「ロングアイアン」と聞くと、ある種の嫌悪感を抱く人も多いだろう。リー・ トレビノの「神でさえ1番アイアンを打つことは不可能だ」という有名な喩えもある。

2番アイアンが必要なのは、シャツにスポンサーのロゴをたくさん付けたゴルファー、つまりプロだけだ。3番アイアンも同じだ。ところが、代わりにユーティリティーを使うことは、もはや常識になっている。

なぜ多くのゴルファーのバッグに、4番アイアンが入っているのだろう? そもそも、「使う意味」はあるのだろうか?

 

Arccosが持つ大量のデータを利用すれば、その答えを探ることができる。160万ラウンド、1億を超えるショットを収集・分析し、各ハンディキャップレベルにおける4番ユーティリティーと4番アイアンのパフォーマンスの違いを比較する。今回の分析では、ティーショットの飛距離、フェアウェイキープ率、パーオン率、スコアに着目した。

Arccosはグリップに装備されたセンサーで、ラウンド中の全データを収集する。全ゴルファーのデータは自動的に記録され、分析される。さらに、「AI キャディー」が全ショットについて的確なアドバイスをユーザーに示し、高度な分析を駆使して効果的な練習方法まで教えてくれる。

 

収集した膨大なデータから、以下の3つの傾向が読み取れる。

・アプローチショットでは、4番ユーティリティーの方が良い結果が出る

・ティーショットでは、全体的に4番アイアンの方がフェアウェイキープ率が高い

・ハンディキャップ0~5のグループでは、4番アイアンの方が良い結果が出る(その他のハンディキャップグループでは4番ユーティリティーの方が飛び、フェアウェイキープ率も高い)

 

※以下のグラフはすべて、青色の棒グラフが4番ユーティリティー、緑色が4番アイアンを示している。

 

飛距離

ティーショット

ティーショットで、4番アイアンと4番ユーティリティーの飛距離の差が顕著だったのは、ハンディキャップが一番高いグループと低いグループであった。

ハンディキャップ0~5のグループでは4ヤード、ハンディキャップが20以上のグループでは2ヤード、4番アイアンのほうが飛んだ。また、アプローチショットでは飛距離の差がより顕著だった。

・ティーショットとアプローチショットを両クラブで比較した場合、ほとんどのハンディキャップグループでアプローチショットの方が飛距離が出た。

・ハンディキャップ0-5のグループは例外で、両クラブ共にアプローチショットの飛距離が落ち、4番アイアンでは8ヤード短い結果となった。

アプローチショット

・アプローチショットでは、ほとんどのグループで4番ユーティリティーの方が飛んだ。ハンディキャップ11~15のグループでは、飛距離差は約5ヤードもあった。ハンディキャップ20以上のグループでは、4番アイアンの方が2ヤードほど飛んだ。

この数字が少ないと感じるかもしれないが、Arccos ドライビングディスタンスレポートによると、全ユーザーの2017年のドライバーの平均飛距離は220ヤードだ。

 

正確さ

最近のユーティリティーは飛距離が出るだけでなく、スイングのミスをうまくカバーしながら(これはロングアイアンにはできない)フェアウェイにボールを飛ばしてくれる。

だが、ちょっと待ってほしい。少なくともティーショットにおいては、データはまったく逆の事実を示しているのだ。

フェアウェイキープ率

・ほとんどのハンディキャップグループが両クラブでほぼ同じフェアウェイキープ率を示した。はっきりとした差が出たのがハンディキャップ0~5のグループで、4番アイアンで46.2%、4番ユーティリティーで43.5%だった。

・アプローチショット(以下のグラフ参照)では、違う結果が見られた。どのグループにおいても4番ハイブリッドが優勢だった。

パーオン率

・興味深いことに、PGA ツアープロとシングルプレーヤーとの間には大きな差が見られる。ハンディキャップ0~5のグループが、約165ヤードから4番ユーティリティーで打った時の平均パーオン率は22.09%である。プロと比較するために200ヤード以上のロングアイアンでのアプローチのパーオン率を見ると、PGA ツアープロの平均は42.35%とはるかに上回る。1位はヘンリック・ステンソンで、200ヤード以上の距離からなんと60.81%の確率でグリーンに乗せる。

・もうひとつ驚くべき発見は、PGA ツアープロの平均フェアウェイキープ率は、全てのクラブで61%を超えている(2017年データ)。アマチュアのハンディキャップ0~5のグループが4番アイアンを打った時のフェアウェイ率に比べて、14.81%も多い。

 

ティーショットで使用した時の平均スコア

どのクラブがベストか知る一番の方法は、実際にプレーで使った時の平均スコアを見ることだ。この分析は特定のホールに限らず、パー3、パー4、パー5のすべてを対象とする。

とは言え、結果はシンプルだった。

平均スコア

・すべてのハンディキャップグループにおいて、4番アイアンよりも4番ユーティリティーに良いスコアが見られた。ハンディキャップ11~15のグループではその差が最も大きく、4.46対4.64だった。さほど大きな差に感じられないかもしれないが、18ホールで計算すると大きな差になる。

・ハンディキャップ20以上のグループでは、4番ユーティリティーの方が約0.2ストロークも少なかった。

この時代、クラブにはバッグに入れるに値する「価値」が求められる。Arccosのユーザーなら、その価値が平均以下のクラブを見つけ出すのは簡単だ。

アプリや「プレイヤーズダッシュボード」を利用すれば、すべてのクラブのパフォーマンスを詳しく見ることができる。自分のセッティングに弱点があるなら分析し、修正してみるといい。

 

次回は、ウッド、ユーティリティー、アイアンのすべてをテストする予定だ。