・PXG「0211 Z」はスキル不足やヘッドスピードが遅いゴルファー向けの設計
・ラインナップはドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッド、そしてハイブリッドアイアン
・現在発売中
PXG「0211 Z」のセールスポイントはシンプルでわかりやすい。「あなたの身近にいるゴルフに興味があってもそこまで上手ではない方に、ぜひこのクラブセットを届けたい」。
そこで思い浮かんだのが…
「カミさんだ…」。
ここでちょっとした背景を話したい。数年前から、妻がゴルフに興味をもち始め、何度かゴルフクラブを買ってほしいと頼まれたことがあった。実際にクラブを探し、購入しようとしたこともあったが結局のところ買わなかった。しかし、今回ゴルフに興味はあるがあまり上手ではない人向けのクラブが試せるチャンスがあるのなら、再度検討する良いタイミングだろうとも思った。今にして思えば、彼女の誕生日にクラブを用意しておくこともできただろう。
本題から外れたな。
「0211 Z」であるワケ
新しいPXG「0211 Z」が登場したきっかけはよく知られたストーリーだ。新型コロナウイルス感染拡大により、新規ゴルファーが流入し休眠ゴルファーが復活している。要するに、ゴルフを始めたい人や最近始めた人、ヘッドスピードが遅いゴルファー、そしてゴルフをちゃんとマスターしていない層がたくさんいるのだ。
ゴルフ用品業界の状況をみると、多くの新作が売れてはいるが、実際のところ大多数のビギナーは“お下がり”でゴルフをしているのも事実。
そうあるべきではないし、(無駄ではないけれど)ハンディキャップ30のゴルファーが、トップフライト(top flite:アメリカのゴルフブランド)の“ブレードアイアン”を甘んじて使うべきでもないが、現状はその代替品も「廉価なクラブセット」や「合うか合わないかもわからない単なるクラブの寄せ集め」というのがオチだ。
そこで登場したのがPXG「0211 Z」だ。
PXG「0211 Z」シリーズは、ヘッドスピードが遅いゴルファーや、スキルで劣るゴルファーに最もよくマッチする。打ちやすく、ゴルフを簡単に、そして楽しむことを追求したクラブだ。もしも、こうした目的が従来のデザインの常識に反するなら、それでも良い。
みなさんや私は、見た目の美しい鍛造アイアンにこだわるかも知れないが、新規ゴルファーや(初級者やお下がりクラブでゴルフをしている)潜在層の多くにとってそんなことは関係ない。私の妻も、間違いなくどうでも良いと思うだろう。
「0211 Z」シリーズには、クラブにロフト角が刻印されていない。これはシンプルさと直感力を損なわないようにしようというアイデアからだ。ソールにある数字が大きくなると、そこまで飛ばなくなる。
ゴルフはそんな直感的にできるものではないし、サンドウェッジについてはある程度の説明が必要だろうが、今回の手法は全てのゴルフビギナーにとって分かりやすいと言えるだろう。
では、基本的なことはこれくらいにして、個々のクラブについて掘り下げてみよう。
PXG「0211 Z」ドライバー
今回の新しいPXGのラインナップは、スキルがやや劣るゴルファーのニーズに対応しているが、テクノロジーを犠牲にしているわけではないということは伝えておきたい。メタルウッドにはPXGの主要モデル「GEN4」シリーズを継承したものが多く含まれている。
ビギナーだからこそ、道具の力が必要なのだ。初心者や初級者向けだから手抜きで良いなんてことはない。
というわけで、「0211 Z」ドライバーのフェースには、PXGの主要製品と同じ素材の「Ti412」を採用。「0211 Z」カーボンファイバーのクラウンと段差のあるデザインが特徴的だが、こうすることで「0211 Z」の投影面積が大きくなっている他、MOIも高く、低重心をキープしつつ、USGAの規則内に収まるようになっている。
あなたのヘッドスピードが44.7m/s以上だとかなりスピンがかかってしまうだろうが、全製品がそういう人向けというわけではない。
また、見た目も型破りではあるが、嫌いではない。
「0211 Z」は、打ちやすさを追求しようというアイデアの元、ロフト角は16度に設定されている。メンズモデルの純正シャフトは44インチでレディースモデルは43インチ。このロフト角とシャフトの組み合わせにより、「0211 Z」ドライバーはボールを上げやすく、安定した打ち出しが可能となる。
またややドローバイアスになっており、ライ角もスタンダードなドライバーよりも若干アップライトだが、やり過ぎ感はない。
MOIはスタンダードの「0211」よりも9%アップしており、コース上での寛容性が増すようになっている。初級者向けクラブにも関わらず、これは想定外の開発努力と言えるだろう。
「0211 Z」ドライバーの段付きのクラウンデザインには、打音にいくつかの課題があるが、PXGでは、「ハニカムTPEインサート」を搭載することでこの課題を軽減した。
「GEN4」のように良い打音なのか?と言われれば、そうではないかもしれないが、ブライソン・デシャンボーのような打音を目指していないなら、許容範囲と言えるだろう。
また、PXGの他ドライバー同様、今回のモデルには調整可能な「ロフトスリーブ」が搭載されている。PXGが、外周部に小さなウェイトを並べていた時代も終焉しており、「0211 Z」のシングルウェイト搭載はバランス調整の役割のみ。純正ウェイトは10gとなっており、2.5g刻みで2.5gから20gまで追加が可能。
これにより、ウォルマート(世界最大のスーパーマーケットチェーン)で買える「ニトロブラスター」なんかより、格段にフィッティングの幅は広がっている。
PXG「0211 Z」フェアウェイウッド&ハイブリッド
「0211 Z」フェアウェイウッドとハイブリッド(それぞれセットに含まれる)の開発コンセプトも、ドライバーとあまり変わらない。(4とラベリングされた)フェアウェイウッドはロフト角18度。ハイブリッドは25度だ。
どちらも、易しいフェアウェイウッドやハイブリッドを使っているゴルファーの期待に応えたものと同等の、大きな投影面積を実現している。
ドライバー同様、PXG「0211 Z」フェアウェイウッドとハイブリッドは、段付きのクラウンが特徴で、設計上、ともにヒールとトゥ部分が低くなっている。こうすることで低重心化を実現し、可能な限り打ち出しが簡単になっている。
今回のモデルはスタンダードの「0211」よりも「低重心化」されているが、このモデルの対象となるゴルファーはこの恩恵を享受しつつも、低重心化を気にするようなことはないだろう。デザインは、アダムスゴルフの新作「Tight Lies(タイトライズ)」にやや似ているが、フェースがやや高くなっていることでフェース上部へのミスヒットも軽減してくれている。
またドライバー同様、「ハニカムTPEインサート」を搭載しており、リブ構造がなくとも心地よい打音と打感を実現している。
フェアウェイウッドとハイブリッドのロフト角は調整可能で、バランスを調整できるウェイトポートが1つある。
PXG「0211 Z」ハイブリッドアイアン
ところで「0211 Z」を構成する6本のハイブリッドアイアン(6番からサンドウェッジ、ロフト角は27度から55度)は、かなり興味深い。
その前に、ゴルフクラブの見た目に対してゴルファーが持っている“先入観”を気にせず設計するとゴルフクラブというものがどのような形状になるのか?ちょっと考えてもらいたい。
知見・経験の豊富なゴルファーには通用しないかもしれないが、経験のないゴルファーはそういった先入観を持っていないが故に、見た目や形状よりも機能重視でクラブを選ぶものだと考えている。
というわけで、もっともなことを言わせて欲しい。PXGの「0211 Z」ハイブリッドアイアンは大型ヘッドで分厚いが、これはメチャクチャ易しく打てるという設計にした代償。ボールをちゃんと打ったことがないなら、後者は最も重要であるべきだ。
他の多くのPXGアイアン同様、「0211 Z」ハイブリッドアイアンは、中空ボディ構造が特徴となっている。バランス調整と音の軽減用にグルーが少し注入されているが、ポリマーが充填されたPXGクラブと全く同じというわけではない。
誤解がないように言っておくが、、PXGは手抜きをしたわけでもコストカットするためテクノロジーをスケールダウンしたわけでもない。「0211 Z」アイアンはヘッドが非常に大きいため、重さを感じさせない唯一の“充填剤”が空気だったというのがオチ。
確かに「0211 Z」ハイブリッドアイアンは、他のPXGアイアンとは音が違うし、もしかするとより柔らかいボールが合うのかも知れないが、改めて言うと、このシリーズの対象ゴルファーはタイトリスト「Left Dash」ボールやキャロウェイ「クロームソフト X LS」のどちらかを選ぼうとしている層ではない。
アドレス時の見た目だが、基本的に“見たまんま”というところ。PXG「0211 Z」ハイブリッドアイアンは、ディープボディでワイドソール、スクエアフェース、オフセットも大きく、ステップバックデザインが採用されている。
最後のステップバックは、低・深重心化のニーズに応えるため。繰り返すが、このクラブは可能な限り簡単に打てるような工夫ができる限り施されている。
実際に打ってみると、むしろダフること自体が不可能なのではないかと思うようになった。これは「ミスが起きるのか?」と思わせる素晴らしい体験だ。実際にはそんなことはあり得ないだろうが、ひょっとするとひょっとする。
初心者向けアイアン部門において、シルバーとブラックのツートンカラーをアイアンに採用したのはPXGだけではない。後部の「ブラックPVD」を採用することで、分厚さをある程度隠したり、少なくとも視覚的に一体化させるということがツートンにする目的。
アドレスにおいて、この部分はやや影のようにも見えるとも言えるが、結局のところ、大型アイアンであることに変わりはないし、視覚的なトリックでその大きさが変わるものでもない。
PXG「0211 Z」ハイブリッドアイアンはアドレスで大きく見えるし、悪夢のように見えてしまうかもしれないが、仕上げによって実際の大きさよりも多少小さく見えるかも知れない。
それよりも大切なことは、このデザインの分厚さは、初心者や初級者、ヘッドスピードが遅いゴルファーにとっては非常にメリットがあるということだ。
「このクラブは誰にでも合うわけではない」というのはPXGのCPOブラッド・シュウウェイガート氏。「ヘッドスピードが速くない新規ゴルファーにとって素晴らしいものが、多くのプレーヤーにとっても素晴らしいとは限らない」。
誰にでも合うクラブはないが、もしあなたが私の妻のようなスキルに劣るタイプなら、このクラブが良いかも知れないのだ。
PXG「0211 Z」フィッティング
このモデルは、PXGでフィッティングすることがもちろん可能だ。しかし、PXGはこう考えている。スイングの再現性が低いビギナーゴルファーは「フィッティングを受けたくない(押しつけがましく感じさせるという理由で)」と感じる傾向にあると。
そんなゴルファーのために、PXGは基礎的なフィッティング方法を開発した。身長、年齢、性別、器用さを把握することで、PXGでは、量販店「ターゲット」のスポーツ用品コーナーで働くバイト君よりも、上手にオンラインでフィッティングできるようになっている。
購入オプション
PXG「0211 Z」ゴルフクラブの購入にあたってはいくつかのオプションがある。ちょっとだけ試してみたいというゴルファーは、ウッド3本のセットかハイブリッドアイアン6本セットがおすすめ。本格的に使いたいなら、ウッド3本、ハイブリッドアイアン6本、0211パター、バッグ、キャップのセットが良いし、さらにスープも一緒にいかがかな?
「0211 Z」の発売は、ゴルフを始めようと思っていたり、最近始めたばかりだからと言って、“お下がり”や“安かろう悪かろう”というようなクラブセットを使う必要がないということを意味している。
初級者だって良いモノが欲しいし、始めた時からよりゴルフを楽しむことができるクラブを求めているはずだ。
確かなことは、PXG「0211 Z」はビギナーには高価な部類に入るし、このクラブに飛び付く人はお金に余裕があるか、ゴルフと末長く付き合っていこうと完全にコミットすることを考えている人だろう。
どちらにしても、この層は自分たちのことを考えて設計された高品質な製品を期待しているゴルファーだ。
少なくても、選択肢があるということはいつだって良いことだ。
価格と発売時期
PXG「0211 Z」は10本セット(バッグとキャップ付きで1,695ドル)、ウッド3本のセット(795ドル)、また+ハイブリッドアイアン6本のセット(795ドル)がある。
現在発売中。
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