お伝えしてきたように、今がシーズンだ。
ミズノのドライバーがUSGAのリストに掲載され、コブラのF-MAX Airspeedがリリース、そして今度はボーケイの出番。
SM8が正式発表される前の2ヶ月に及ぶチラ見せが始まる。
業界の一般的なリリースサイクルと、PGAショーで浪費されている資金から何かしらのメリットを搾り取ろうとする業界全体の意向を考えると、この新作の全貌が明らかになるのは1月3週目ということになりそうだ。
ストックがツアーバンを埋めるほどになっていることから、PGAツアーのボーケイ好きたちは今週の大会で初めてこのニューウェッジを投入できることになった。
マークなしのプロトタイプが使えなかったというわけではなく、それらの評判も上々。
このあたりのことはツアーにおける新商品検証で概ねお決まりなことだが、SM8が全体的にどのようなウェッジなのかを垣間見るには特別なことでもある。
タイトリストからの言葉は次の通り。「プロトタイプは、選手からも弾道、フィーリングが向上し、全体的に良い結果になったと評価は上々でした」。
では、その理由はどこから来ているのだろうか?
プログレッシブCG(重心)は、最近発売されたボーケイウェッジで重要なポイントだった。
技術的な詳細はさて置き、これはロフト別に弾道とスピンが適正になるよう重量を動かすことが目的。
ボーケイが、重心に対するグラインドの影響を理解するまで細心の注意を払っていた部分でもある。
これは、54度のMグラインドと54度のFグラインドを同じ弾道にするというほど細かいレベル。ボーケイはグラインドによって弾道とスピンは変わるべきではないと考えているのだ。
となると、ホーゼルの長さもスペック別である可能性がある。
打感にも驚かされるかも知れない。ボーケイウェッジのヘッドは8620の鋳造。
今回のSM8から(ミズノのように)1025のようなスチールで鍛造にシフトした可能性があるが、まだ分からない。
全くの新素材もあり得るが、8620合金に手を加えたか、振動を軽減するためにヘッド形状を洗練(恐らくトップラインの厚み)することで打感を改善しているというのが私の見立てだ。
また、これまでのボーケイのデザインから脱却していることも打感に影響を与える可能性がある(形はフィーリングに大きく影響するのだ)。
しかしながら、これはどちらかと言えば、タイトリストの今っぽいT100、T200、さらにT300アイアンから、ビジュアル面で自然な流れを作るために必要なことなのかも知れない。
ここでの結論としては、これまでボーケイウェッジの打感についてそれほど不満を耳にしたことがないことから、大きく形状が変わることはないだろう。
他の注目点
私が思うに、ボーケイには前作よりもさらに良くなった点が2つあると思う。
豊富なグラインドオプション
一つ目はグラインドのオプションだ。ボーケイの一番の特徴は、グラインドの選択が市場で最も豊富であること。
ボーケイ以上に、超ローバウンス(4度)からハイバウンス(14度)までラインナップしているブランドはない。
結果として、ゴルファーのスイング、コースコンディション、一般的な操作性のニーズを元に細かくフィッティングできるボーケイと肩を並べる競合はいないのが現状だ。
(競合もボーケイに多少は追いついていることと)上記を考慮すると、ボーケイがさらにグラインドの選択肢を増そうとしていることは道理にあっているだろう。
ボーケイ・ウェッジ・ワークスを確認すると、SM8では、Dグラインドがロブウェッジ(SM7の58度、60度)からサンドウェッジ(54度、56度)まで展開されるようだ。
これは間違いないことなので、予約を検討した方が良い。
また、ウェッジ・ワークスのリリースでは、一般ゴルファー向けのTグラインドでハイロフトが復活する可能性があることを示唆しているが、これはボブ・ボーケイの右腕アーロン・ディルの影響力が増し完全に新しいグラインドが生まれるくらい不確かだ。
ボーケイが提供できるラインナップには限界もあるため、同社は主力スペックをラインナップに残しつつ、そこまで人気とならなかったグラインドを新商品発表ごとに入れ替えている(ウェッジ・ワークスのプラットフォームでも入れ替えている)。
こうすることで、小売市場が過飽和になることなく、ラインナップを豊富にできるのだ。
SM7では、23通りのロフトとバウンス/グラインドのバリエーションがあった。SM8ではこの数が増えるかもしれないし、現状のままになる可能性もある。但し、減ることはないはずだ。
モイスチャーマネージメント
2つ目は、溝とフィニッシュのテクノロジーだ。
ボーケイと言えば、耐久性部分であまり進化が見られないスピンミルドグルーブがお馴染みだが、必要性にも迫られなかったことからあまり力を入れていなかったように思う。
乾いた状況においては、ボーケイは一番スピンがかかるウェッジであるからだ。
しかしながらウェッジテストによると、濡れた状況においてはSM7のスピンは目に見えて減少してしまう。こうした状況では、ボーケイウェッジは平均的なウェッジに過ぎないのだ。
これは、市場を牽引するブランドとして十分とは言えないし、少なくともそうあってはいけないだろう。
フィニッシュ(PINGのハイドロパール)だろうと、改良されたモイスチャー・チャネリンググルーブ・テクノロジー(ミズノのハイドロマイクロウェーブ)だろうと、テクノロジーがスピン量の低下に対抗できることは分かっている。
ゴルファーが、クラブの性能にコースコンディションが影響することをより理解するようになっていることを考えれば、ボーケイには、こうしたテクノロジーに追いつくためにSM9まで待っている時間などないのだ。
仕上げ
(スピン量をキープするのに役立たない限り)個々の好みを越えた改良とは言えないが、ボーケイは、リリースごとにフィニッシュのオプションで追加、削除を繰り返している。
SM7はツアークローム、ジェットブラック、ブラッシュドスチール仕上げがラインナップ。これでほとんどのゴルファーに対応しているわけだ。
しかし、その中でもブラッシュドスチールは(同じように見えるが)改良されることが予測される。完全なる刷新というよりは微調整と考えた方が良いだろう。
そしてツアークローム仕上げはもちろん、(私が欲しいということ以外の理由で)ジェットブラックもラインナップに加わりそうだ。
また、競合がノーメッキモデルを展開しているため、ボーケイでもノーメッキが発売される可能性もある。とはいえ、ノーメッキだからと言ってスピン量が増えるとは言えない。
また、まぁまぁ最近のウェッジ・ワークスのリリースで取り上げられたスレートブルーフィニッシュも発売されるかも知れないが、カスタムオーダー限定で追加料金がかかることは間違いないだろう。
物事は変わっていくが…
ある分野で独走していると、一からやり直す利点をなかなか見つけられないものだ。
ボーケイウェッジはツアーと小売市場を支配しているため、過去を根本的に見直すことは考えにくい。
あなたも、私も、そしてボーケイを含めた誰でもウェッジの性能を学び続ければ改善することはできるだろうし、ボーケイがSM8でパフォーマンスを進化させようとしていることは確かだが、私は、大部分でボーケイが今と同じ道を進むと考えている。
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