シャフトは追加のMODUSシャフトについては明言していないが、もし機会があれば、「Tour 120」と「Tour 130」の組み合わせに興味をそそられる。
具体的には「Tour 120」の先端プロファイルと「Tour 130」のバット/ミッド構造にだ。「Tour 125」はすでに存在しているので、次は「Tour 140」が来る可能性もある。いいんじゃない?
価格など
日本シャフト「MODUS Tour 115」は、3月下旬に発売予定で数量限定。(アメリカ)※日本では既に発売されている。
価格は「MODUS Tour 125」「Tour 105」同様、1本37ドルになる見込み。
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