スリクソン「ZX」ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッド
<注目点>
・全ラインナップとも、ボールスピードアップを実現するフェースがたわむ「リバウンドフレーム」が特徴。
・「ZX5」はより寛容性があり打ち出しが高く、「ZX7」は上級者向けでフェード、ドローを打ち分けるための「アジャスタブルウェイト」をソールに装着。
・「ZX」フェアウェイウッドは、直進性を実現する低・前重心の「キャノンソール」が特徴。
・フェアウェイウッドとハイブリッドに搭載した「クラウンステップ」が低重心化を実現。
もし、あなたがスピードを求めているなら、スリクソンの「ZX」ドライバー、そして同シリーズのフェアウェイウッド、ハイブリッドがその願いを満たすベストギアと言える。
全てのスリクソン「ZXウッドラインナップ」は“ボールスピード”に重きを置いているが、その理由は明快。
みんなそれを望んでいるからだ。
「今回のモデルは全てボールスピードにフォーカスしている」と語るのは、スリクソンのエンジニアリングR&Dディレクターのダスティン・ブレッキ氏。「弾道測定器で競合製品のボールスピードと互角に戦えないなら、そもそもお話にもならない」。
ドライバー市場は特に飽和状態の椅子取り合戦になっているが、スリクソンは、今回のスリクソン「ZX」ドライバーがシェアの一角を奪えるほどスピードがあると見込んでいるようだ。
では、そのスリクソン「ZX」ドライバーには興味深いテクノロジーが搭載されているようなので、ちょっと覗いてみよう。
スリクソン 「ZX」ドライバー - シェア奪取を狙う
以前もお伝えしたが、繰り返す価値はあるだろう。現状は、トップは盤石だ。
ドライバー市場ではビッグ5が圧倒しているのはほぼ確かなことで、人気ドライバーの10本中9本がテーラーメイドかキャロウェイ、ピン、タイトリスト、コブラのモデル。他に入り込む余地はほとんどないというわけだ。
スリクソンやその他のメーカーは、その10番目の席を巡ってバトルを繰り広げなくてはならない。そして、「ボールスピード」が“一撃必殺の技”となるわけだ。
「ボールスピードが十分でなければ、フィッティングにまでたどり着けない」と語るのはブレッキ氏。「ボールスピードは、フィッター、ショップ、ツアープレーヤーに受け入れてもらえる。もちろんパフォーマンスの要素となるし、我々が着眼していることでもある」。
スリクソンのドライバーは、我々の「Most Wanted」テストで良いパフォーマンスを発揮している。スリクソン「Z565」と「Z765」は2017年に総合トップと5位を獲得。
「Z585」と「Z785」は2019年と2020年のテストにおいて、平均かそれ以上のパフォーマンスを見せた。つまり悪くはないが、他社がボールスピードを追求する中で、じっとしているという選択肢はないのだ。
「Z85」シリーズのドライバーでは、スピードアップを求め新チタン合金「Ti51AF」による改良された「カップフェース」を採用。そして「ZXシリーズ」も「Ti51AF」を使用しているが、今回は「リバウンドフレーム」と呼ばれる新構造を搭載している。
「リバウンドフレーム」 – スピードのための層
各メーカーは、ボールスピードをアップさせるフェースのたわみを「飛び込み板」のような言葉で表すことを好む。一方「トランポリン」という言葉は、USGAが眉をひそめる可能性があるので基本的に避ける傾向にある。
ところが、スリクソンでは、ひねりを効かせて、「リバウンドフレーム」および、“柔らかい部分”と“硬い部分”を交互に配する構造を完璧に表すために「トランポリン」を例えに使っている。
「柔らかい部分と硬い部分のコンビネーションにより、全体がトランポリンのようになる」とブレッキ氏は説明。「トランポリンを囲う部分は硬い。ここにバネがつながっていて、人はその真ん中でジャンプするが、人の動きはこの黒い部分に制限されてしまう。ところが、もしトランポリンの“脚”もバネなら、人が動ける範囲は真ん中だけではなくトランポリン全体になるはずだ」。
簡単に言うと、「リバウンドフレーム」は脚の代わりにバネがついた「トランポリン」というわけだ。
「TI51AF」フェースは、トランポリンのマットやバネのように“柔らかい部分”。周囲を補強したカップフェース部分は、トランポリンのフレームのように“硬い部分”だ。
しかし、スリクソンはもう一つの“たわみゾーン”を作るために、本質的に別の層として薄く周りを囲む柔軟性のある素材を採用。これを硬くて剛性の強いクラブヘッド後部で補強した。
ブレッキ氏は「やわらかいゾーンと硬いゾーンを組み合わせることで、効果的に“フェースを大きくする”ことが可能になった」とコメント。「たわむエリアが大きくなったが、これをフェースのセンターだけではなく広範囲で実現するようにしている」。
「リバウンドフレーム」は、スリクソン「ZX」ドライバーのみならず「ZX」フェアウェイウッド、ハイブリッドにも搭載されている特徴となっているのだ。
スリクソン「ZX」ドライバー -「ZX5」&「ZX7」
「ZX5」ドライバーは、「ZXドライバーシリーズ」の中で寛容性を重視したタイプ(スリクソンによるとMOI(慣性モーメント)は5,000 g/cm以上)。ピンのドライバーほどではないが、易しいことは確かだ。
一方、「ZX7」ドライバーは方向性を重視する上級者向けだが、二桁台前半のハンディキャッププレーヤーに対しても十分な寛容性もある。また両クラブともに、低・深重心を達成するために、「Z85」シリーズより15%大きいカーボンクラウンを採用しているのが特徴だ。
「ZX5」ドライバーは、「アジャスタブルホーゼル」と(「Z585」とは異なり)重心を低く深く設定する「リアウェイト」が特徴。
また「ZX7」よりもクラウンに丸みがありシャローバックとなっている他、見た目が三角形状をしている。弾道は両モデルの中では高めで、インパクト音もやや独特だ。
一方、「Z785」の後継モデルとなる「ZX7」ドライバーは、やや丸みのあるヘッド形状でクラウンはフラット、ディープバックとなっているのが特徴だ。
またソールのトゥとヒールに「アジャスタブルウェイト」を搭載した、スリクソンでは久々となるドライバーで、4gと8gのウェイトをドローかフェードに合わせてスイッチすることができる。
また追加ウェイトも購入可能。直進性も著しく、落ち着いた打音になっていることも注目点だろう。
スリクソンのアジャスタブルホーゼルの多用性は業界屈指だ。ロフト角は±1度、フェース角は±2度、そしてライ角も±2度まで調整できる。
さらにもう一点、今回スリクソンは、先が「スクエア」になっているトルクレンチではなく業界標準の「星形」をしているトルクレンチに変更している。
大いに喜んで欲しい。
スリクソン「ZX」ドライバーのスペック、価格、販売予定
今回の「ZX」ドライバーは、ともにロフトは9.5度と10.5度がラインナップ(左右モデルあり)。
「ZX5」の純正シャフトは「Project X EvenFlow Riptide」で、R(Project X 5.5)とS(6.0)は53g、X(6.5)は64gがあり、中弾道、中スピンに分類される。
低弾道を求めるなら、「HZRDUS Smoke Black 60」(R、S、X)が選択肢。スイングウェイトはD2だ。
この「HZRDUS Smoke Black 60」は「ZX7」ドライバーの純正シャフトで、フレックスはR、S、X(5.5、6.0、 6.5)、標準のスイングウェイトはD3となっている。
純正グリップはともにゴルフプライドの「ツアーベルベット360」が装着されている。
また両ドライバーともに、スリクソンのカスタムプログラムにより多くのシャフト、グリップの中からオプションを選ぶことが可能だ(追加料金の有無がある)。
価格は「ZX7」が529.99ドルで、「ZX5」が499.99ドル。発売日は1月15日となっている。
スリクソン「ZX」フェアウェイウッド
ほとんどのウッドリリースは、全てドライバーに注目が集まる。フェアウェイウッドとハイブリッドは、添え物程度だ。スリクソンも基本的に同じような戦略を取っているが、抑えておきたい鍵となるテクノロジーもいくつかある。
その一つが「リバウンドフレーム」で、フェアウェイウッドとハイブリッド両方のボールスピードをアップさせる特徴がある。
そしてクリーブランドのウッドをチェックしている方なら、今回の「ZXシリーズ」のフェアウェイウッドとハイブリッドにも似たものがあることが分かるだろう。「ステップクラウン」だ。
「ステップクラウン」はなんとなくクリーブランド「HiBore」のクラウンにのように見えるが、それを採用した理由も同様で、低重心にするため質量をクラブヘッド下部に配置することにある。
また今回のモデルには、1月にリリースされた「XXIO X」でお披露目された「キャノンソール」と呼ばれる機能も搭載されていることが特徴だ。
「フェアウェイウッドでは、スイートスポットが打点かそれより下にある方が良い」とブレッキ氏。「しかし、そのために慣性を犠牲にはしたくない。では、ウェイトはどこに配置するべきか?前側か後ろ側か?突き詰めると、フェアウェイウッドではウェイトパッドを『低・前』に配置した方が良いのだ」。
「キャノンソール」は、まぁなんとなく横から見ると、“小さな大砲”のように見えるウェイトパッドのこと。リバウンドフレームを邪魔することなく、カップフェースとボディの接合部から張り出すようにデザインされている。
このキャノンソールは、『ウェイトを可能な限りフェース近くにする』ことが目的で、同時に低くすることにも役立っている。
またスリクソンでは、「ZX」フェアウィウッドの15度(3番)と13.5度(ストロング3)の重量についても、カーボンクラウンを採用することでコントロールしている。
一方で5番と7番のヘッドはスチールのみ。こうした番手のヘッドは非常に小ぶりなため、カーボンでウェイトセーブするほどでもないのだ。
スリクソンの「Z85」は、2019年の「Most Wanted」で非常に良いパフォーマンスを見せ、総合飛距離でトップとなった。それだけに、「ZXのインパクト性能」がどう向上しているのか、あるいはそもそも向上しているのか興味深い。
ハイブリッドにも「リバウンドフレーム」を搭載
スリクソンが「ZX」ハイブリッドにもさらなる期待を寄せているのは明らかだ。前作の「ZH85」は2019年の「Most Wanted」のハイブリッド部門で万人受けする、まぁそこそこのパフォーマンスを見せていた。
課題だったのはボールスピードであり、「ZX」に「リバウンドフレーム」が採用されたのはそれが理由となっている。
ブレッキ氏によれば「リバウンドフレームはハイブリッド独自のデザインが採用されている」とのこと。「このテクノロジーを小ぶりなヘッドにも簡単に適応させることができた」。
また、同社ではツアープロたちのフィードバックを元に「ZX」ハイブリッドのフェース形状を改良。「小ぶりな形状とフェースアングルを直線的にしたことに加え、ツアーのフィードバックによりトゥ部分を真っ直ぐにしている」という。
スリクソン「ZX」フェアウェイウッドとハイブリッドのスペック、価格、販売予定
スリクソン「ZX」フェアウェイウッドは13.5度のストロング3、15度の#3、18度の#5、21度の#7がラインナップ。#5と#7は左利き用もある。(米国のスペック表では#3と#5のようです)
純正シャフトは、「HZRDUS Smoke Black 60」で硬さはR、S、X(Project Xでは5.5、6.0、6.5)。中弾道・中スピンを求めている方は、「EvenFlow Riptide」が選択肢となる。
スリクソン「ZX」ハイブリッドは、16度の#2から28度の#6まで3度刻みで5つのロフト角がラインナップしている。全スペックで右利き用があり、19度の#3と22度の#4には左利き用もある。
純正シャフトは、HZRDUS Smoke Black 800でEvenFlow RiptideHybrid 85がオプションとして用意。
グリップはゴルフプライドの「ツアーベルベット360」が標準で、ドライバー同様、オプションシャフトとグリップがスリクソンのカスタムプログラムを通じて選択できる(追加料金の場合あり)。
「ZX」のフェアウェイウッドとハイブリッドは1月15日が発売日。価格はフェアウェイウッドが269.99ドル、ハイブリッドは229.99ドルだ。
最後に
冒頭でも述べたように、ドライバー市場は飽和状態だ(さらに言うと、フェアウェイウッドとハイブリッドも同じ)。毎年、売れたドライバーの10本中9本は主要5社のクラブで、業界の他メーカーにとっての厳しい現実として、残りの席を奪うには「ボールスピードで勝る」必要がある。
「新テクノロジーを開発する時は、『我々に違いをもたらすのは何か?』と問いかけるようにしている」と語るのはブレッキ氏。「店舗やフィッティングで試打される際、ボールスピードで勝らなければ、それ以上は期待できない」。
一方で、ボールスピードは違いをもたらすことができる大きな要素だが、ブレッキ氏は些細なことも重要であると考えている。
「トルクレンチだってバカにできない。フィッターが当社の古いレンチを失くしたら、これまでなら試打すらしてくれないかも知れないのだから」。
そしてブレッキ氏によれば、スリクソンはクラブを置いたときのフェース角のような些細なことにも非常に気を遣っているという。
「ZXシリーズ」のターゲットゴルファーは、開いたフェースが好みであるため、「Z85」よりもこの新作はよりオープンに構えられようになっている。「フェースについては、幾つものテストにパスする必要がある」とブレッキ氏は補足。「それらに合格しなければノーチャンス。見た目、音、フェース角が良ければ、ローンチモニターで試され、後はボールスピード次第だ」。
スリクソンの「ZX」ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッドの詳細はスリクソンのウェブサイトでチェックできる。
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