あなたのお気に入りのクラブは、何だろうか?あなたのスコアのことを考えれば、「パター」と答えてほしいところなのだが。
ゴルファー達のパターの選び方には驚かされる。あるゴルファーは打感で、ある人は音で、またある人はお気に入りのプロが使っているから、またある人は愛着や思い出を理由にパター選ぶ。だから、全ストロークの30%以上(他のクラブの2倍)を占めるパターが自分に合っていない。多くのゴルファーは、“何となく感触や見た目が良いから”という理由以外に、なぜそのパターを使っているのか明確な基準がない一方で、何千ドルものお金をドライバーや、アイアンセット、ユーティリティー、フェアウェイウッドのカスタムフィッティングに費やしているのだ。
私は、パッティングとパターフィッティングは別のものとして見ている。私は、一人のゴルファーが、2,3本の違うパターでパッティングしてもうまくいくと思う。これらのパターは、全て同じフィッティングの構成要素を持ち合わせているはずだが、パターにはゴルファーによって好みの違いはあるはずだ。ゴルファーは、パターがどのように動くか、異なる設計によってストロークがどう反応するのか、まずその仕組みを理解する必要がある。
パターフィッティングは、芸術と科学の融合である。画家が傑作を生み出すには、適切な絵筆が必要なのと同じことだ。
それでは、一般的なフィッティングとパター設計の構成要素について考えてみよう。まず、パターがなぜその特徴通り動こうとするのか、プレーヤーはなぜそれに対して違う反応をするのか、について説明したい。
フィッティングの構成要素
・トゥハング
・オフセット
・ヘッド形状
・ロフト角
・クラブの長さ
・ライアングル
・ウェイト
・グリップスタイル/サイズ
・フェースの素材/溝
トゥハング
パターのトゥハングに関してはどこかで聞いた事があると思うが、その意味をまだ理解していないなら、ここで分かり易く説明しよう。トゥハングとは、パターが自然に吊られた状態(写真参照)で、トゥが指す位置のことを言う。
自分のストロークに合ったトゥハングを探し出すことが、インパクト時にフェースをスクエア(ターゲットに対して直角)にするために必須だということは周知の事実だ。
こう考えたらどうか。もしシャフトをパターのヒール側に入れたとしたら、フェースを閉じるのに一苦労する。もしシャフトがパターの真ん中に設置されたら、フェースを閉じるのはもっと簡単になる。異なるタイプのトゥハングを定義づけるとき、フェースバランスデザインはリリースしやすく、ヒールシャフトデザインの場合、ストロークの際に平均から最小の範囲でフェースローテーションをするタイプのプレーヤーにとって、インパクト時にフェースが開く原因になることは覚えておいて欲しい。
トゥハングには、大きく分けて5種類ある。
・フルトゥハング-ヒールからシャフトがのびるブレードタイプによく見られる。自然に置いたとき、トゥがほぼ真下を向く。
・3/4トゥハング-短く小さいホーゼルが付いたブレードタイプによく見られるスタイル。トゥの向きは水平に対して約75°傾く。
・1/2トゥハング-このトゥハングは、PING ANSERデザインから始まった。ほとんど、クランクネックブレードパターで、水平に対して約45°傾く。
・1/4トゥハング-このトゥハングは、ブレードとマレットタイプ両方に見られるスタイル。トゥの向きは水平に対して約25°傾く。
・フェイスバランス―これもブレードとマレットタイプ両方に見られる。自然に置いたとき、フェイスがほぼ真上を向く。
パターのトゥハングが重要な理由、また最初の設計段階で特徴として取り入れられる理由は、それがインパクト時にフェースをスクエアにする方法に直接関係するからだ。モーションキャプチャーの技術やハイスピードカメラ、物理学は、パッティングがほとんど完全にインパクト時のフェースアングルに支配されることを物語っている。
オフセット
オフセットは通常、フルスウィングするクラブについて議論されるものだ。クラブはミスショットを直すため、シャフトのリーディングエッジよりも内側に入っている、文字通りオフセットフェースを特徴としている。パターのオフセットも同様だ。オフセットとは、フェースに関連したシャフトの位置のことである。オフセットの度合いは、プレーヤーのパット能力と、インパクト時にフェースをスクエアにする能力の両方に影響する。
一般的な経験則だが、オフセットには3種類のタイプがある。
・オフセットなし-ヘッドに直接つながる真っ直ぐなシャフトのパターに見られる。アドレスした状態で見ると、シャフトの左側のエッジがフェースのリーディングエッジに重なる。
・ハーフシャフトオフセット-小さいS型ホーゼルか、ホーゼルなしのダブルベンドシャフトのあるパターに通常見られる。アドレス時に、シャフトの幅の半分位が、フェースのリーディングエッジの手前にくる。
・フルシャフト-ホーゼルとダブルベンドシャフトがあるパターに通常見られる。アドレス時に、シャフト幅分がフェースの手前にくる。
それぞれのオフセットは、きき目、奥行き感覚、視力、アドレスでの頭の位置などの様々な視覚的特性に応じて、プレーヤーが他のオフセットに比べて、無意識にわずかに左(または右)に向いて構えることを引き起こす。
適切なオフセットを知る事は、パターを正しく合わせるのに極めて重要だ。私達はゴルファーに、自分のお気に入りのヘッド形状に異なるタイプのオフセットを合わせてみることを勧めている。正しいオフセットが見つかれば、プレーヤーの目は自然に正しくターゲットの方向に向く。プレーヤーが間違ったオフセットを使っていると、自分では毎回同じように構えていると思っていても、実際はパターは正しい方向を向いていないのだ。
ヘッド形状
見た目に惹きつけられるパターヘッドを選ぶことは大切なのだが、適切に使用された時に発揮する、パター形状それぞれの効果についても考慮しなくてはならない。
ヘッド形状はラウンド型とスクエア型に分けることができる。パターのトレーリングエッジ(ヘッド後部)が丸い場合、ターゲットに対して開き気味に構える傾向があるように思う。一方、ヘッド後部がスクエア(フェースと平行)なヘッドは、ターゲット方向に対して左にバイアスがかかりやすい。
ヘッド形状は、インパクト時のフェースアングルを決めるのに重要な要素になる。なぜなら、それがフェースの方向をどの位正確に定められるかに関係しているからだ。好きなヘッド形状を探して、うまく機能するか確認してほしい。
ロフト
パターのロフト角は、打ち出しとスピンの質に直接関係する。最近では、ドライバーの打ち出しの最適化を試みるのと同じく、パターに関してもベストな打ち出しが求められるようになった。最近のテストでは、標準的なロフト角4°のパターは、打ち出し角が大き過ぎて(球が上がる)、バックスピンを生み出してしまうことが分かっている。
どんなフィッティングでも、プレーヤーが現在使用しているパターのロフト角をまず測定する。そして、シャフトの傾きと入射角を分析した後、完璧な打ち出しとスピンが実現する、その人に合ったロフト角を決めることができる。
ロフト角は、プレーヤーが通常ラウンドするコースのグリーンの状態を基準にカスタマイズするべきである。速いグリーンで完璧なパットをしようとするなら、遅いグリーンの時よりも少ない(立った)ロフト角が必要かもしれない。
パターのロフトは、アドレス時のフェースの見た目を変えることがある。ロフト角が小さいパターは、開いて見える傾向があり、ロフト角が大きい程、閉じて見える。
長さ
フィッティングを始めるにあたっては、ベースとなる長さを知らなければならない。真っ直ぐ立った状態で地面からプレーヤーの手首の骨までの長さをインチ単位で測って、初めてスタート地点に立てる。昔の学校のテストみたいだが、これが一番いい方法だ!
パターの長さは、正しくフィッティングするのに最も重要で価値を置くべきものである。間違った長さのパターを使うと、手首や腕、姿勢が不自然になり、パットの距離が合わず苦しむことになるだろう。
高速カメラでのテストでは、パター自体が長すぎると、フェースローテーションが適正値を超え、短すぎると適正値以下になることがわかった。
シャフトが長過ぎるとアップライトになりやすく、短か過ぎるとライ角に対してフラットになり過ぎるだろう。
ライ角
ライ角とは、ヘッドを地面につけた時のシャフトと地面が作る角度のことを言う。ほとんどの既製品パターは、およそ70°を基準としている。いいプレーは、インパクト時にトゥとヒールが均等に地面についている状態で起こる。
・正しく合わせたライ角により、パターフェースの最も高い部分、つまり重心の中心に限りなく近い部分を打つ確率が増え、結果的に前回転を促進するしっかりとしたストロークを可能にする。
・インパクト時のライ角が不十分な場合、トゥやヒールが地面から離れているかどうかによって、ブレードの低い部分、トゥやヒールにより近い部分にボールがあたる原因になってしまう。結果としてボールにしっかり当たらず、ボールスピードがコントロールしにくくなる。
重量
パターにおける重量は以下の3つの概念と関連付けられる。
・ヘッド重量
・グリップ重量
・カウンターウェイト
・ヘッド重量-ほとんどのパターは約350グラムを基準としている。ヘッド重量は、プレーヤーがいかにインパクト時にフェースを垂直に置くかに影響する。フィッティングでは、軽いヘッドと重いヘッド両方をテストし、どちらのタイプが効果的であったか確認することが重要だ。一般的なルールとして、速いグリーンでは軽めのヘッドを、遅いグリーンでは、重めのヘッドの方がいいパットが打てる。
・グリップ重量-見た目の好みや、感触はもちろん大切だが、グリップ重量がどのようにスウィングウェイトに影響を及ぼすか理解することは、非常に重要である。軽いグリップでは、ヘッドが重めに感じるし、重いグリップは同じヘッドでも軽めに感じる。
・カウンターウェイト-一部のプレーヤーはカウンターウェイトを使用するとうまくいく。パターの最上部(グリップエンド)にウェイトを入れるのだ。標準より重いヘッドと、カウンターウェイトを組み合わせることで、“カウンターバランス”設計が生まれる。通常36-38インチのパターに長めのグリップをセットし、少し短く持つことでこの技術をうまく活用できる。この方法は、ウェイトを加えたことでクラブフェースが操られてしまうリスクを少なくし、うまくコントロールしたいプレーヤーに役立つ方法である。
グリップ形状/サイズ
適正なグリップを選ぶことは、正しいパターフィッティングを行う上で、最終的なキーポイントだ。間違ったサイズや形状、重量は、インパクト時にフェースがスクエアにならない原因になる。一部のプレーヤーにとっては、グリップ効果は極めて少ないが、その他にとっては、プレーする上で莫大な差が生まれる。グリップ形状や、素材感、サイズなど、全てを考慮しなければならない。
グリップサイズが大きいと手の動きを限定してしまい、小さいグリップは逆に動きを促進するといったように、インパクト中のフェースローテーションに影響すると広く信じられている。実験では、プレーヤーの半数にこれが当てはまるという結果が出た。その他のプレーヤーにとっては、グリップの形状とそれをいかに手の中で安定させることができるかも、重要なであるように思う。
形状に関しては、ピストル・パドル・ラウンド・セミラウンド・非テーパータイプ・スクエアなどが広く流通している。素材は、本革から、合成ゴム、アクリルまで途方もなく種類がある。最も重要なことは、グリップはプレーヤーの手と指に心地よく収まり、安定性と自信の両方を促進するものでなければならない。
フェース素材/溝
例えば、主要ゴルフメーカーから10本のパターをランダムに選んだとしたら、主に3種類のフェース素材/溝を見つけることができるだろう。
・ミルドフェース
・グルーブドフェース
・フェースインサート
フェース素材は、パッティングの際の打感とボール回転に直接影響する。ハイスピードカメラを見ると、ボールを回転させることがどれほど重要か分かる。ボールが弾んだり、フェースを滑り抜けたりするこパターは、飛距離のコントロールが困難になる。
・ミルドパターフェース-303ステンレススティールで造られていて、CNCマシーンを使って精密にミリングされたもの。
・グルーヴパターフェース-ゴルフボールにかかる“オーバースピン”をよりと生み出すと言われる。ハイスピードカメラは、複数のフェースタイプと溝が素晴らしい順回転を生み出し、グルーブパターフェースには独特の打感があることを証明している。打音は通常高めで、プレーヤーはしっかりとした打球ができるため、良い打感を得ることができる。
・フェースインサート-パターの打感を変えるために利用される。インサートは最も安く造ることができ、打感も最も柔らかい。
フェース素材や溝は、インパクト時にボールとフェースの間に摩擦を発生させることを覚えておいた方がいい。この摩擦はボールスピードを変化させる。自分に合ったフェース素材を見つけよう。最も性能のいいパターフェースは、素晴らしい振動や、音、打感を生み出し、どれくらいのエネルギーをパッティングに費やす必要があるかに関係する。
時間とストロークの無駄遣いは止めよう
私達が述べたフィッティング要素は、パターフィッティングの基本として使われているが、一度正確なトゥハングや、オフセット、ヘッドシェープ、ロフト、長さ、ライ角、ウェイト、グリップ、フェース素材を決定したら、もうどのパターが一番良いかを考える必要などなくなるのだ。パターフィッティングのコストとパターの価格、またスコアに直接結びつく道具であることを考えた時、正確にパターを合わせることほど、素晴らしく価値のあるものは他にない。
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