PXGは常に新境地を開く傾向があり、新作ウェッジがデビューするとなれば、その期待値も想定される価格くらい高く設定される。

現時点で、PXGは時としてそれなりに大胆な行動をとることをいとわない独創的なブランドであると認識すべきだ。

PXGは高級ゴルフ用品とは何か?と問い続けつつ、業界に溶け込んでいる。それだけの経験を積んでいると私は考えている。しかし、見せかけに騙されてはいけない。

毎度の新製品リリース時の課題は、現行品よりも明らかに優れている時だけ、新製品を市場に投入するという約束を果たすことだからだ。

結果として、自社商品のクオリティが向上すると、この課題がより難しくなる。

PXG,シュガーダディー,0311ミルド,0311フォージド,ウェッジ

これは2020年のPXGシュガーダディー0311ミルド&0311フォージドウェッジにも当てはまる。

まず、ゴルファーが何をウェッジに求めているかを考えることから始めてみよう。

マクロレベルにおいては、ウェッジは100〜120ヤード、そしてそれ以内で必要なショットを全てカバーすべきだろう。

具体的な特徴としては、弾道とスピンを変えつつ様々なライから多種多様なショットが打てる必要がある。

確かに、一つのデザインに多くの用途を詰め込めば詰め込むほど、プレー中の潜在的メリットも多くなるだろう。

今回PXGは、シュガーダディー0311ミルドと0311フォージドウェッジで、「ハイトゥ」設計(キャロウェイのPMグラインドとテーラーメイドのHi-Toeをチェックして欲しい)の重量配分とパフォーマンスを、より美しく魅力的なデザインに組み込むことを目指した。

そしてPXGは、重量をトゥ側に配置することで、重心をフェースの形状上の中央に近く寄せる一方、重心位置をコントロールすることに成功した。

多くのウェッジの重心は、ホーゼルの重さがあるため、ややヒール寄りになる傾向があるが、前作のPXGミルドウェッジに比べると、2020年モデルの重心は1.27mmほどヒールよりも遠くなっている。

大した数字には見えないが、重心を1mm以上もシフトさせるということはウェッジワークにかなりの影響がある。

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今回の設計の主な利点は、重心位置を高くできることにあり、こうすることでスピンを多く、かつ弾道を抑えたショットを簡単に打つことができる。

特に上級者にとっては、40ヤードから2バウンドで止められるショットは不可欠であり、ゴルファーの腕がものを言うのは間違いないとはいえ、そうした用途により適したクラブを持つことには大きなメリットがあるのだ。

明確にしたいのは、今回PXGは、フェースを大きくしてクラブの見た目を大幅に変えるのではなく、ウェイトを動かすことで理想的な重心位置を実現したこと。

加えて、最適な弾道とスピン量にするために各ウェッジのロフトを元に重心位置を修正したことにある。

ロフト別重心位置はウェッジ業界では一般的だが、多くのブランドは、同様の結果を実現するため様々な技術を採用している。

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おそらく今回のリリースで一番の注目は、他のトゥウェイトデザインで出てくるテクノロジーでなく、フルスイングでパフォーマンスを発揮するデザインだろう。

一般的に、このようなデザインは、フルスイングしないショットの時やクリエイティブを要するグリーン周りのショットを想定して考えられているが、フルスイングでの性能は二の次になっていることがある。

なぜこうしたトレードオフがあるのかは全く分からないが、PXGが2020年モデルにこのデザインを採用したということは、その答えがついに具現化されるということだろう。



 

変わったこと

2020年モデルで一目瞭然の変更点はその設計であり、これによりパフォーマンスに違いが生まれる。

0311シュガーダディー・ミルドウェッジは、8620カーボンスチール製の100%ミルド(ヘッド毎におおよそ3.5時間かかる工程)だが、今回は見た目がやや大きく、溝もよりアグレッシブになっている。

USGAでは、溝の断面積をピッチで割った値は0.0030平方インチ/インチ以下にするよう指示している。

基本的に、(溝の淵の)半径は0.0003”の公差で0.010”から0.011”までとしており、「アグレッシブ」とは「ミーリングマシーンでUSGAの仕様に可能な限り近づける」ということである。

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PXGによれば、規定ギリギリの半径だとスピンが増し、様々なライや天候でもスピンが安定するというのがプレーヤーのフィードバックより確認された。

こうしたウェッジは2019年のMost Wantedのウェッジテストにはなかったが、多くのメーカーが特にウェットコンディションにおける安定したスピンの重要性に注視していることは明らかだろう。

またシュガーダディーという名前が示す通り、今回はZuluとRomeroのグラインドをやめ、ロフト角46度と48度ではなく、62度と64度をラインナップしている。その理由は?

簡単に言うとゴルファーが求めているからだ。購入トレンドをチェックしてみると、ZuluやRomeroよりもシュガーダディーの方がよく売れた。

また、ミーリングのオプションよりもウェッジセットにマッチしたギアを選ぶゴルファーが多かったのだ。

そして、ここでの補足だが58度と60度のモデルには07と09のバウンスオプションがあり、07は事実上、Zuluのバウンスデザインということだ。

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※上記画像は、PXGウェッジスペック(ミルドウェッジ)

クラブ / ロフト角 / ライ角 / 長さ / バウンス角 / オフセット(画面左から)

 

では、0311シュガーダディー・ミルドウェッジと0311フォージドウェッジは何が違うのだろうか?

ともにニッケル/クロームプレート仕上げで、ミルドグルーブ、そして独自のペリメターウェイトを採用しているが、0311フォージドウェッジは、個々のウェイトがない代わりにトゥに向かって厚みがある。

また0311フォージドウェッジはロフトのオプションは少ないが、実際は両モデルともにほとんど同じパフォーマンスを実現している。

結局のところ、人の手を完全に介すことなくウェッジをミーリングすれば、ほぼ完璧に複製することが可能になる。

これは、特に最高レベルの精度を求めるゴルファーにとっては願ってもないことだろう。

同時にPXGがウェッジ間の公差が厳格で、ツアープロへの対応やツアーバンに納品するという点で役に立つ。

長い目で見たときに、これは必要不可欠なことなのだろうか?もちろんそんなことはないが、もう一度お伝えすると、PXGの特徴は他ブランドがしないことをすることにこそある。

ウェッジをミーリングで造るメーカーはなく、多くのメーカーはウェッジを部分的(多くの場合はソールと溝)にミーリングしている程度だ。

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※上記画像は、PXGウェッジスペック(フォージドウェッジ)

ロフト角 / ライ角 / 長さ / バウンス角 / オフセット(画像左から)

 

ある意味、0311シュガーダディー・ミルドウェッジは、ブランドとしてのPXGそのものだ。

ディレクターでシニアデザイナーのマイク・ニコレッティ氏は、MyGolfSpyに対して「業界には賢い人が多数いるが、100%ミルドウェッジを手掛けたものはいない」とコメント。

注目すべきは、高性能な製品を作るだけでは不十分という姿勢。

PXGには、クラブデザイナーがゴルフ用品業界の本流とは一線を画す「スゴイ」が感じられるクラブを作ることを求められているのだ。

GEN3アイアンとともにウェッジをリリースすることでPXGのリリース周期はわかりやすくなったが、これは悪いことではないだろう。

今回の0311フォージドと0311ミルドウェッジはともに第2世代のモデルだ。

PXGでは当初、オリジナルのGEN1シリーズとともに0311フォージドウェッジを発表し、2017年春にミルドウェッジの第一弾を発表している過去がある。

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0311シュガーダディー・ミルドウェッジ(650ドル/クローム、750ドル/エクストリームダーク)と0311フォージドウェッジ(295ドル)は既に発売がスタート。