約3年前、5ガロンの巨大マヨネーズを売っていた会社が4ピースキャストウレタンゴルフボールの販売を開始したのを覚えているだろうか?
ご存じの通り、「Costco(コストコ)」の話だ。そして今状況は急激に変化している。
以前MyGolfSpyが行った性能テストでは、コストコのブランドであるカークランドシグネチャーのツアーパフォーマンスボールが他のメジャーブランドに負けず劣らず好成績を残した。
価格重視のゴルファーには残念だったが、それから間もなく、このボールの在庫は底を尽きた。
何度か在庫が追加されたものの、Kirkland(カークランド)ロゴボールは瞬時に完売し幻のボールとなった。
それから3年経った2019年は、2度目の奇跡を起こそうと、4ピースウレタンボール「カークランドシグネチャー・パフォーマンスワン」でカムバックを果たした。
ボールの発売を皮切りに、チームコストコはゴルフ用品の販売に力を入れようとしている。カークランドシグネチャーパターとウェッジも、まもなく発売される予定だ。
しかし、この2度目のカークランドシグネチャー・パフォーマンスワンボールには、カバー品質に関する重大な問題が生じた。
コストコは新たに自社工場を構え、製造方法を一新したが、カバーに大きな問題を抱えることになった。結果的に、コストコ(正確には自社工場)の対応やカスタマーサービスは会社の評判を高めることになり、ゴルファーの信頼を取り戻すのはさほど難しくなさそうだ。
価格も間違いなく説得材料にはなるが、性能はさらに重要だ。
そこで、MyGolfSpyはコストコ新作ボールの性能(結果的に、回収・交換されるとしても)の調査を行った。
テストに関して
このテストの目的は、コストコの新作ボールカークランドシグネチャー・パフォーマンスワンの性能と特徴を調べることだ。
比較のため、前作4ピースウレタンボールのカークランドシグネチャー・ツアーパフォーマンスと、タイトリスト Pro V1(4ピース)をテストした。
テスト方法
・テスターに、カークランドシグネチャー・パフォーマンスワン (2019)・カークランドシグネチャー・ツアーパフォーマンス (2016)・タイトリスト Pro V1 (2019)を打ってもらう。
・ショットに使用したのは、ミズノT7 56度SW、テーラーメイド PSI Forged 6番アイアン、ピン G400 Maxドライバー。
・テストに参加したゴルファーのハンディキャップ1~15、ヘッドスピードは37~51 m/s。
・各クラブにつき、それぞれのテスターに10-12球の良いショットを打ってもらう(ボールとクラブはローテーションさせる)。
・完全なミスショットや、ターゲットラインから50ヤード以上外したボールは異常値を分析する前に省き、ショット数には含めなかった。
・残りの異常値は中央絶対値で明確化し、平均値を算出する前に除外する。
・ボールデータはトラックマン4ゴルフレーダーを使って記録した。
・テストは、Andrew Brewerの協力の元、Bayville Golf Clubで行った。
結果
ドライバーでのテスト結果
モデル名 | ボール スピード (m/s) | 打ち出し 角度 (度) | スピン (RPM) | キャリー (ヤード) | トータル (ヤード) | 高さ (フィート) | 落下角度 (度) | 中央線か らの距離 (ヤード) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Kirkland Signature Performance One(’19) | 66.7 | 12.41 | 3,090 | 238.71 | 258.67 | 32.37 | 39.31 | 15.82 |
Kirkland Signature Tour Performance(’16) | 66.3 | 12.60 | 2,682 | 239.29 | 262.86 | 29.84 | 36.55 | 17.59 |
Titleist Pro V1 | 68.0 | 12.08 | 2,751 | 245.57 | 268.53 | 31.15 | 37.14 | 16.16 |
アイアンでのテスト結果
モデル名 | ボール スピード (m/s) | 打ち出し 角度 (度) | スピン (RPM) | キャリー (ヤード) | トータル (ヤード) | 高さ (フィート) | 落下角度 (度) | 中央線か らの距離 (ヤード) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Kirkland Signature Performance One(’19) | 52.3 | 15.11 | 6,345 | 160.06 | 169.19 | 26.44 | 43.23 | 9.34 |
Kirkland Signature Tour Performance(’16) | 51.9 | 16.13 | 5,745 | 160.25 | 170.53 | 27.51 | 43.37 | 11.43 |
Titleist Pro V1 | 51.8 | 16.01 | 5,937 | 159.87 | 169.44 | 27.08 | 43.61 | 11.26 |
ウェッジ(40ヤード)でのテスト結果
モデル名 | ボール スピード (m/s) | 打ち出し 角度 (度) | スピン (RPM) | キャリー (ヤード) | トータル (ヤード) | 高さ (フィート) | 落下角度 (度) | 中央線か らの距離 (ヤード) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Kirkland Signature Performance One(’19) | 21.3 | 31.18 | 6,112 | 41.99 | 48.59 | 7.54 | 37.99 | 3.15 |
Kirkland Signature Tour Performance(’16) | 21.0 | 32.70 | 5,471 | 41.49 | 48.38 | 7.93 | 39.48 | 3.44 |
Titleist Pro V1 | 21.3 | 30.85 | 5,937 | 41.67 | 48.76 | 7.46 | 37.52 | 3.63 |
ウェッジ(フルショット)でのテスト結果
モデル名 | ボール スピード (m/s) | 打ち出し 角度 (度) | スピン (RPM) | キャリー (ヤード) | トータル (ヤード) | 高さ (フィート) | 落下角度 (度) | 中央線か らの距離 (ヤード) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Kirkland Signature Performance One(’19) | 33.9 | 30.47 | 8,362 | 88.84 | 92.03 | 20.49 | 47.15 | 6.78 |
Kirkland Signature Tour Performance(’16) | 33.5 | 33.23 | 7,331 | 87.61 | 91.09 | 21.94 | 49.61 | 7.20 |
Titleist Pro V1 | 34.5 | 28.98 | 8,596 | 90.86 | 94.56 | 19.73 | 45.83 | 6.41 |
考察
元祖シグネチャー・ツアーパフォーマンスボールとは異なるため、当然のごとく性能においても差異が見られた。
考察は以下のとおりだ。
・ドライバーでテストした場合、新作パフォーマンスワンのボールスピードは速かったが、スピン量に関してはツアーパフォーマンスより高いという結果となった。パフォーマンスワンは前作よりも優れているが、人気ブランドPro V1xと比較するとボールスピードは遅い。通常、スピン量が高すぎると飛距離のロスにつながる。
・同様のことが6番アイアンにも見られ、ボールスピードは3モデルのボールの中でも優れているが、スピン量は500rpmほど高くその差は大きい。
・56度SWでのフルショットでは、どのボールも似たような性能を示したが、Pro V1は両カークランドボールよりわずかに低い打ち出しが特徴であった。
・同じ56度SWで40ヤードのピッチショットを打ってもらったところ、その性能差はわずかだった。Pro V1xの打ち出しは最も低く、新パフォーマンスワンが最も高かった。
データ以外の考察
現代の技術において、直販ゴルフボールにメジャーブランドレベルの性能を求めるのは決して無謀なことではない。しかし、価格以外にも明らかな違いはいくつかある。
・カークランドボールが出した異常値の数は、明らかにPro V1xより多かったことから、各ボールの品質にばらつきがあり安定していないことが分かる。
・タイトリストやブリヂストンのような会社は、毎年の開発費用に数億円という予算をかけるが、USGAルールの元で改良するには限界がある。しかし、自社工場を持ち、一貫した製造・販売プロセスを行うメーカーの品質コントロールや最終商品の品質は非常に優れている。同じ箱に入っている1ダースのボールはすべて同じだろうか?1つ1つの品質の安定という観点は見逃されがちだが、非常に重要なポイントだ。
・パフォーマンスワンに関しては、重大なカバー破損が明らかになりすべてリコールという事態になった。今回のテストでも、実際他のボールと比べて耐久性に欠けていることは明らかだった。
・一般のゴルファーにはさほど重要ではないが、コストコは製造途中に委託工場とカバー製造技術を変えている(キャストからTPUに変更)。新たなカバー製造機に伴い、工場を変えたことが今回のカバー破損を招いたことは確かだ。
・どれくらい急速にこの問題を解決できるかは、改良された後のボール性能を確認することで明らかになるだろう。
結論
データから、パフォーマンスワンボールは、元祖ツアーパフォーマンスボールより「低い打ち出し」と「高スピン」が特徴だ。
テストで明らかになった平均ドライバースピン量3,000rpm以上というのは特に気になる。
ウェッジでは最大スピン量を求めるが、スピンが高ければ良いものではない。パフォーマンスワンはその限界を超えていると、私達は考える。
スピン量が平均以上であったとしても、パフォーマンスワンが完全に性能の劣ったボールではないことは強調しておこう。
高スピンだが、恐ろしいほどのスピン量でもない。フィッティングの観点からいうと、ツアーパフォーマンスより特定ターゲットに合うボールだ。
しかし、1ダース15ドルという業界最低価格を支持する人達が”フィッティングの観点”を優先するだろうか。おそらく価格メインだろう。
性能に問題がなくても、最初の出荷で品質に欠陥があったことは見過ごしてはいけない。多くの写真が物語っているように、カバーに起こった破損は容認できないものだ。
結論として、メジャーブランドと同じ性能のボールを製造することは可能だが、一貫した品質を保ち続けることは非常に難しく、それこそがブランドを差別化する要素になる。
今回のカークランド パフォーマンスワンボールはまさにいい例だ。
おそらく次の出荷では改良されていることが期待されるが、「品質コントロール」の代償は非常に大きく、ボールの価格をしのぐほどかもしれない。
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