第3四半期レポート−重要ポイント
・アクシネットの第3四半期の売上高も圧倒的だが、キャロウェイの数字はさらに上回る
・キャロウェイの8億2,600万ドルの売上のうち「トップゴルフ(Topgolf)」の貢献が大きい
・ボールの売上は減少したが、アクシネットの売上高は5億2,100万ドルに達した
・キャロウェイの予想では、2021年の売上高は30億ドル超
ゴルフ業界トップ2社の第3四半期の財務報告から見えてきたのは、ある会社の「独走レース」だった。
キャロウェイとアクシネットは、企業サイズや売上高、利益の面で互いに競合している。しかし、今年キャロウェイが「トップゴルフ」を合併/買収したことで、もはや同じ土俵で戦っているとは言えなくなった。
報告書のトップライン(売上高)が全てを語っている。アクシネットの第3四半期の売上高は5億2,160万ドル。昨年を8%上回り、パンデミック前の2019年同期よりも25%増加している。
一方のキャロウェイはというと、第3四半期の売上高が8億2,600万ドルにも達した。
これは、昨年と比較して80%アップ、2019年よりも100%近くの増加に値する。
ただただ驚くばかりだ。
第3四半期レポート:キャロウェイ
それでは、キャロウェイ第3四半期の純売上高8億2,600万ドルの中身を説明しよう。
一言でいうと、ミズノ、コブラ、ウィルソン、クリーブランド / スリクソン / XXIO(ゼクシオ)の年間総売上高の合計が、キャロウェイの第3四半期の売上高に匹敵する。
一体キャロウェイはどのようにして成し遂げたのか?企業努力には違いないが、2月に「トップゴルフ(Topgolf)」が加わり、各分野の一流プレーヤーが揃ったことは間違いないだろう。
キャロウェイのCEOであるチップ・ブリューワー氏は、「トップゴルフの楽しく、包括的で、社会的な環境は、あらゆるスキルレベルや幅広い年齢層において高い需要がある。ゴルフのオンとオフコース、エンターテインメント、ダイニングやアウトドアライフなど、これらの強力な組み合わせは他社とは異なる独自のビジネスだ。」と述べている。
今年の初め、キャロウェイは「トップゴルフ」、「ゴルフ用品及びアパレル」、「ギアおよびその他」の3つの事業セグメントに再編した。そして今期大きく貢献したのは3億3,400万ドルの売上を計上した「トップゴルフ」だ。
一方の「ゴルフ用品」の四半期の売上は2億9,000万ドル(昨年より8%増加、2019年から38%増加)。「アパレル」、「ギアとその他」の売上高は2億3,300万ドルに達し、昨年より12%、2019年から8%上回っている。
これらの数字を紐解くと、キャロウェイ第3四半期の収益の3分の2は、「ゴルフ用品以外」によるものだということが分かる。
「トップゴルフ」によるインパクト
現在ある「トップゴルフ」の売上状況は、パンデミック前のレベルに戻ってきている。予約なしの客や、特にソーシャルイベントの予約が復活し、第3四半期には「ニューヨーク州ロングアイランド」と「コロラド州コロラドスプリングズ」の2箇所が新たにオープンした。年末までにさらにいくつかオープンすれば、アメリカで67箇所、イギリスで3箇所になる。
第3四半期の3億3,400万ドルを含め、2月末からの合計売上高は7億5,200万ドルに上る。「トップゴルフ」事業の四半期営業利益は2,400万ドルで、利益率は7%強だった。
今年の「National Golf Foundation(ナショナルゴルフファンデーション)による調査では、「トップゴルフ」に関していくつかの興味深い事実が判明した。まず、「トップゴルフ」を訪れる客の半数以上がゴルフ未経験だという。さらに、そのうちの75%は、実際にゴルフを始めることに興味を持っていると答えている。
また、今期キャロウェイは、都市型屋内ゴルフおよびエンターテイメントチェーンで、非公開の「Five Iron Golf(ファイブアイアンゴルフ)」の少数株式に3,000万ドルを投じた。「Five Iron Golf」はローカルボーリング場に似たゴルフ施設だ。シミュレーター、エンターテインメント、飲食、レッスンやクラブフィッティングを備えている。また一部の店舗には、ゴルフダイジェストのトップ100クラブフィッターである「The Fitting Lab(フィッティングラボ)」がある。
「Five Iron Golf」は、ニューヨーク、シカゴ、ボルチモア、ラスベガス、フィラデルフィア、DC、ピッツバーグなどの都市に9箇所あり、さらにシンガポールでも展開している。さらに7箇所が進行中だ。
この契約には、キャロウェイクラブの試打が行えるようにする非独占的マーケティング契約が含まれる。
その他のストーリー
もちろん、「トップゴルフ」は大きな話題だが、他も素晴らしい。「ゴルフクラブ」の売上高は昨年より9.5%増加し、2億3,000万ドル近くに達した。「ゴルフボール」は昨年と比べてわずかな増加に留まったが(5,800万ドルに対して6,000万ドル)、2019年から42%もアップしている。
しかし、ゴルフ用品の営業利益は運搬費用が大幅に上昇したため、昨年に比べて20%近く減少した。
今年度の「クラブ」総売上は約8億6,600万ドルで、対前年40%増加を記録。「ゴルフボール」は2億200万ドルで、33%近く増加している。「アパレル」においては41%アップ、「ギアおよびその他」は28%以上増えた。
地域別にみると、アメリカの第3四半期の売上高は5億5,200万ドルに達した(昨年より158%増加)。ヨーロッパ、日本、その他の地域の売上高も12〜19%増加している。
アメリカにおける今年度の総売上高は約16億ドルで、対前年162%の増加をマークした。ヨーロッパ、日本、その他の地域も大幅に増えている。
今年度第3四半期までの総売上は24.22億ドル。2020年の年間売上16億ドル、2019年の17億ドルを遥かに超える数字だ。
キャロウェイは、わずか10か月前とはまったく異なるビジネスを展開していると言っても過言ではない。
第3四半期レポート:アクシネット
一方のアクシネットはキャロウェイと同じゲームを繰り広げてはいない。
驚くような瞬間は少ないが、アクシネットの第3四半期の財務報告は期待通り、つまり堅実で着実、収益性の高い成長を示している。第3四半期の売上高は5億2,100万ドルに達し、対前年8%の増加、2019年からは25%増加している。
今年度第3四半期までの総売上高も同様に素晴らしく、17億ドルを超えている。前年に比べて45%、2019年から32%の増加に値する。キャロウェイと同様に、アクシネットも昨年の総売上高をすでに上回っている。しかし、四半期の純利益は昨年から約2,400万ドル減少し、3,900万ドルを計上。これについては、後ほど詳しく説明しよう。
アクシネットのCEOデービッド・マーハー氏は、「すべての分野でサプライチェーンの混乱や制約があった中で、第3四半期は非常に素晴らしい業績で終えることができた。将来的には、サプライチェーンの混乱は第4四半期から2022年まで続くと考えられる。」と述べている。
サプライチェーン問題は、同社の強みである「ゴルフボール」と「ウェッジ」分野に影響を与えた。
当四半期の「ボール」売上高は、2020年と比較して2%近く減少。アクシネットによるとこの減少は、サプライチェーンの混乱が「低価格のパフォーマンスボール」シリーズと「AVX」シリーズに影響を与えたためだという。
また、材料の「サーリン」は世界的に不足しており、下層ボールのカバー材料として使用される一方で、「ProV1」などの「プレミアムボール」のマントル層にも使用される。もし「サーリン」が限られている場合は、主力モデルに使う方が理にかなっている。
さらに、今期「ボーケイ(Vokey)」を購入しようとした人なら気づいたかもしれないが、ウェッジ不足が第3四半期の売上にかなりの影響を与えたという。パター不足もあった中、新「TSi」メタルウッドがクラブ全体の売上を12%増加させた。
さらに深く掘り下げると・・・
具体的には、「ボール」の売上高は当期1億6,700万ドルを超える(前述のとおり、前年比2%減少)。「クラブ」の売上高は約1億3,600万ドルで、タイトリストの「ギア(帽子、バッグなど)」の売上高は4,700万ドル弱(昨年から5%増加)だった。
「フットジョイ(FootJoy)」は第3四半期のもう1つの大きな功労者で、売上高は1億3,800万ドル超、前年より19%アップを成し遂げた。サプライチェーン問題により「グローブ」の売上が減少したと述べているが、「アパレル」と「フットウェア(シューズや靴下)」は成長に拍車がかかったようだ。
今年通年の「クラブ」売上高が4億4,400万ドルで、前年比で55%増した。タイトリストの「ギア」の売上高は1億6,500万ドル(37%増)、「フットジョイ」は4億6,200万ドル(47%増)。
そして、今期落ち込んだとされる「ゴルフボール」の売上高は変わりなく、5億4,300万ドルを超えている。これは昨年と比較しても40%の増加(約1億5,500万ドル)にあたる。キャロウェイの今期「ボール」の売上高は2億200万ドル強で、昨年を33%近く上回っている。同社は「ボール」分野でも2位という高い位置についているが、数字をみればアクシネットとの差は一目瞭然だ。
肝心の利益は?
数十億ドル規模のビジネスでは、四半期ごとの損益が会計上操作されることがある。公の企業は通常「GAAP(一般に認められた会計原則)」と「非GAAP」の数値を、「EBITDA(利息、税金、減価償却、償却前の収益)」の数値とともに提供し、投資家を安心させる。
これについては、怪しげなことは何もない。最近の買収を再評価したり、ビジネスの全体的な健全性を示さない1回限りの会計費用を開示する必要がある。
そのため、両社の第3四半期の純利益は非常に興味深いものがある。
キャロウェイの報告書によると、5億2,100万ドル以上の売上に対して、3,900万ドル強の純利益がある。全体的な売上高は増加しているものの、実際昨年と比較して38%減少している。これにはいくつかの理由が挙げられる。
まず、ビジネスにかかる「コスト」が通常に戻ったこと。パンデミックの間、営業担当者は出張せず、すべての企業がこれらの「コスト」に注視していた。
アクシネットの販売費、一般管理費には、コミッションやマーケティング、販売促進費などの費用が含まれる。この数字は、2020年の第3四半期には1億5,300万ドル弱だったのが、今年は2億ドルを超えている。
しかし、アクシネットの第3四半期までの総純利益は昨年と比較して大幅に増加しており、昨年の7,400万ドルに対して2億500万ドルを計上。
一方のキャロウェイはプレスリリースの見出しには載せていないが、第3四半期の「GAAP」で1,600万ドルの純損失を計上している(「非GAAP」では2,600万ドルの純利益)。
なぜ損失?数字をよく読むと、昨年と比較して販売費、一般管理費、および管理費が9,000万ドル増加していることがわかる。さらに、「その他」として計上されている追加の2,000万ドルの費用には、「トップゴルフ」合併に伴う利息費用の増加が含まれている。
第3四半期財務報告書から読み取る
繰り返し言っていることだが、私たちは決して金融の専門家や投資カウンセラーではない。ゴルフビジネスを愛し、そこに興味関心を抱いているだけの者だ。
とは言うものの、これら2社の第3四半期の財務報告からは互いに競合相手なのは間違いないが、決して同じ土俵で戦っているわけではないことが読み取れる。
まったく、異なる。
キャロウェイは6年前から買収モードで、「オジオ(Ogio)」、「トラビスマシュー(TravisMathew)」、「ジャックウルフスキン(Jack Wolfskin)」、「トップゴルフ(Topgolf)」を次々に買収し、その結果独自の企業に進化している。
クラブだけの売上に依存しない“ハイブリッドゴルフ/ライフスタイル/エンターテインメント企業”といっても過言ではない。今年度の数字から、クラブ関連の売上が最も高い利益率(21%)を出している(ただし、現在は運賃高騰のため抑え気味)。
しかし、第3四半期の「トップゴルフ(Topgolf)」や「アパレル」の営業利益は、ゴルフ用品を1,300万ドル、つまり22%強上回った。
一方アクシネットは、「ゴルフ用品」と「アパレル」、すでに存在しているものから変化させる様子はない。実際、ゴルフボール市場におけるアクシネットの優位性は明らかで、それらのボールを打つためのクラブにまだ注力している。
両社は第3四半期財務報告でサプライチェーンの課題に言及したが、アクシネットはそれらの課題をもう少し深く感じているようだ。しかし、繰り返しになるが、「トップゴルフ」のような拠り所は存在しない。実際、「トップゴルフ」を外すと、アクシネットとキャロウェイの総売上が同じになるのは興味深い。
しかし、キャロウェイが一歩リードしているのが現状である。
今年の見通し
両社は投資家に向けて通年の売上予測を更新している。キャロウェイは年間売上を前後はあるが31億ドル超を予想している。
また、決して潮時ではない。キャロウェイは引き続きゴルフ用品の研究開発に費用を投じている。また、「Five Iron Golf」との契約についてもあなどってはいけない。それがまさにキャロウェイが「トップゴルフ」を始めたきっかけなのだから。
キャロウェイ株は昨日、第3四半期の財務報告が発表される直前に29.01ドルで取引を終えた。今日の株価がどうなるか楽しみだ。
アクシネットは、年間の売上高を20億ドルと予測している。10月に普通株の買い戻しのためさらに1億ドルを承認し、買い戻しプログラムの合計が2億ドルになった。同社は今後の方向性に明確に自信を持っているようだ。
今朝のアクシネットの株価はというと、56.30ドルを記録した。
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