16億3,000万・・・・・ドル。
とてつもない金額だ。
これは、アクシネットホールディングス(タイトリストやフットジョイなどのブランドホルダー)の2018年度の売上高だ。
キャロウェイの売上高12億4,000万ドルも相当な額だが、それをはるかに上回っている。
2019年2月28日に発表された2018年度決算によると、アクシネットは一部地域では堅実な成長を見せ、その他の地域では優位性を保っている。これは、企業が安定的に成長するためには、新製品の投入が重要であることを示している。
言い換えれば、「タイトリスト」というブランドを持つ会社らしく、アクシネットは小さなノイズを出してマーケットの注意を引きながら2018年を過ごしたといえる。
全体像
16ドルは前年度比4.7%で、金額ベースでは約7,300万ドルの飛躍的な増収だ。CEOのデイビッド・メア氏によると、この成長を牽引したのはボール(特に新商品のAVXやツアーソフト、ベロシティ)や新商品のTSメタルウッド、ボーケイウェッジだったという。
「グローバルゴルフビジネスは、ここ数年で構造的に健全化している。熱心なゴルファーは今でも魅力的なターゲットであり、彼らが性能と品質を重視する中で我々は非常に上手く適応できていると考えている」とメア氏は述べている。
タイトリストのことを言っているのだろう。
アクシネットは、2018年度の純利益を9,990万ドルと報告している。前年度比で120万ドル(1.3%)の増益だ。
ご存じの通り、アクシネットの主力商品はボールだ。2017年度のボール売上高5億1,200万ドルに対し、2018年度は5億2,400万ドル(2.3%増)だった。
アクシネットによると、AVXをはじめとする2018年初めに発表した新商品の売上は、発売2年目であるPro V1の予想された売上減少を埋め合わせた。
ちなみにキャロウェイ(ゴルフボールのシェア第2位)は、2018年度にボールの売上を20%伸ばしたものの、売上額は1億9,600万ドルに留まっている。
新しいTSメタルウッドやボーケイSM7ウェッジは、クラブの売上を全世界で12%と飛躍的に伸ばした(前年度3億9,800万ドル、2018年度は4億4,500万ドル)。
その他のゴルフ用品(バッグ、帽子、旅行用品)の売上は合計1億4,300万ドルで、2.2%増えている。なおアクシネットは、この急伸は売価を上げたことによるもので、総出荷量は減少していることを認めている。
一方、フットジョイの2018年度の売上の伸びはごくわずかで、2017年度の4億3,800万ドルに対して4億4,000万ドルだった。アクシネットは、フットウェアの売上数量は落ちたと述べているものの、具体的な数字は出していない。
アクシネットによれば、200万ドルというごく小幅な伸びは、フットジョイの商品全般の売価を上げたことによるものであり、アパレルの売上もやはり伸びているという。
シューズの販売数量がどれくらい減ったか(一方で業界ではシューズの新商品が大量に発売されている)、また販売数量の落ち込みをカバーするためにいくら値上げする必要があったかについて知りたいところだが、おそらく発表されることはないだろう。
冬である第4四半期にゴルフ用品メーカーの業績が良いことはまれだが、アクシネットの第4四半期は波乱含みだったようだ。
クラブやボール、シューズは減収となり、減収額はタイトリストのゴルフ関連用品(帽子やバッグは休暇用かもしれない)の売上が14%伸びたことで埋め合わされたものの、2017年度の第4四半期に比べて総売上は2.3%減っている。
米国での売上は、2017年度第4四半期比で5%強の減少。米国以外での売上はわずか0.1%の伸び(その大半は韓国での売上が21%と大幅に伸びたことが要因)に留まった。
ここで、2018年度通期の売上の状況を地域別に見てみよう。
米国:8億2,600万ドル、4.6%増収
欧州:2億2,000万ドル、7.1%増収
日本:1億9,900万ドル、1.1%減収
韓国:2億2,100万ドル、10.4%増収
その他の地域:1億6,700万ドル、2.5%増収
EBITDAとその仲間たち
上場企業は、EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortizationの略称。金利・税金の支払い前、および有形・無形資産の償却前の利益)の話題が大好きだ。
EBITDAは、自社で管理できない事柄を除き、企業の健全性を現実的な数値で表すと言われているからだ。
ただし、キャロウェイの会計報告を取り上げた際に我々が言及したように、EBITDAを批判する声もあるし、米国会計基準(GAAP)でも認められていない。
しかしEBITDAは実に面白い数値であり、投資家を小躍りさせたり動揺させたりする。特に純利益の数字が良くない時に、株価に良い影響を与えることもある。
アクシネットの2018年度の調整EBITDAは、約2億3,800万ドルに達し、2017年度比で3.3%増だった。
アクシネットの報告書によると、EBITDAマージン(対売上比)は14.3%だ。この値は、純利益(税引き後)の9,990万ドル(売上高16億2,000万ドルの6%)よりもかなり良く見える。
興味がある人のために記すと、アクシネットが研究開発費として予算計上している5億1,500万ドルは売上高の3%程度で、他メーカーの公表数値と良く似た比率になっている。
販売費および一般管理費(SGA)として計上しているのは6億1,200万ドルで、製造関連以外の業務委託費や人件費、マーケティング費などすべての経費を含んでおり、売上高の37%に相当する。
売上原価(ボールやクラブ、シューズ、シャツ、帽子、バッグといった商品の原材料や製造にかかる直接費用)は7億9,100万ドルで、売上高の47%だ。
キャロウェイとの比較
トップメーカーを自負するキャロウェイだが、売上高では4億ドルと好調だったアクシネットに軍配が上がる。ただし2018年度の会計報告を見ると、2社の経営方針がまったく違うことがわかる。
キャロウェイが、積極的な成長を求めて買収戦略に向かっていることは明らかだ。
2018年度の総売上は19%も伸び、純利益は主にOGIO(オジオ)とトラビスマシューの高収益のおかげで、2017年度の4,100万ドルから2018年度は1億500万ドル弱へと飛躍的に伸びている。
この成長は、ジャック・ウルフスキンが加わる2019年度も続くだろう。
一方、アクシネットは堅実かつ安全な経営を続けている。
タイトリストは、1年おきに新たなクラブとボールを発表することで、経営の好不調の波を乗り越えてきた。昨年発売したアイアンの売上の落ち込みは、新しいメタルウッドの売上が埋め合わせるだろう。
Pro V1が2年目に入って売上が落ちることが予想されるので、アクシネットはAVXやツアーソフト、ベロシティでボールの売上をあるべき方向へと導くだろう。どのメーカーも同様の努力をしているはずだ。
この2大メーカーを比較すると、一方は短期間で積極的に収益性の高い成長をしようとしており、もう一方は収益を守りつつ成長を管理しようとしているのがわかる。
両社のアプローチは、それぞれの企業の姿勢や文化に合っている。
アクシネットは売上高で、キャロウェイにまだ約4億ドル(偶然にも、ジャック・ウルフスキンの売上高とほぼ同額)の差をつけているが、少なくとも2018年度に関しては、キャロウェイのほうが収益性は高かった可能性がある。
キャロウェイの純利益は2018年度に約150%増加したが、これが今後も続くかどうかに注目したい(難しいと思うが)。
両社はクラブやボール、シューズ、アパレルで競い合っている。しかし決算資料をよく見ると、他のことでも競い合っていることがわかる。投資家を巡ってだ。
参考までにキャロウェイの株価(ニューヨーク証券取引所:ELY)を記しておくと、今日(3月6日)の寄り付き値は17ドル52セント。
アクシネットは、25ドル30セントだった。
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