PXG 「0311 GEN4」アイアン:主な注目点
・PXGが「シグネチャーシリーズ」である「0311」アイアンの第4世代を発表
・「0311 T(ツアー)」、「0311 P(プレーヤー)」および「0311 XP(エクストリームパフォーマンス)」の3モデル
・大きな変更点は、ウエイトシステムの刷新と新たに採用された「XCORポリマー素材」
・価格は1本349ドル
新しいPXG「0311 GEN4」アイアンは、まさに“少ないほど豊か”の好例だ。
いつものPXGのイメージとはだいぶ違う。
では、PXG 「0311 GEN4」アイアンにおける“少ない”とはどういうことか。まず第一に、「GEN4」は「0311」史上、前作から最も短いサイクルでの発売となる。また、PXGの特徴である各アイアン(ヘッド)のミニウエイトスクリューの数が44%少なくなっていることにも気づくはずだ。
そして、最も少なくなっているのは値札の数字だろう。もちろん「TJマックスストア」並に安いとはいえないが、「GEN3」と比較して18%の値下げは間違いなく「少ない」と言える。
PXGによれば、これらの要素を減らすことで、より多くのものを得ることができるという。では何が増えるのか。確認してみよう。
PXG「0311 GEN4」アイアン
まずは“少ない”でも“多い”でもなく、“変わらない”ものから見てみよう。PXG 「0311 GEN4」シリーズは、「GEN3」と同じく「0311 T」、「0311 P」、「0311 XP」の3モデルで構成されており、スペックも(ほぼ)同じだ。
前作の「0311」アイアンと同様、3モデルの外観が似ているため、お望みならば比較的違和感なく組み合わせて使うこともできる。
それにしても「0311」の商品サイクルはスピードアップしているように思える。2015年の「GEN1」の登場から「GEN2」のお目見えまでは2年半近くかかった。しかし、「GEN3」はわずか1年半後に、そしてそこから1年ちょっとで「GEN4」が出た。
とはいえ、PXGは最初のやり方に固執するタイプのメーカーではない。「GEN4」にはいくつかの大きな変更点がある。具体的には、「ウエイトシステム」と「0311」の中空ボディに採用した「独自のポリマー充填剤」という、PXGの代表的な2つのテクノロジーを一新した。
「ボブ・パーソンズ(PXGの創業者)は、ブレードの見た目でありながら、キャビティバックのように寛容で飛距離が出るものを求めていた」とPXGの最高製品責任者であるブラッド・シュヴァイガート氏。「これらの特性を実現するためには、中空構造の技術を用いるのがベストだ」。
「中空構造」の欠点の一つは、クラブヘッドにポリマーを充填しないと、あまり良い打感が得られないことだ。PXGは、初めて中空ボディにポリマー素材を充填したのは「GEN1」だと主張しているが、結果的にはテーラーメイドとの間で大きな訴訟問題に発展した。
PXGは、「0311」アイアンの各世代でポリマー充填剤に手を加えてきた。今回新たに開発した「XCOR」は、打音と打感を新たな次元に引き上げると同時に、他の厄介な問題をも解決するものだという。
XCOR:新しい薬用充填剤
「ポリマーの問題点の1つはその粘弾性だ」とシュヴァイガート氏。「実際、『GEN1』で使用していた熱可塑性ポリマーはインパクト時にエネルギーを吸収していることがわかった」。
ボール初速を求めるのであれば、インパクト時にエネルギーを吸収するのは好ましくない。シュヴァイガート氏は、「GEN3」に採用されている「DualCOR(デュアルコア)」素材がその問題を部分的には解決したが、新たな問題を生み出したと言う。
「素材はより最善なものだったが、『DualCOR(デュアルコア)』コンセプトを使わずにクラブヘッドに入れる方法はなかった」と彼は言う。「1つの素材で中空を満たし、その周りに2つ目の素材を注入する必要があった。『DualCOR』という名はそこからきている」。
ここのプロセスを効率化するために、PXGは独自のポリマーに特化する小規模な研究開発企業と提携した。目標としたのは、ソフトで柔軟性があり、かつ完全に注入可能な素材。それが『XCOR』だった。
「この種の用途には理想的な素材」とシュヴァイガート氏。「XCORはソフトで柔軟性がありながら、高い反発性能を維持しているため、インパクト時にエネルギーを散逸させることがない。これによりフェースのたわみを生み出し、最大のボール初速を維持することも望める」。
前世代同様、「XCOR」は「PXG 0311」アイアンの土台となる支えの一つだ。PXGは発売当初から「ゴルフ業界で最も薄いフェース」を謳ってきた。ボール初速を追求するなら、薄さは味方だ。
しかし、PXGレベルの薄さ(正確に言えば1.5mm)では、「HT1770マレージングスチール」のフェースがインパクト時にへこんだり割れたりしないようにするためにポリマーが不可欠となる。
「ポリマーを抜いてフェースの支えをなくし、中空のままにしてしまうと、我が社のフェース厚ではフェースが割れてしまう」とシュヴァイガート氏。「XCORはソフトで柔軟性があり、フェースの動きを妨げず、フェースを支えるので割れることはない」。
あのヘッドウエイトたちはいずこへ?
PXG 「0311 GEN4」アイアンをざっくり見て、何か足りないものに気づいただろうか?
あの「ウエイトポート」はどこへ消えたのか?
「『GEN1』では、外周部で必要に応じて重量を調整できると考えてスロットを設置した」とシュヴァイガート氏。「しかし実際にはとても面倒な作業だったし、簡単にはできないので、あまり使われることはなかった」。
2015年に発売された初代「0311」アイアンでは、各ヘッドに11個のウエイトポートが搭載されていた。「GEN2」と「GEN3」では9個に減った。「GEN4」では5つになったが、そのうちの1つはかなり大きい。
目指したのは“シンプルさ”だ。トウ側に2つの小さなタングステンウエイト、ヒール側に2つの小さなチタンウエイト、そしてヘッド全体の重さを調整するために中央に大きなウエイト1つ。チタン製のヒールウエイトは、クラブ素材そのものよりも軽いため、トウ側に重心を移動できる。
「慣性モーメントが改善され、クラブヘッドの寛容性が少し増した」とシュヴァイガート氏。
大きなセンターウエイトは、テーラーメイドの「Tour Preferred(ツアープリファード)」シリーズから始まり、今年のキャロウェイの「Apex MB(エイペックスMB)」アイアンにも採用された。すべてはフィッターに選択肢を与えるためのものだ。
「フィッターは、お客様全員に重いものと軽いものの両方を試すよう指示されている」とシュヴァイガート氏。「とはいえ、軽くしてもボール初速が速くならないゴルファーには、重いものを選ぶように言っている。ヘッドの重量が重くなれば寛容性も増すしね。」
大きなウエイトは2g刻みで、2gから18gまで用意されている。ウエイトはユーザーによる調整はできず、ロックタイトで固定された不正脱着防止の「Torx」ネジが付いている。
PXG 0311 GEN4アイアン:3つのモデル
PXGは、「GEN4」においても同じモデル、同じネーミングを採用している。ラインナップの中で最もコンパクトなのが「0311 T(TはTOUR=ツアーの意)」。PXGによると、以前はブレードを使っていたが、もう少し飛距離と寛容性が欲しいと思っている「上級プレーヤー向け」ということだ。
「0311 XP」の「XP」とは、「Xtreme Performance=エスクトリームパフォーマンス」のことだ。「GEN3」の「XP」と同様、易しさと寛容性、そして「飛距離を求めるプレーヤー」のために設計されている。「0311 P」はその中間(PはPlayer=プレーヤーの意)、ラインナップの中で常に最も人気のあるモデルだ。
「上級者用の見た目を持つ中級者向けモデル」とシュヴァイガート氏。「トップブレードは比較的薄く、オフセットも多くないので操作性が良好。上級者用クラブの利点と、中級者向けアイアンの寛容性および飛距離の両方を手に入れることができる」。
「GEN4」アイアンのスペックは3モデルとも前作の「GEN3」とあまり変わらない。「0311 T」と「0311 XP」は実質的にほぼ同一だ。「XP」のスペックは、28度の7番アイアンを採用するなど、中級者向けの色が濃い。
しかし、「0311 P GEN4」アイアンのロフトは、「GEN3」よりも1度立っている。そのほうが「上級者向け飛び系カテゴリー」の需要に合うのは間違いない。
結局はテクノロジー
期待に違わず、「0311 GEN4」のボール初速は「GEN3」に比べて全モデルとも向上しているようだ。これまた期待通り、ロフトが1度立った「0311 P」は、「GEN3」に比べて1.78 m/s近くもボール初速が向上した。
打ち出し角は約0.5度低くなったが、ピーク時の高さは高くなった。PXGのデータによると、ボール初速が速くなり、高さが増したことで、キャリーが7ヤード以上伸びたそうだ。
また、「GEN3」モデルと全く同じロフト設定であるにもかかわらず、「0311 T」と「0311 XP」の「GEN4」モデルも、より速く、より高く、より遠くまで飛ぶ。
「それは主に『XCORテクノロジー』による恩恵だ」とシュヴァイガート氏。「それが飛距離アップの主な理由。そして、XPは最もストロングロフトであるにもかかわらず、ピーク時の高さは最も高い」。
PXG 0311 GEN4アイアン:分かりきったお値段の話
PXGでも、実際は価格の話をしても良いだろう。PXGの価格設定が一部の人々を苛つかせていることは承知だ。気休めになるかどうかわからないが、新しいPXG「0311 GEN4」アイアンは、「GEN3」よりも18%低い価格設定になっている。
そうはいっても1本349ドルなので、ミズノやキャロウェイ、タイトリストが開発したアイアンに比べ、「0311」は果たして1本あたり150~200ドルも優れているのかと考えるのは当然だろう。
誰にその質問をするかによって答えはもちろん異なるが、たとえば15,000ドルのロレックスと49ドルのセイコーの違いを考えてみてほしい。単純に言えば、セイコーの方が刻む時刻は正確だ。
人々がロレックスを購入する理由は2つ。“買える”し、“欲しい”から。必要な理由はそれだけだ。PXG 「0311 GEN4」アイアンでプレーしたら、酷いスイングが直って、より上手いゴルファーになれるのか?
もちろんそんなことはないし、PXGを選ぶ人はそのことを知っている。ロレックスを選ぶ人々が「ロレックスを買っても時間厳守の役には立たない」と知っているのと同じように。
そもそも我々はこの場で繰り返し言ってきた。PXGがアイアンを1本349ドルで販売したからといって、お得なブランドが選択肢からなくなるわけではないと。ゼロサムゲームではないのだ。
そして、他にも考えるべきことがある。2015年にPXGが登場して以来、主要ブランドの価格設定もじわじわと上がってきているということを。しかし同時に、「Sub 70」や「Hogan」などのバリュープライスブランドや直販ブランドも登場してきている。
はたしてそれは偶然か否か。
そして忘れてはいけないのが、PXGはMyGolfSpyの本年度『Most Wanted』ドライバーテストで「ベストバリュー」を獲得したということ。さらに、PXGのウェブサイトに行けば、「0211 DualCOR」 アイアンが1本99ドルで販売されているということも忘れてはいけない。
お次は何が出てくるのだろうか?
新製品のPXG 「0311 GEN4」アイアンは現在発売中。
Leave a Comment