数週間前、One Word Survey(キーワードアンケート)という記事を投稿した。連想ゲームのようなもので、こちらが示したキーワードで連想するゴルフブランドを読者に選んでもらうものだった。選択肢にないブランドを思いつくこともあるため、「その他のブランド(None of the Above)」という項目も設けた。

一つのキーワードにつき一つのブランドを選ぶので、曖昧さは全くない。これがこのアンケートを面白いところだ(少なくとも私はそう思う)。もちろん、この方法では読者が2番目に思いつくブランドが分からないので、ブランドが選ばれた回数(頻度)のみに着目した。

率直に言えば、この結果が購入に値するゴルフ用品を明らかにしてくれるかと問われれば、それは分からない。肝心なのは、私達が日々話題にするブランドをゴルファー達がどのように認識しているのかを把握することだ。その認識が現実を表すものかどうかは重要ではない。

アリジャ・コビー氏の言葉を引用すると、“ブランドとは単にブランド自身がこうだと言うものではなく、消費者がこうだと思うものがブランドなのだ。”

私はいつもMyGolfSpyの記事を書くとき、自分の解釈と併せて一般的な考察も含めるようにしている。読者の皆さんにも、ぜひ自身の考えを持って読み進めてもらいたい。

下の表を見てもらう前に、データは5,300件以上のアンケートに基づいていることを伝えておこう。

 

 

ポジティブキーワード

最初の9つのデータは、ポジティブキーワードについてのアンケート結果だ。おそらく多くの人が、メジャーブランドへの票が多いと予想するだろう。そのためブランドをグループ分けし、大規模・小規模のブランド同士を比較するといいかもしれない。

 

「性能(PERFORMANCE)」

「性能」については予想通り、全体の20%近くの人がタイトリストを連想した。やはり、「タイトリスト=性能」いうのは、この会社のキャッチフレーズの一つなのだ。

近年のゴルフ界のリーダーであるキャロウェイを選んだのは、全体の17%ちょっとだった。

マ―ケットシェアと比べて、ミズノ(17.43%)はいつも私たちの調査で良い結果を出すが、これは読者の中でもミズノブランドの人気が高いことを物語っている。

3.78%であったPXGも注目に値する。ここでは3.78%という数字が重要なわけではなく、3年目の若いブランドPXGと競合の老舗ブランドをどう比較するかだ。

他のマイナーブランドでは、スリクソン/クリーブランドが、コブラよりわずかに高い結果となった。

 

 

「革新(INNOVATION)」

全てのブランドが「革新的である」と思われることを望んでいるわけではないが、今日のマーケットリーダーであるキャロウェイが選ばれたのは当然だろう。

テーラーメイドやピン、PXGもかなり票を集めた。

10%弱だったコブラも、たくさんの小規模ブランドを率いていることを含めて注目すべきだ。

他のポジティブワードで票を集めたミズノとタイトリストが、「革新」ではあまり連想されなかったことは意外だった。例えば「最高傑作」とか「永遠」などのキーワードがアンケートにあったとしたら、この2つのブランドはトップに近かったに違いない。

 

 

「技術(ENGINEERING)」

 

ピンは技術を誇る企業として確固たる地位を築いてきたため、この結果は完全に予想通りだった(彼らの戦略だと思ってはいるが)。回答した30%近くの人がピンを選んだ。

同時に16%近くの票がキャロウェイに入ったことは、マーケティングの努力と同様に本気で研究開発をしていると多くの人が信じていることを示している。

そして、一番驚いたのは13%以上の票を得たPXGだ。テーラーメイドやミズノよりも多く、タイトリストの2倍近いの数字だ。

小規模ブランドではコブラ(市場では中規模サイズと言えるが)がトップで、ブリヂストンとスリクソンがそれに続いた。

 

 

「業界のリーダー(LEADER)」

マーケットでのポジションを考えれば驚くほどのことではないが、30%近くの人が「業界のリーダー」としてキャロウェイを選んだ。

タイトリストも僅差だったので、ボール市場でのリーダーとして認められているのだろう。

一般的に消費者の反応は、マーケットの現実とかけ離れることはない。

小~中規模サイズのブランドでは、ミズノが最も多く票を集めた。

 

「誠実さ(INTEGRITY)」

「誠実さ」とは、強いモラルに裏付けられた正直さの代名詞だ。この意味でピンが票を集めると予想していたが、その通りになった。

また今回もタイトリストが2位で、ミズノも読者から強い関心を集めている。

反対にマーケットリーダーであるキャロウェイとテーラーメイドは、他のポジティブワードほどは反応が得られなかった。

小規模ブランドのブリジストンやウィルソン、スリクソン/クリーブランドが、テーラーメイドを超えたことは、注目に値する。

 

 

「品質(QUALITY)」

アンケート結果は読者それぞれの解釈と、今ある認識によるところが大きい。

ミズノは鍛造の質の高さで知られている。タイトリストはボールの品質におけるリーダーとして位置づけられているし(アイアンとユーティリティーにおけるツアーリーダーとしても)、ピンは高品質をイメージするゴルファーが多い。

これらのブランドには敵わなかったが、キャロウェイも他のメジャーブランドを押さえてかなりの票を得たし、PXGも健闘したと言える。

またスリクソン/クリーブランドは、小規模ブランドの中では最もパーセンテージが高かった。

 

 

「信頼に値する(TRUSTWORTHY)」

「誠実さ」と重なる部分があるため、「信頼に値する」でも同じになると予想していた。

ピンとタイトリストはやはり人気が高く、ミズノも同様だった。そしてキャロウェイは、残りのブランドの中ではトップだった。

PXGは最も少なかったが、読者が「信頼に値する」というキーワードを聞いて最初に頭に浮かぶブランドではないということとは別に、このようなポジティブキーワード同士でも、ブランドを極端に特徴づけてしまうことを示している。

小規模ブランドでは、スリクソン/クリーブランドが再び票を集めたが、大体どれも似たような結果となった。

 

 

「近代的(MODERN)」

「近代的」でPXGがトップになったのは、おそらく特徴的なルックスによるものだろう。

キャロウェイは2番目で、おそらく独特なアプローチの結果だろう(彼ら自身も「近代的」なゴルフブランドとしてNo.1になることを望んでいる)。

ここ数年間おとなしかったコブラが全体の17%を占めており、「近代的」はこのアンケートでコブラが最も高いスコアをつけたキーワードになった。

その他には、スリクソン/クリーブランドが、他の小規模ブランドを引っ張る形となった。

 

 

「謙虚さ(HUMBLE)」

テーラーメイドが業界トップに君臨していたとき、彼らは常に謙虚でいることの必要性を説いていた。同じことをキャロウェイのスタッフからもよく聞く。

このアンケート結果が何かを意味するとすれば、どちらも「謙虚さ」をうまく伝え切れていなかった、ということになる。

一部の人は「謙虚さ」を「静かさ」の同義語としてみることがあるだろう。というのは、業界で最も騒がしいマーケッターであるキャロウェイ、タイトリスト、ピンが、最下位付近になったからだ。

「謙虚さ」でイメージしたブランドの中で最高だったのがミズノ、そしてピンもまた多くの票を獲得した。

注目すべきはウィルソン、スリクソン、ブリジストンの強さで、ポジティブキーワードの中でそれぞれ最も高いパーセンテージを獲得している。

 

ネガティブキーワード

次の9つのグラフは、ネガティブキーワードだけを集めたものだ。

メジャーブランドが結果の「いいとこ取り」をすると思うかもしれないが、これはネガティブキーワードを含むアンケートなので、そうはならない。

 

「誇大広告(HYPE)」

ゴルフ業界で「誇大広告」はよく「性能」と対照的なものとして捉えられているためか、グラフは3つの大きな"山"を示した。

35%近くがテーラーメイドを連想し、PXGは僅差で30%だった。キャロウェイを含めれば85%のシェアだ。

それぞれのブランドが掲げるストーリーに関するコメントが多かったことから、納得のいく結果でもある。

ピンやタイトリストは、比較的票が少なかった。

 

 

「興味を引くための仕掛け(GIMMICK )」

20%の読者が今回のアンケート対象ブランドを連想しなかったのは、嬉しい話だ。多かれ少なかれ、ブランドの宣伝通りに商品が機能しているということが言える。

PXGが最も高いパーセンテージを占めた一方で、テーラーメイドは約20%だった。

タイトリストやピン、ミズノはほとんど選ばれなかった。

キャロウェイのスコアは、妥当な線だろう。

しかし、ツアーエッジとウィルソン、コブラの割合が高かったのは意外だった。

 

 

「マーケティング(MARKETING)」

基本的に「マーケティング」というキーワードにはネガティブな要素はない。しかし、ゴルフ業界では「研究開発」の対照として捉えられることがある。

予算的に、大企業は大々的にマーケティング行う余裕があることは言うまでもない。よって、キャロウェイとタイトリストが突出した結果となった。

驚くことに、ボール市場で目立った存在であるにも関わらず、タイトリストは10%以下だった。

小規模ブランドは全体にスコアが低い。マーケティングに十分な予算を割けないことは、ほとんどの小規模ブランドに共通する課題なので、仕方ないだろう。

 

 

「模倣(FOLLOWER)」

どのブランドも「模倣」しているとは思われたくないはずだ。なぜなら、イノベーションや独創的思考に欠けると見られるからだ。

この意味で、このキーワードは難問だったと思う。他のどのグラフよりフラットになったが、「その他のブランド(None of the Above)」以外ではコブラの割合が比較的高かった。

テーラーメイドとウィルソンも10%を超えている。

このキーワードでは、ブランド規模に関係なく票が均等に割れている点が面白い。

 

 

「欺瞞(DECEPTIVE)」

嬉しいことに、否定的要素の強いこのキーワードに対する回答のほとんどが、最終的に「その他のブランド」に収まった。

その点で30%近くを占めてしまったテーラーメイドにとっては、悪い結果になった。これは一昔前にテーラーメイドが、果たすことができない飛距離を約束してしまったことに関係しているのだろう。

PXGとキャロウェイに対する票もかなりあった。

ピンとタイトリストについては、彼らの市場での立場の割には票が少なかった。

 

「二流(INFERIOR)」

現在のゴルフ用品市場ではほとんどの製品が横並びであり、前述の通り、いかに解釈されるかが現実よりも重要になる。

「二流」は言うまでもなく、どのブランドにとっても連想されたくないキーワードだが、ツアーエッジとウィルソンがかなり票を集めてしまった。

ただし、その他のブランド(None of the Above)が25%以上を占めたことにより、他のブランドは5%以下に収まっている。

 

 

「不誠実(DISHONEST)」

「欺瞞」よりもう一段階悪いイメージの「不誠実」は、誤解と嘘の境界線があるとしたら、嘘の側にある言葉だ。

読者の大多数がその他のブランド(None of the Above)を選んだことは、業界全体がまだ境界線の手前で留まっている(少なくともそちら側に行こうとしている)ことを表している。

ブランドの中では、テーラーメイドが大きな割合を占めた。

PXGは12%近くで、それ以外に5%以上だったのはキャロウェイだけだった。

「誠実さ」の結果を見ればわかるが、ピンとミズノをこの「不誠実」というキーワードで連想した人はほとんどいない。

 

 

「非独創的(UNINSPIRED)」

「非独創的」も「模倣」と同じで、オリジナリティーに欠けることを意味する。さらに言うと、アピールするものが何もないということだ。

タイトリストを除いた業界のメジャーブランド(この場合PXGも含めるべきだろう)は大体どれも同じような結果となり、小規模ブランドもかなりの票を集めている。

タイトリストは全ての製品でいつも高得点を狙ってくるが、私はそのあら探しをする悪い癖がある。

ウィルソンやツアーエッジ、スリクソン/クリーブランド、ブリヂストンは全キーワードの中でそれぞれハイスコアをつけた。彼らの商品からは、他のメジャーブランドが提供するような興奮が感じられないからだろう。

 

 

「傲慢(ARROGANT)」

その価格構造や大胆な発言(「我々のようにクラブを造っているブランドは他にない。以上。」)、さらに創設者でありオーナーのボブ・パーソンズを理解している人がどのくらいいるかを考えれば、この結果は決して驚くようなものではない。

上位3ブランドを合わせると全体の82%、そこにキャロウェイを足せば90%を超える。ここまで票が偏るキーワードは他にはない。

 

 

ポジティブワード VS ネガティブワード

下のグラフでは、ポジティブキーワード(ゴールド)全体とネガティブキーワード(黒)全体に対して、各ブランドが獲得した票の割合を示している。

自由に解釈してもらって構わないが、実はこの結果から明確に言えることがたくさんある。

ピンとミズノは、ネガティブワードに対してポジティブワードでの得票が圧倒的に多かった。タイトリストに対する一般的な見方もまた、かなりポジティブであると言える。この3ブランドは、明らかに読者から高く評価されているということだ。

他のメジャーブランドの中では、テーラーメイドとPXGがポジティブに対してネガティブの得票が多かった。両ブランド共、ネガティブキーワードで2回以上トップに選ばれている。単にこの2ブランドをネガティブに捉えることもできるが、実はポジティブキーワードでの得票も少なくない。これは二極化(好きと嫌いがはっきり分かれる)という自然の摂理であるとも言えるし、悪い面ばかりとは限らない。

割合としてはそこまで高くはなかったが、ウィルソンとツアーエッジの結果はネガティブな印象が残った。どちらにとっても嬉しい話ではないだろうが、この2ブランドへの票自体が比較的少なかったことを考えると、この結果はネガティブに傾くきっかけとなった特定のキーワードに起因しているのだろう。

バランスという意味では、キャロウェイがアンケート全体で最も高い割合を獲得している。私達としては、業界のリーダーとしてもっと良い結果を期待したが、彼らのようなトップブランドには常に敵意がつきまとうものなので、ある意味で納得できる結果だと思う。ネガティブな意見が少なく、好意的に見られているということは、確実に競合がすぐ近くまで来ているということも示しているのだ。

読者の声も聞いてみたいが、得票数が少なく、好意的な意見はあるものの肯定・否定のバランスが取れていたコブラやブリヂストン、スリクソン/クリーブランドについては、読者はあまり関心がないことを示していると私は思う。ゴルフブランドの中で彼らは下の方ではないが、決してトップでもない。長期的に見て、強い競合のいる現在の不況マーケットを考えると、これらブランドにとっては不利なのではないかと思う。消費者の関心を集められないなら、なおのことだ。

 

最後に、最も興味深かったのは、ネガティブキーワードに対して、多くの読者が「その他のブランド(None of the Above)」を選んだことだ。

ほとんどのゴルファーには、良いイメージのブランドは常にあるが、悪い印象のブランドがあるとは限らないようだ。これはゴルファーが、最高にイライラするスポーツで使う道具を造ってくれるブランドを好意的に見ていることを示している、と私は解釈している。

 

今回の結果から、あなたは何を感じるだろうか?