主な注目点:
・ワイドソール、中空ボディに「鍛造のような打感」を有する「中級者向けアイアン」
・スリクソンシリーズ中最も重心が低く、高い打ち出し角と高弾道を実現
・プログレッシブグルーブと、芝との接触を最小限に抑えるスリクソン独自の「V.T.ソール」
・スチールシャフトのセットは1,299.99ドル、カーボンは1,399.99ドル
・3月5日発売開始
新作のスリクソン「ZX4」アイアンには少々驚かされた。二つの意味で。
「ZX5」および「ZX7」アイアンが2年前に出た「Z-85」アイアンの後継として予定通りに進行中であることは知っていたが、「ZX4」とは。サンプルが出てくるまで全く情報が上がってこなかった。
これが一つ目の驚き。では二つ目は何か。
スリクソンは、我々が是非試してみたいと思うものを出してきたのだ。
スリクソン「ZX4」アイアン〜コアまで中空
中空ボディのアイアンに目新しさはない。なんなら鍛造愛のミズノにすら「HMB-20」がある。しかしスリクソン「ZX4」アイアンは、見方によっては、「カテゴリーの枠を超えた製品」かあるいは「変わり種のおもちゃ」のどちらにもなり得る。
ソールの広さは「初級者向け」を主張しているが、トップラインとオフセット具合は「上級者向け飛び系」を示唆している。「ZX4」のロフト構成は確かに「ロフト警察」の連中を苛つかせるだろうが、「中級者向けアイアン」としては順当なものだといえる。しかしまた、比較的短いブレード長と鍛造のような打音と打感は「上級者向け飛び系」を彷彿とさせる。
さてスリクソン、どういうこと?
「中級者向けアイアンというカテゴリーに多様性をもたらそうとしている」と、スリクソンの工学技術ディレクター、ダスティン・ブレッキ氏。「数年前には「355シリーズ」があったが、我々がきちんと後押ししたとはいえない」。
クリーブランドが全製品OEM(製造メーカーが他社ブランドの製品を製造すること)として復活したとき、「中級者向け/初級者向けカテゴリー」で確固たる地位を築いた。
そして、スリクソンは、(2018年の「Most Wanted中級者向けアイアン」の「Z585」のような)「上級者向け風の中級者向けアイアン」と「キャビティバック」や「ブレードタイプ」とのギャップを埋めた。「ZX4」によってスリクソンは正式に「中級者向けカテゴリー」にも位置することになる、と思われる。
「本作とクリーブランドとの最も大きな違いは、アイアンのサイズだ」とブレッキ氏。「上級者向けの短めのブレード長は、クリーブランドのアイアンでは見られない小さめの外観を『ZX4』にもたらす」。
では、結局「ZX4」はどのカテゴリーに分類されるのだろうか。「寛容性が超高い、中空ボディの、鍛造の打感を有する中級者向けかつ上級者向けの飛び系アイアン」とでもいっておこう。
そう。これですっきりするはず。
中空メインフレーム
スリクソン「ZX4」は「ZX5」アイアンとかなりのDNAを共有している。つまりスリクソンの「メインフレームフェース」設計を特徴とする2ピース構造であるということ。
「メインフレーム」については、11月発売の「ZX5」「ZX7」の記事で詳しく説明した通り。しかし、要約版では、「メインフレーム」は、スリクソンの最新のAIソフトウェアを使用して設計された「可変厚のフェース」だとしている。チャンネル、キャビティ、溝の独自パターンがフェース背面にミルド加工されているのだ。
その結果、フェースのより広いエリアで最適化されたボール初速が得られるようになった。
フェースの素材自体は「HT1770スチール」(HTはHigh Tensil/高張力の略)で、ヘッドは「431ステンレススチール」。どちらも従来の意味で「鍛造」とはいえないが、この組み合わせにより、少しソフトでフワっとした鍛造の打感が得られる。
前述の通り、「ZX4」のソール幅はかなり初心者向けっぽい。アドレス時にそう見えないようスリクソンはうまく隠しているが、それでも「ZX4」が幅広であることは否定できない。
「特にロングアイアンは意図的に作られている」とブレッキ氏。「ワイドソールとショートホーゼルを組み合わせた中空ボディに加え、ミドルアイアンとロングアイアンに搭載されたタングステンウエイトにより、市場で最も低重心になってる」。
「ZX4」の打音がスリクソンのユーティリティーアイアンみたいな酷い音だと思っているなら、それは的外れではないものの、「U-85」まで世代を戻す必要がある。
「これらのユーティリティーアイアンは、新世代の『ZX』ユーティリティーアイアンに比べてソール幅がかなり広かった」とブレッキ氏。「『U-85』の性能と技術の多くは、メインフレームといくつかの新しいものと共に『ZX4』セット全体に存在している」。
それはつまり、スリクソンの特徴である「V.T.ソール」と、新しい「プログレッシブグルーブ」のことだ。
ソールにグルーブ
スリクソン「ZX4」では、ショートアイアンになるにつれ、ヘッドの空洞は明らかに少なくなる。ブレードも少し短く、重くなる。そして、ロフトが40度を超えると、メインフレームのホットフェースの利点の多くが失われ始める。インパクト時の打感は“鈍い”というよりも、“ぼやけた”ような感じだ。
「番手ごとを考えた時に我々が重視するのは一貫性で、プレイヤーが打ち出し角やスピン量に何を求めているのかに焦点を当てている」とブレッキ氏。「そこで番手別溝設計という考えになった」。
「ZX5」と「ZX7」で見たように、番手別溝設計とはつまり「一貫性」のことだ。「ZX4」のロングアイアンとミドルアイアンは、幅広で浅い溝を特徴としている。8番アイアンからピッチングウェッジでは、溝がより狭く深くなる。ピッチング以下のウェッジでは、アプローチショットで一貫性のあるスピン量をもたらすために、より深い溝となっている。
「V.T.ソール」を採用したスリクソンのアイアンは芝との接触を最小限に抑えることで知られている。ソールのV字型により、少しダフって入ってもクラブヘッドが芝の上を滑る。この「V.T.ソール」は「ZX4」に搭載されているが、すでにワイドソールを採用していることを考えると、“やり過ぎ”のように思えるかもしれない。
「我々のターゲットはどちらかというと“払い打ちタイプ”のプレーヤー」とブレッキ氏。「そうしたプレーヤーは、アタックアングルがスティープ(鋭角)ではないのでボール手前をダフる傾向がある。となると、低重心で幅広の『V.T.ソール』が役立つ」。
ロフト警報
そしてもちろん、スリクソン「ZX4」アイアンはストロングロフト設計だ。異様にストロングというわけではないが、ストロングには変わりない。
「そこは微妙なところで」とブレッキ氏。「我々は、全ロフトで飛距離とキャリーを最適化するために、スイートスポットや重心位置、全体的な性能を設計しようとしている。しかし、フィッティング環境においては、良い性能を発揮して選ばれなければならないという不幸な現実がある」。
メーカーは皆フィッティングで飛ばないクラブとは呼ばれたくない。だからこそ、「ZX4」の28.5度のクラブは6番アイアンではなく7番アイアンなのだ。「ZX4」の標準セットは4番アイアン(21度)からアプローチウェッジ(49度)となっている。
もしスリクソンがこのセットを4番アイアン〜アプローチウェッジではなく、3番アイアン〜ピッチングウェッジと表示したら、「ロフト警察」の連中は同じように不機嫌になるのだろうか。
「これは意味論であり、ただのくだらないゲームだ」とブレッキ氏。「しかし、性能面においては、もし我々が33度の8番アイアンを7番アイアンと表示し、誰かが自分の33度の7番アイアンと比較した場合、我々の製品のほうが高い弾道で打ち出し角も高くなるだろう。しかし、両方のアイアンで同じスイングをして、自分のベストショットを比較してみると、スピン量、コントロール、飛距離が非常に似通っていることがわかるはずだ」。
直訳すると、150ヤードのショットを打つ必要があり、どのクラブならその距離を飛ばせるか知っているなら、ソールに刻まれた数字に何の意味があるのかということだ。
「ドライバーはキャディバッグの中で唯一、できるだけ遠くに飛ばそうとするクラブだ」とブレッキ氏。「本当に問われるべきは『特定の距離を打つのにどのアイアンが必要なのかということ。最も一貫性とコントロール性を与えてくれるものはどれか』ということだ。それはスピン量、打ち出し角、芝との接触度合いに表れる。アイアンに刻まれている数字は重要ではない。ただの数字でしかないのだ」。
スリクソン「ZX4」のスペック、価格と選択肢。そして結論
結局のところ、スリクソン「ZX4」がどのカテゴリーに属しているのかは未だ定かではない。中級者向け?初級者向け?上級者向け飛び系?
以上のうち全て?
ほどよいオフセット、トップライン、ブレード長を備えた、ルックスの良いアイアンと言った方がいいかもしれない。鍛造ではないにもかかわらず、スリクソンは中空ボディのアイアンでは通常得られない「鍛造のような打感」を与えることに成功した。
真冬のレンジで何度かおこなった試打で、「ZX4」によるボールはいとも簡単に飛び出し、高い弾道で飛び、ロフトのおかげで恐ろしく飛距離が出ることが証明された。
「ZXシリーズ」の中で最も幅広のソールを持つスリクソン「ZX4」だが、今までのモデルと並んでも違和感はない。「ZX4」のブレード長は「ZX5」よりも1mm、「ZX7」と比べると2mmから2mm半長いだけだ。トップラインは1mm厚くなっただけで、オフセットは1mmほどしか深くなっていない。
スリクソンは、日本シャフトの「N.S.Pro 950GH neo」を純正シャフトとして選択した。日本シャフトは「950GH neo」を中弾道と表現しており、ストロングロフトのアイアンのために特別に設計されている。
「950GH neo」は、日本シャフトが言うところの『フローキックポイント』によって、先端部にしなり戻りをもたらし、スピン量を最適化している。
また「950GH neo」は軽量シャフトだ。Rシャフトは94.5グラム、Sシャフトは98グラム。追加料金なしで、カタログ内のスチールシャフトは全て選択できる。
純正カーボンシャフトはUSTマミヤの「Recoil 760」または「780」。純正グリップはゴルフプライドの「ツアーベルベット360」となっている。
基本セット(4番〜アプローチウェッジ)は右利き用のみ。価格はスチールシャフトのセットが1,299.99ドル、カーボンは1,399.99ドル。アプローチウェッジは右利き用のみあるので、左利き用の標準セットは4番〜ピッチングウェッジとなる。スチールシャフトのセットは1,137.99ドル、カーボンは1,224.99ドルだ。
スリクソン「ZX4」アイアンは3月5日発売。プレオーダーは2月22日より開始する。
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