・タイトリストが新作フェアウェイウッド「TSR2」「TSR3」「TSR2+」を発表
・いずれも前作の「TSi」より低・深重心設計
・小売価格は399ドル、9月23日発売(USの場合)※日本発売は9月30日
ゴルフクラブの場合、主力ドライバーの成功を受けて、そのテクノロジーがフェアウェイウッドにも応用されるのは珍しいことじゃない。
でも、タイトリスト「TSR」フェアウェイウッドは独自の設計を採用している。
これは、タイトリストが「TSR」を前世代の「TSi」や「TS」シリーズのフェアウェイウッドとは一線を画すものと位置づけていることの証だ。
経験豊富なフィッターに尋ねると、その多くが口を揃えて、フィッティングが一番難しいクラブは3番ウッドだと答えるだろう。3番ウッドに限らずフェアウェイウッド全般に言えることかもしれない。
理由は、フェアウェイウッドがパターを除いて最も個人の好みに左右されるクラブだから。そして、ゴルフクラブの新モデルが必ずしも優れているとは限らず、消費者が求めているものとも限らないからだ。
これは、次世代製品を開発するエンジニアにとっては頭痛の種。また、ツアープロの意見と一般ゴルファーの要望をある程度融合させる必要もある。
ジャスティン・トーマスやジョーダン・スピースのようなタイトリストスタッフプロにとって有益で、かつ同時に、Aさん、Bさんのような週末の戦士たちにも同様の利益をもたらすものとは何なのか?ってことだ。
タイトリスト「TSR」フェアウェイウッドシリーズについて
タイトリストは、「TSR」ドライバー同様、フェアウェイウッドでも「TSR3」「TSR2」「TSR2+」という3モデルを発売する。
「TSR2」と「TSR3」は、それぞれ同じモデル名のドライバーとターゲット層が一緒。新しいモデルの「TSR2+」はヘッド体積190ccで3モデルの中で最も大きいのが特徴だ。
「ビジュアルテクノロジー」という言葉をよく耳にする。各ブランドは多額に費やした研究開発予算の“成果”を見せたがるものだし、消費者は見て、感じて、触れられるものを買う傾向がある。
例えばこれを“目に見えるテクノロジー”としよう。これはまた、マーケティング部門にとっても、派手なグラフィックや誇大広告気味の動画、巧妙なスローガンを構築するための明確な材料にもなる。
「TSR」シリーズは、その手のアプローチとは対照的で、言わば“秘められたテクノロジー”って感じだ。
「TSi」から「TSR」への改良は大きいが、大型小売店の陳列棚を隅から隅まで見たとしても、このような“秘められたテクノロジー”を目にすることはないはず。
実際、最も重要な変更点である「重心位置」は目に見えることはない。店頭ではもちろん、アドレスしたって見えやしない。ちなみに重心位置は、「TSi」に比べて低重心でフェースの中心寄りに位置している。
なぜこれが重要なのか。同じ条件下なら、重心位置が低いほど弾道は高くなる。タイトリストによると、「TSR」の各モデルの重心位置は中心軸の近くにあり、同等の「TSi」モデルよりもヘッドのやや後方に位置する。その結果、スピン量が若干減少し、寛容性がわずかながら向上する。
つまりこれは、重心位置の移動は重量の再配置によるもの。タイトリストは『ARC(アクティブリコイルチャンネル)』を捨て、「アッパーホーゼル」を取り除き、「フラットソールウエイト」をヘッドの最下部に移動させたということだ。
「TSR」では、フェース全面のスコアラインも復活している。タイトリストによると、フェース全面のスコアラインと単色のフェースにより、ヘッドがクローズやアップライトに見えないようにしているとのこと。一般的に、上級者はアドレス時にニュートラルでオープンな見え方を好むからだ。
タイトリスト「TRS2」フェアウェイウッド
3モデルのうち、最も前作と使い勝手が近いのは「TSR2」だろう(前作は「TSi2」)。そして、「TSR3」や「TSR2+」よりも断然多くのゴルファーにフィットしそうだ。「TSR」モデルの中で最も低い重心位置を特徴としており、タイトリスト史上最も重心位置の低いフェアウェイウッドでもある。
多くの場合、低・深重心位置だと打ち出し角が高くなるが、同時にスピン量も過剰になりやすい。ほとんどのゴルファーはフェアウェイウッドで十分な高さを出せないので、高打ち出し角は有益だ。
しかし、多すぎるスピン量は弊害となる可能性大。高さは出るが、バックスピンが多すぎて距離が出ない、というのは理想的なフェアウェイウッドではない。
タイトリストは、「TSR2」なら、ティーショットでフェアウェイウッドを使用するゴルファーにとって最適な弾道とスピン量が得られ、フェアウェイからのショットでは高い弾道の恩恵を受けられると考えている。
タイトリスト「TSR3」フェアウェイウッド
タイトリストの「906 F2」を覚えているだろうか。2000年代後半から2010年代前半にかけて、多くのゴルファーが絶賛し、カルト的な人気を博したフェアウェイウッドだ。
10セント硬貨大のスイートスポットの中心で打てば、まるでパーシモンのような反発力と打音が感じられた。しかし、その寛容性は、上級者向けモデルのためやさしく扱えるモデルではない。
タイトリスト「TSR3」フェアウェイウッドは、まさにその「906F2」の生まれ変わりだ。もちろん全面的に改良されている。
ヘッド体積は175ccで「TSR2」と同じだが、重心位置と5つのポジションの『SureFit アジャスタブルCGトラック』によって、より精密な重量調整が可能。タイトリストは、それを『Precision Tuned Performance(精密なチューニングが生み出す高いパフォーマンス)』と呼んでいる。
「TSi3」フェアウェイウッドでも同様の「ウエイトトラック」を3つのポジションに配置していたが、「TSR3」では、それを5つのポジションに配置し、調整範囲の幅が広げたことにより、さらに細かい重心位置の調整 (「TSi3」の0.75mmに対し0.5mm) と、さらに全体的な重心位置の移動 (「TSi3」の1.5mmに対し2mm) を実現した。
こんな小さな数字に大袈裟だと思うかもしれない。しかし、「TSR」メタルウッドシリーズ全体を通してのタイトリストの商品開発哲学が、特定の素材や技術からもたらされる“たったひとつの大きな変更”ではなく、“いくつかの段階的な変更を加えていくこと”であることは注目に値する。
タイトリスト「TSR2+」フェアウェイウッド
「TSR2+」はタイトリストのフェアウェイウッドシリーズの新顔だ。ヘッド重量190ccと「TSR2」よりも大きく、寛容性も高い。また深重心で、フェアウェイから高さのあるショットを実現する。
このモデルは、数値だけ見ればドライバーに次ぐ選択肢としてティーショットで使うのに最適だ。但し、13度とはっきり書かれているロフト角と大きな投影面積に怯まなければの話。
実際、タイトリストは、多くの潜在顧客を遠ざけることになりかねないとして「TSR2+」のロフト角表示をためらった。車のサイドミラーに刻まれた「鏡に映る物体との距離は思ったより近い」という警句を見たことがあるだろう。
「TSR2+」のヘッドカバーにも「リアルロフトから想像するよりも高い打ち出し角」という免責事項をつけておいてもいいかもしれない。
代表例:ウィル・ザラトリス。以前、ザラトリスは16.5度の4番ウッドを使用。ヘッドスピードの速いゴルファーの多くが、低ロフトモデルでは飛びすぎてドライバーとの飛距離差がなくなるとして、高ロフト角のフェアウェイウッドを選んでいる。
今年のスコティッシュオープンに先立ち、ザラトリスは新しいフェアウェイウッドのテストを開始した。ドライバーショットで「カット打ち(左から右に曲げる球)」に特化しているザラトリスは、それまで使っていたフェアウェイウッドよりも少し距離が出て、「右から左に曲げられる」ものを探していた。
マスターズでは、そのようなショットを求められる大切なホールが複数あるからだ。当初、ザラトリスは「TSR2+」では自分の求める打ち出し角は得られないだろうと思っていた。正直、ディープフェースと広い投影面積を見て「高打ち出し」だと思うほうがレアケースだろう。
しかし彼は間違っていた。試打したザラトリスは「TSR2+」で放ったショットが、自分が求める高さにある“ウインドウ”を通るかどうかを確認した。何度打っても、ボールはその“ウインドウ”より高いところを通過していったのだ。
この話を持ち出したのにはいくつかの理由がある。まず、一流ゴルファーでさえ、キャディバッグ内のすべてのクラブの目標を定期的に評価し直すことで改善をはかることができる。また、クラブに刻印されたロフト角に惑わされてはいけない。
重要なのは、クラブの重心特性と、プレーヤーがそれらの要素とどのようにマッチしてダイアミックロフト(インパクト時のロフト角)を生み出すかということなのだ。
純正シャフト
「TSR」ドライバー同様、純正シャフトのラインナップは4種類ある。
プロジェクトX HZRDUS Red CB(ハザーダス レッドCB) – シャフト長を長くしたい場合、または純正のシャフト長に少し重めのヘッドの組み合わせが望ましい場合、カウンターバランス設計が役に立つ。
三菱ケミカルTensei AV Blue(テンセイAVブルー) – 三菱の55グラムのシャフトは、中打ち出し/中スピン。小売店で最も人気が出るはずだ。
プロジェクトX HZRDUS Black(ハザーダス ブラック) – 新しい「HZRDUS Black」の純正は60グラム(70グラムと80グラムはオプション対応)。記載されているプロファイルは、低打ち出し/中スピンだ。
三菱ケミカルTensei 1K Black(テンセイ1Kブラック) – 「TSR」ラインナップにおける低打ち出し/低スピンシャフトである「Tensei 1K Black」は、スピン量を減らしたいヘッドスピードの速いプレーヤーに最適。
プレミアム純正シャフト
タイトリストはグラファイトデザインとのパートナーシップを継続しており、3つのグラファイトデザイン「Tour AD(ツアーAD)」をプレミアム純正シャフトとして用意している。
「Tour AD DI」 (中高打ち出し/低スピン) と「Tour AD IZ」 (高打ち出し/低スピン、あくまで相対的にはということ) は「TSi」ラインナップから引き継がれている。
「TOUR AD UB」 (21年秋発売)は、「Tour AD XC」に代わるプレミアムラインナップの低打ち出しモデル。標準重量は60 グラムだが、50、70、80グラムも選択可。
純正グリップはゴルフプライド「TV360 No Fill Flat Cap 58R」。こちらもまたカスタム対応で他のオプションも選択可。
私見
最も可能性の高い「TSR」フェアウェイウッドの潜在顧客は、「TSR」ドライバーを購入しているゴルファーだろう。とはいえ、もし新しいフェアウェイウッドを市場で探す必要性があるなら、どのクラブの場合でも尋ねるべき質問をするのが最善だ。
つまり、「その目的は何か?」。あまりに多くのゴルファーが、明確な意図なしに道具を購入し続けている。合理的な出発点のために簡単なヒントをひとつ。「3番ウッドの総飛距離 (キャリー+ラン) は、ドライバーのキャリー距離と等しくあるべき」ということ。
我々は、1つの言葉がバズるマーケティングの時代に突入している。一部の企業は、素材の進歩(カーボン)や、技術的プロセス(A.I. – 人工知能)を強調しているが、タイトリストは別のアプローチをとっている。
「高く、飛んで、やさしい」一部の人にとっては平凡な表現に思えるかもしれない。逆にそのシンプルさを高く評価する人もいるだろう。これは、どちらかが優れているという話ではない。ただ、みんな違う、それだけのことだ。
「TSR」フェアウェイウッドの価格と発売時期
タイトリスト「TSR」フェアウェイウッドの小売価格は399ドル(プレミアムグラファイトデザインシャフトは599ドル)。
タイトリスト「TSR」ドライバーはフィッティング受付中。発売は9月23日から(USの場合)。※日本発売は9月30日
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