すべてはゴルファーのために
チッピング(転がすアプローチ・ショット)に特化したクラブは目新しくもない。しかし、ピンはこのニッチな市場にもチャンスがあると見て「ChipR(チッパー)」を発売した。
となれば、チェックしないわけにはいかない。今回はピンの「ChipR(チッパー)」のパフォーマンスを細かく検証するので乞うご期待。果たして、皆さんのキャディバッグに入れる価値はあるかな?
ピン「ChipR(チッパー)」テスト方法
データ至上主義の我々にとって欠かすことができない「製品テスト」は、バージニア州ヨークタウンにあるテストセンター内で行われている。しかし今回は異色なクラブということで、同州ウィリアムズバーグにあるゴールデン・ホーシューGCのショートゲーム施設を使わせてもらった。
我々が『Most Wantedテスト(Mygolfspy独自の厳格なテスト)』や『ラボ(実験・検証)』を行う際は、バラつきを最小限にするために、使用ボールは全てタイトリスト「Pro V1」に統一している。
ピンの「ChipR(チッパー)」はチッピングを簡単にするためにあり、それが唯一の目的でもある。というわけで、今回はフリンジ(カラー)とラフというグリーン周りの2箇所からテストすることにした。
今回のテストでは、テスターにそれぞれのシチュエーションから自身の好きなクラブを選択してもらった。まずはその選んだクラブで10回、次に「ChipR」で同じく10回ショット。それぞれのカップまでの距離を記録し、25フィート(約7.6m)離れたショットは除外した。
テスターのハンディキャップは1.0から15.0。
では、どんな結果になったのか見ていこう。
ピン「ChipR(チッパー)」 - フリンジ(カラー)
ピン「ChipR」は「チップ&ラン」のチッピングを前提としている。そのため、グリーンから少し外れたフリンジ(カラー)からのショットは、「ChipR」をテストするのに理想的だといえる。
とはいえ、全てのゴルファーがこうした状況でピュアな「チップ&ラン」のチップショットをしているわけではない。今回のテスターの中にも、ロフト角がついたウェッジ(SWやLW)を好むゴルファーもいた。今回フリンジ(カラー)からでは、テスターの55%が「ChipR」を使った方が良いという結果となった。
全体的に見ると「ChipR」と「マイクラブ」のホールまでの距離差は…平均1インチ。これで「ChipR」が優れているのか?と言えば考えものなので、皆さんでも是非チェックして欲しい。
※「チップ&ラン」:比較的ロフトのないクラブで(グリーン手前にボールを落として)グリーンにボールを転がし上げるように打つアプローチ・ショット。
ピン「ChipR(チッパー)」 - ラフ
テストしたのはピンまで25ヤードのラフからのアプローチ。ピンがグリーンの真ん中にあるので、「ChipR」を使って十分に「チップ&ラン」のピッチショットが可能だ。ここではテスターの多くがロフトのついたクラブを選択。ほとんどがキャリーでグリーンまで運び、そこから転がしていた。
ラフからだと、「ChipR」にメリットがあったテスターの割合は少ないという結果に。とはいえ、「ChipR」にメリットを感じたテスターは、「マイクラブ」よりもカップに寄せており、ラフからでも抜けが良く簡単にチップできることに驚いていた。
ピン「ChipR(チッパー)」- バンカー越えのショット
ピン「ChipR」にとって、バンカー越えは不向きだと承知した上で、試しに打ってみた。バンカー越えでは、全テスターがロフトのついたクラブを選択。そのうちほとんどのショットは成功したが、ロフトの寝たクラブだと、ダフったりトップしたりする確率も高くなった。
「ChipR」を使ったことで分かったのは、インパクトがより安定してバンカーをキャリーで越えるには十分な高さを出せるということ。
とは言っても、低く突き刺すような弾道になってしまうため、グリーンで止められる十分な高さは出せなかった。「ChipR」でバンカーを越せるかと言われれば、答えはイエスだが、有効かと聞かれると、グリーンが大きければという感じだ。
ピン「ChipR(チッパー)」- テスターの感想
「ChipR」は独特で、状況に応じて使用するため、テスターたちからこのクラブの感想を聞くことはとっても大切だと思う。
『Most Wanted』と同じように、主観的なフィードバック(感想・評価)はランキングや結果に影響しないが、ピン「ChipR」に対するゴルファーの感想はお伝えすることができるし、これで全てのゴルファーに「ChipR」がどんなクラブなのかということをお届けすることは可能だ。
下記に一部テスターのコメントをご紹介しよう。
モンティ(HC1.2)「キャディバッグに入っていると良いクラブです。状況によりますが、「チップ&ラン」で威力を発揮しますね。再現性あるパッティングのような動きをするのが簡単です」。
フロイド(HC13.5)「いいね。ウエイトが重めでチッピング時に自信と安定感を感じるよ。自分なら使うと思うよ」。
M.C. (HC15.0)「非常にメリットがあるけど、慣れるのには時間がかかりそうですね。ちょっと自分には重すぎて好みじゃないので、買うことはないと思います」。
ケーシー(HC6.9)「素晴らしいクラブで、初心者やジュニア、グリーン周りで自信が持てるクラブを探している人にはかなりお勧めだと思います」
ジョン(HC10.1)「フィーリングが良く、かなり重たいがそれもまた魅力だろう。打ちやすいので買おうか考えてみたいと思う」。
トム(HC8.1)「ペラっとした感じで見た目がシンプルですね。スコアラインがもっとはっきり見えれば良いように思います。すぐに慣れて、全体的に気に入りましたよ」
クリス(HC5.0)「ピッチ&ランにピッタリ。上げるショットは難しいので、ワンポイントで使う感じ。ダフリを最小限にしてくれるし簡単だね」
パフォーマンスのまとめ
今回のテストでは、ピン「ChipR」がどの程度使えるかをチェックした。
まだ多くのゴルファーが、グリーン周りの異なる状況次第でギャップウェッジ、サンドウェッジ、あるいはロブウェッジを使っているが、これは特にウェッジがロフトとバウンス/グラインドの組み合わせにより、多様性があることからも当然だろう。
そしてこれも当然のことながら、ゴルファーのスイングも人それぞれ異なる。そのため、ウェッジのテクノロジーによりあらゆる状況にも対応できるウェッジが作られている状態なのだ。
今回のピン「ChipR」は、使いやすい特化型のクラブだ。使うことでパフォーマンスが向上する可能性もある。
実際このテストで、ハンディキャップが少ないゴルファーが、よりカップに近づけていることも目にしたし、ハンディキャップが多いゴルファーが簡単なチッピングでトップしたり、チャックリしないような設計になっている。
この「ChipR」はスキルに関係なく検討に値するクラブといえる。もしあなたが、チッピングでイップスに陥っていたり、自信がなかったり、フラットなコースでプレーしているなら、キャディバッグに入れておいても良いのかも知れない。
※「チャックリ」:スイング時、ボールではなく地面を叩いてしまうこと。
※「イップス」:過度の緊張から震えや硬直を起こし、思うようなプレーができなくなること。
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