テーラーメイドが「Nassau Golf(ナッソーゴルフ)」社を買収した。

これは見出しとなる部分。売却条件は公表されておらず、こちらは補足に過ぎない。

興味深いことは、これらの間にあるようだ。

恐らく、そこまで意識していなくてもみなさんにとって「Nassau Golf」は近しい存在だ。韓国を本拠とするこのゴルフボールメーカーは、長年に渡りテーラーメイドのボールを製造してきた。

(カバーが破れない)初代「Kirkland Signature(カークランドシグネチャー)」4ピースボール、そして最も有名なところではディーン・スネルの「MTB Black」と「MTB X」も製造している。


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テーラーメイドの第3ボール工場

「Nassau」を手にしたことで、テーラーメイドが管理する工場は3つとなった。同社はサウスカロライナ州に「TP5」シリーズのカバーを装着している工場を保有。2019年に台湾の「Fourmost(フォーモスト)」と提携したばかりだが、テーラーメイドは、そのお陰でボールの製造工程をよりコントロールできるようになっている。


15年に及ぶパートナーシップ

「Nassau」はテーラーメイドにとって新参者ではない。両者は15年以上に渡り密接に連携してきたが、同社のボール事業が成長(ゴルフデータテック社によると過去5年間で176%増)してきたことで、需要に応えることが困難になってきているのだ。

テーラーメイドのデイビッド・アベレスCEOによれば、「Nassau」社の買収は、同社の「ゴルフボールサプライチェーンにおける垂直統合を実現するための戦略的プラン」の一環だという。

最終的に「Nassau」社を傘下に収めることで、製造工程の全てを保有することになる。これにより、テーラーメイドはタイトリスト、ブリヂストン、キャロウェイ、スリクソンと大差ない工場体制を構築したと言えるのだ。

要するに、「Nassau」買収はテーラーメイドに「生産能力」と「生産コントロールの向上」をもたらすということ。

競合は戦々恐々だろう。



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上述した通り、テーラーメイドはボール事業が成長していることで、さらなる「生産能力」が必要とされてきた。そして、同社ボールの生産が多くなることで、同じ工場でボールを製造する小規模直販ブランドの生産力が圧迫されることになった。

お気に入りの「直販系ボール」がいつまでたっても在庫切れなのは、テーラーメイドが覇権を握るアジアの大手工場内部にある、需要、供給、上下関係を考えてみると良いだろう。

これこそが、「Vice golf(ヴァイス ゴルフ)」を初めとするメーカーが、小さな工場からボールを調達し始めている理由なのだ。

「Nassau」社の買収によりテーラーメイドの製造能力が向上することは間違いないが、「Snell Golf(スネルゴルフ)」を代表とする「Nassau」に依存している小規模ブランドがどうなるのかは未知数。

テーラーメイドが、「Nassau」のサプライヤーとしての役割を継続し、競合の小規模メーカーに、適切なボール生産量を製造できる十分な製造ラインを提供するのか、あるいは自社ボールだけに集中し、小規模ブランドをどこか他の工場に追いやってしまうのか?

この答えを出すのはまだ早急だが、テーラーメイドの「Nassau Golf」買収が、ゴルフボール業界に大きなインパクトを与える可能性があることは言うまでもない。