近年の用品契約では、契約メーカーのクラブを11本か13本、あるいは14本全て使用しなければならない。
プロはこうした縛りがあることで、好みのボーケイ・ウェッジやジュニアの頃から親しんだクリーブランドのウェッジを使う機会が少なくなっている。
そして多くの場合、プロはスポンサーが提供するクラブでプレーする必要があるが、幸いなことに多くのメーカーは、契約するプロのために豊富な種類のウェッジを用意している。
多くの契約プロが使用しているテーラーメイドのオリジナル・ミルドグラインド(MG)・ウェッジは、その一例。タイガー・ウッズですら、このシリーズを使っているのだ。
そしてMGは、小売では目立った存在ではないにも関わらず、ツアーで成功を収めているウェッジだが、他のクラブと同じように後継モデルに取って代わられようとしている。
錆びることが前提
錆のでるウェッジは、随分前からツアーで人気を誇っている。
クリーブランドのオリジナルの588 RTGを覚えているだろうか。錆びつかせる仕上げによりまぶしさを完全に抑え、これが多くのプレーヤーに好評を博した。
またこの仕上げにより、テーラーメイドは、錆がスピンを増やす一役となると考えるブランドの一つとして知られるようにもなった。
我々には受け入れられない話だが、数ラウンドで錆びるウェッジを好む人がいるということはよく理解できる。
そして、これこそがMG2ウェッジを他と差別化する一番のポイントなのだ。
新MG2ウェッジは、多くの「錆びるようにデザインされた」ウェッジと異なり、錆びるのはフェースのスコアラインの間だけ。
そして、今回のウェッジでは、店で陳列されている時に錆びないようにナイキのエンゲージシリーズに似た手法が施されている。
エンゲージウェッジでは色分けされたワックスのような素材が採用されていたが、フェースを覆うステッカーが使用され新品の状態をキープ。
購入前に錆びついてしまうウェッジを好まないゴルファーに向けた良い施策と言える。
スピンについても語らないわけにはいかない。
特徴はテーラーメイド独自の新ZTP-RAW GROOVEで、溝がより鋭く、より深くなっており、溝と溝の間隔も狭く、溝の半径もシャープになっている。
これにより摩耗は早くなるが、溝と溝の間にレーザーエッジングも施し更にスピンがかかるようになった。フェースがノーメッキということも消耗が早くなる要因となるだろう。
また、「Thick-Thin」ヘッドデザインを新採用。ウッドやアイアンのデザインと同様、フェースが1.4mm厚くなっておりソリッドな打感を実現している。
そしてバックキャビティ部分にTPUインサートを採用したことで重量は変わることなく、不要な振動を抑えることにより打感が向上した。
それ以外については前作をほぼ継承している。CNCミーリングのソールで均一性もキープ。
手作業による研磨を好む方がいるのは分かるが、ミーリングの方が統一感のあるソールのパフォーマンスが発揮できるだろう。
バウンスタイプが少なくなったことは、あまりアピールしない方が良いだろう。新作ではスタンダードバウンスとローバウンスがラインナップ。
ワイドソールのハイバウンスモデルがなくなったことにはビックリした。
スタンダードバウンスは様々なコンディションで効果を発揮し、ローバウンスモデルは払い打ちをしたり、フェースを開いたり、硬い地面でのショットに向いている。
今回は仕方がないが、多くのゴルファーはバウンスがあるウェッジが必要であることは承知の事実であり、その点ではMG2のラインナップは不十分と言えるだろう。
コスト面でワイドソールのハイバウンスモデルをやめる要因となった可能性はあるが、(この後に紹介する)ビッグフットがあることで、ハイバウンスが不要になった可能性もあるはずだ。
MGウェッジの仕上げはマットブラックとサテンクロムの2種類。
ロフトは48度から60度までとなっており、標準シャフトとしてトゥルーテンパーのダイナミックゴールドS200が装着されている。グリップはラムキンのジェネシスクロスラインのコード入りだ。
ハイ・トゥ・ビッグフット・ウェッジ
今回リリースしたもう一つのウェッジのネーミングは冗談のように聞こえるかも知れないが、これは自分の足で躓いて転ぶ時に使うテーラーメイドらしい言い回しなのだろう。
しかし、『ビッグフット』なんて正気なのだろうか?何れにしても今回のウェッジはビッグフットを命名された。
ビッグフット・ウェッジでも大きな足のウェッジでも、「足」と「ウェッジ」は同一文章では語れないし、ナイキのサスクワッチの先例に倣ったというわけでもないだろう。
ともかく、おかしなネーミングは置いておいて、ハイ・トゥシリーズの追加となる今回のビッグフット・ウェッジはフェースが5mm高くなったことで重心位置が上がり、低打ち出しとスピン量アップが実現。
ソールは6mm幅広になり、バウンス角15度のフラットなCグラインドソール形状とチャックリが防止できるようなリーディングエッジが採用されている。
また寛容性のアップに重点を置き、バンカーからの脱出も簡単。深いCGポケットにより重量をヘッドの別の箇所に配分することが可能となり、ソールもさらに幅広になった。
フェース全体に溝を配したことで易しさも極限まで向上しているのだ。
テーラーメイドは、基本的に(恐らく)ゴルファーに受け入れてもらえるエイリアンのサンドウェッジ(Ci3ウェッジでもシュアアウトでもOK)を発表したと言えるし、それは悪いことではない。
これがゴルファーにとってメリットがあるなら、支持も受けるはずだ。
一方で、この他のハイ・トゥウェッジや寛容性重視のウェッジと同様、この手のデザインはバンカーからの脱出に特化しているものの、他の状況では使い勝手がよろしくないものがほとんどだ。とある目的に対しては機能的なのは間違いないが、多目的かと言えばそうでもないだろう。
このような特化したウェッジを使うなら1本だけにすべきであり、フルショットで使うことがないロフト角のスペックを選ぶことをお勧めする。
ビッグフット・ハイ・トゥ・ウェッジは58度と60度がラインナップされており、シャフトはKBSのスチールがHi-Rev 2.0、カーボンはリコイルウェッジ Smacwrapが装着可能。グリップはゴルフプライドのツアーベルベット(バーガンディ)が採用されている。
メーカー希望小売価格はMG2、ビッグフット・ハイ・トゥともに169.99ドル。
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