・ピンが「i525」を発売
・「i525」は、同社の主力“上級者(競技志向)向け飛び系”「i500」の後継モデル
・新アイアンは、さらなる初速と一貫性が向上
・メーカー希望小売価格は1本205ドルで発売は3月24日(アメリカ)
※日本では既に発売されている
ピン「i525」アイアン
ピンの「i525」アイアンは、デザイン(ついでに言うとマーケティングも)する上での典型的で真面目な手法を象徴している。
ピンにおいては、大々的な宣伝というものは、あまり見られない。時に、ピンは『タービュレーター』や「ハイドロパール仕上げ」などを提案してくるが、大抵は、“最高傑作”を見せないようにひた隠しにしている。
これは、新作発表のたびバカ当たりさせることに依存しない“マネーボール”のような戦術の結果だ。ピンのプロダクトデザイン・ディレクターのライアン・ストッケ氏によれば「我々は、ひとつのデザイン特性で、最高のクラブを生み出せるとは思っていない」ということだ。
そう考えると、「i500」から「i525」アイアンに至る性能向上は、一気に飛躍したということではなく、デザインのほぼ全ての要素に関連する小さなステップの連続で実現したということを知っても、驚くことでもないだろう。
さらなる初速
ピンの「i525」が“上級者(競技志向)向け飛び系”部門にしっかり属していることを考えると、デザインの目標の一つが「ボール初速の向上」になっているのは理解できる。
これは、業界がロフト調整で飛距離アップさせることに何の躊躇いもないことから、基本的に十分簡単に達成できること。よって、ピンがストロングロフトにせず、あるいは他の部分のパフォーマンスを犠牲にすることなく、前作よりも飛ぶアイアンを完成させたということが、この議論をより特別なものにしている。
このさらなる初速は、アイアンの構造を変えることで実現している。「i525」の場合、『鍛造マレージング・スチールフェース』が、『17-4ステンレス・スチールボディ』にロボットでプラズマ溶接されている。
この基本構造は「上級者(競技志向)向け飛び系部門」や、もっと言うと「初・中級者向け(スコア改善型)部門」でも珍しいことではない。
よりフェースをたわますことができる、メタルウッド的な手法ということだ。
今回のアイアンには初速を向上させる要素が2つある。まずは、フェースの肉厚を部分的に変化させる(周辺部に向かって徐々に薄くする)『バリアブル・フェース・シックネス』。これでよりフェースがたわみやすくなる。
そしてアンダーカット・ソールを薄くし、ヘッドの奥まで拡大したことで、インパクト時の(フェース下部ヒット時の)ストレスをよりボディで吸収することが可能になった。これにより、さらなるたわみ(さらなる初速)を実現するだけでなく、高い一貫性をもたらすより制御された手法で実現される。
フィーリングを改良
ピン「i525」アイアンのフィーリングの向上は、ピンの『EVAポリマー(熱溶解)素材』をより精密に用いた結果だ。以前もお伝えした通り、ピンは中空構造アイアンにとって最も優れた充填剤は“空気”であるとしているメーカーの一つであり、故に、ここでは「P-790」やPXGのような中空全部に充填剤を詰めたアイアンの話をしているわけではない。
非科学的だが、フェースの裏側にちょっといいものがついているということだ。フェースのたわみを損なうことなく音を良くするのに十分な量で。
ピンは、各ヘッドに4gの熱溶解素材を正確に配置することで、ゴルファーの不快感に相関する高音周波数を抑制することを可能にした。
一般的な打感が改良されたことに加え、ピンによると、セットを通じてフィーリングがより均一になったとのこと。ストッケ氏も、これをクリーンでピュアなインパクト体験と表現している。
改良された形状
上級者向け飛び系部門において、「i500」は私の好みからすると大きすぎた。ピンの初・中級者向け(スコア改善型)アイアンのように、ヒールからトゥまでが長すぎると感じていたのだ。
「i525」アイアンは、「i210」をモデルにしたデザインで、上級者向けブレードアイアンの見た目に持っていくことをゴールとしている。
簡単に言うと、「i525」は「i500」ほどボテっとしていないということ。トップラインは薄く、オフセットも軽減されており、ブレードの長さも短くなっている。
ピンでは、このデザインをよりバランスが取れたものであるとしており、これは合理的評価と言えるが、一番参考になる具体例は、ロングアイアンが実質的に「i500」と「i210」の間に位置する設定の一方で、ショートアイアンとスコアリングクラブ(ウェッジ)の形状は、ほぼ「i210」と同じになっているということだ。
打ち出し条件の改良
「i525」の場合、“より良い打ち出し条件”とは、“より均一化された打ち出し条件”と同義だ。“より良い”という考えは、何よりも適切なフィッティングに大きな影響を与えるが、ピンは、一貫性をアップさせる一連のテクノロジーにより、ゴルファーがあらゆる条件下においても不安定性を軽減できるという。
よって、ピンは今回も「ハイドロパール 2.0仕上げ」を採用。ピン独自のこの仕上げは、濡れた状況でも水をはじき、ウェットとドライどちらの状況であっても打ち出し角とスピン量におけるの差を軽減するという。
「i525」で新たに採用されたのが、ピンが『マイクロマックス・グルーブ』と呼ぶものだ。この『新溝マイクロマックス・グルーブ』では、溝と溝の間隔を狭くしている。
具体的に言うと、溝と溝との間隔が0.140インチから0.104インチになっている。そのため、番手によって溝を4、5本追加することが可能になった。溝の側壁の新形状と組み合わせることで、パフォーマンスがさらに進化しているという。
『新溝マイクロマックス・グルーブ』のメリットは、ショートアイアンでのフライヤーを減らしロングアイアンでのスピン量を安定させることにある。結局のところ、この『マイクロマックス』は、適切な弾道と落下角度をキープしつつも、「i525」の速いボール初速を実現することに役立つというわけだ。
さらに、ピンでは溝と溝の間隔のわずかな隙間に『フリクションフェース』を搭載し、スコアリングクラブにおける濡れた状態と乾いた状態での打ち出し角とスピン量の差を縮小化。結果として、大切なアプローチショットにおいて、飛距離が安定するというわけだ。
MOI(慣性モーメント)アップ
「MOI」ネタがなければピンじゃない。というわけで…、
「i525」アイアンは小ぶりにも関わらず、フェースを軽量化し、ヒールとトゥのウェイト配置を改善することで、MOIは「i500」に比べて大きくなっている。
数字で言うと、「i525」は上下のMOIが2.5%、ヒールトゥだと3.5%向上している。どちらも数値としては大きくないが、“着実で少しずつの改善“というのがピンのやり方であり、これがより安定したボール初速だけでなく、さらなる一貫したスピン量に変換されるのだ。
ピン「i525」アイアン – トータルパッケージ -
ピン「i525」にアップグレードされたトータルメリットは、ボール初速が若干アップすることと、バラつきが17%減少することに加え、「i500」とほぼ同等の打ち出し角とスピン量が得られることだ。ピンの「ストロークス・ゲインド」の数値によると、これはラウンドあたり1.5ストロークのメリットがあるという。
パワースペック&レトロスペック
ピンでは「i500」と「i525」のロフト角を変えていないが、再び「パワースペック」と「レトロスペック」をラインナップしている。これは、ドライバーのように、とあるアイアンのロフト角が1つだけだと、全てのゴルファーにはマッチするわけではないというアイデアから来ている。
ピンは、ストロングロフト(パワースペック)の方がメリットを得られるゴルファーもいれば、ウィークロフト(レトロスペック、ロフトが寝ている)の方が利点を得られるというゴルファーもいるということを理解した上で 純正パッケージは市場の最多層に投入している。
パワースペックのロフト角は標準モデルより1度から1.5度ほどストロングになっており、レトロスペックは標準モデルより全体的に2度ほどウィーク(寝ている)になっている。
ピン「i525」アイアン – 純正シャフト -
業界を悩ますサプライチェーン問題を鑑みると、純正シャフトの採用にあたって“その日に何があるか分からない”とするメーカーを責めることはできないが、「i525」アイアンにおいて「Project X IO」を純正シャフトとして採用している。
ピンのマトリクスにおいて、このシャフトは打ち出し角とスピン量の枠のど真ん中に収まっている。
純正カーボンシャフトは「UST Recoil 780 SMAC(UST リコイル 780 SMAC)」とピンの「ALTA CB slate(アルタCBスレート)」だ。
またこれまで同様、オプションも用意されている。
アーコスセンサー
ピンは、今回のモデルにおいてアーコスを装着したグリップを標準装備にしていない。しかし、「i525」を購入すると、センサーのフルセットと「Arccos Caddie」アプリの45日間トライアルがついてくる。オンラインで申し込むだけで、センサーが送付されてくるようだ。
ピン「i525」の価格と発売時期
ピン「i525」アイアンのメーカー希望小売価格は、スチールが205ドル(1本)、カーボンシャフトが220ドル(1本)。先行販売は2月8日からスタートしており、店舗では3月24日から発売される。
Leave a Comment